表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん家!  作者: サン助 箱スキー
終章 新世界
308/347

マリー・テレーズ・シャルロット・ド・フランス

テレーズ殿下です。


 ストックホルムの上空1000m付近から過去に渡るニノを見ていた神が居る。オリュンポス主神のゼウスとヘルメースである。


「北欧で戦う訳にもいかんな、アースガルズの神々に邪魔をされたら神界大戦まで行ってしまうでな。お前はさっさと修行に戻れ。ヘーラーにキツく言われてしまった。躾くらいしっかりしろとな……怖かった……」


 やはり鬼嫁の神様は怖いらしい。


「俺もアポロも反省はしてる。ゼウス様気を付けて。」


 そう言ってヘルメースは掃除に戻って行った。


「ふんっ。何処の神かと思えば、先日通知の来た叔父上の部下か。叔父上の奴は封印してやってるのにコソコソと動き回りよって。」


 不遜な顔を浮かべるゼウス。地球ではただ1人6千を超える神格の持ち主である。


「北欧から出て来たら雷霆でも食らわしてやろうか。叔父上に突き刺さっている物だけが雷霆じゃ無いのだよ。」


 手に雷霆を握り締めて南へと下るゼウス。

他のオリュンポスの神々から没収した神器をインベントリに保存しているのも、自信の1つになっているようだ。



 そして……


 1810年の5月16日に渡って来たニノは、フェルセン侯の家の場所を知らずに、道行く人に尋ねていた。


「はい。ありがとう。とりあえず行ってみます。」


 道に迷ったらいけないと少し早めの時間帯に来たようだ。まだ午前9時頃である。


「うわ。ハンス様の家もでかいな……さすが侯爵。」


 辿り着いた家が侯爵に相応しいデカくて豪華な家だった事に少し驚いている。


「着飾るより中身で勝負とか言ってたハンス様には……ちょっと似合わないな。」


 透けて見えなくなったニノは家中の部屋を見て回っている。


「う〜ん……地上じゃないのか……地下かな?」


 地下への階段を見つけたので降りて行くのだが、地上と同じどころか、地上より快適になるように設計されている地下室な事に、ここに居そうだと確信したようだ。


「おっ!ハンス様。やっぱりここで間違いないな。」


 フェルセン侯が出て来た扉をすり抜けるニノ。

部屋の中に入れば、そこはとても快適そうな空間なのだが……ベッドに横たわる人物を見て……


「テレーズ殿下。分かりますか?」


 と、声を掛けたのだが……何も返事はない。

それもそのはず、完全に意識を失っていて、後は死を待つばかり。肺炎と聞いていたが、細くなった手足や骨の浮き出た顔を見れば癌としか思えない。


「やっぱり使わなきゃか。」


 そう言ってチシャ菜を手で揉み潰し、テレーズの口にねじ込むニノ。指で喉の奥まで押し込んだら……


「うぇぇぇぇぇ。にがっ!野菜は嫌いです………」


 たちどころに病は治ってしまった。


「あれ?ニノ……あっそうかお迎えが来たのね。貴方が導いて下さるなら、やっぱり私は天国行きなのね。良かったわ。」


 やはりお迎えが来たと思ったようだ。


「違いますよ。テレーズ殿下もハンス様と同じ事を言うんですね。天国じゃないです。誰にも見つからない安心して暮らせる場所に迎えるために、お迎えに上がりました。お待たせして申し訳ありません。」


「あれ?私生きてる?死んだと思ってたのに……」


 すっとんきょうな表情を浮かべるテレーズだが。


「こちらもお召し上がりください。栄養満点ミラクル胡桃です。美味しいですよ。」


 目の間には、首だけになって晒されていたはずの父の従者。しかしお腹が減っていたようだ、出された胡桃を一欠片齧った。


「うへぇぇ塩っぱい……苦手なのに……」


「甘い物だけではダメですよテレーズ殿下。ちゃんと飲み込んで。」


 子供の頃からずっと家族のそばに居た従者に言われてしぶしぶ胡桃を飲み込むテレーズ。


「うわっ!ガリガリがふっくらに……」


「もう立ち上がれますよね?ベッドから降りて頂けませんか?」


 そう言われて恐る恐るベッドから降りるテレーズだが、普通に降りて立ち上がれてしまう。


「あら。2ヶ月くらい前から動けなかったのに……ニノ……何をしたの?」


「神様のおまじないですよ。さあ。行きましょう。ハンス様もお待ちですから。」


 やはり自分は死んだと思っているテレーズ。


「とりあえず身代わりに……」


 ベッドに何かを置いて、コピースキルでテレーズをコピーするニノ。


「さあ。誰にも見つからないように転移しますね。」


 ストックホルムの街中に転移して行った。



「ねえニノ?やっぱり私は生きてるのかしら?」


「ええ。もちろんですよ殿下。桃でも食べますか?」


「う〜ん……酸っぱくない?」


「酸っぱくないですよ。たぶん……」


 後日フェルセン侯が撲殺される予定の広場の隅で、テレーズに桃を2つ剥いて渡すニノ。


「なんかお肌がピチピチに……あれ?身長も心無しか……。」


 そして7分割した布を取り出すニノ。


「未来へ行きましょう。ハンス様が待ってますので。陛下や王妃様、エリザベート様やジョゼフ殿下もシャルル殿下もソフィー殿下も連れて行きます。」


「あら。やっぱり私は死んでしまった様なのね……」


 何度も違うと言うのだが信じてくれないテレーズと一緒に、フェルセン侯を惑星パンツに送った時間より少し後に移動したニノ。


「現地に着いたらハンス様がおられます。少しお召し物が体に合っていない様なので、耳の長い緑髪の美人が居るのでお召し物を用意してもらって下さい。」


「あら?ニノが女性を美人と言うのは珍しいですね。楽しみですわ、どんな女性なのか。」


 異界渡りの羽衣に包んでパンツノ惑星へとテレーズを転移させた。


「よし。知らない場所はここまでだな……次はフランスか……まずはジョゼフ殿下からだな……」


 フランスへ、そして戦いが始まる。


 

読んで貰えて感謝です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ