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おっさん家!  作者: サン助 箱スキー
9章 必ずと誓った事
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閑話 勇者ちゃんと水神君と……

最後の閑話です。


 異世界に渡ったが、神に捕獲されて強制送還された勇者や聖女の末路は酷いものだった。


 異世界で得た記憶やチートを奪われ普通の高校生に戻されて強制送還されたのだが、転移であったため全員が教室の中で素っ裸なのである。身に一糸も纏わぬ姿で授業を受けている。


 もちろん教師も素っ裸。直後に阿鼻叫喚となる。


 その日の夜から、男子は抜ける髪に悩まされ、女子は生える口髭に悩まされる。

 男子の股間については触れないでおこう。


 そんな中で2人ほど違う者がいる。


 神の姪っ子と、日本の神。藤原 千夏と水神 勇鬼である。


 2人が日本に帰って来たのはクラスメイトより数ヶ月遅れての事だったのだが、その時は……


「ちょっと水神君!なんで全裸なの!早く何か着てよ!」


 1人だけ異界渡りの羽衣に包まれていたおかげで脱衣状態では無かった藤原 千夏。目の前で布を開けてくれた同級生に扮する水神の素っ裸を直視してしまったようだ。


「ふ……じ……わ……ら……痛い……」


 中級神でも上位に位置する水神とて、唯一絶対の勇者にされた肉体のチートが残っている勇者ちゃんが、恥ずかしくて放った突き押しは痛かったようで、みぞおちの部分に食らって崩れ落ちてしまった。


 すっぽんぽんのままで……。


 それを見ていたのは……マルトさんの社に遊びに来ていた風神と大竹和尚……


「うわあ……やばくないか……水神生きてるか?」


「大丈夫でござるか!透けていれば良い物を……何故ゆえに水は裸でござるか?」


「そんなことより治療を!今癒しますから。」


 焦って癒し魔法を発動するマルトさんや水神を心配する風神。大竹和尚は、どこかで見た事のある女の子と気付いているが思い出せない。


「あの〜。おじさん達は水神君の知り合い?」


 透けている筈なのに見えている……何が……

マルトさんと風神が、である。


「なんと!千夏ちゃんではござらんか!何をしてるでござる?」


「え〜と風神様のお知り合いでしょうか?」


「ああ。水がストーキングしてた女の子か。」


「ストーキングじゃない、見守ってたんだ……人聞きの悪い事言うなよ。」


「もしかして惑星パンツに行っていたのでは?水神様。お久しぶりでございます。とりあえずこちらをお召になって……そのままでは……」


 股間を抑えて立ち上がろうとする水神に衣類を渡すマルトさん。


 人間には見えないように設定している筈なのに見えていると言えば、認識出来るか能力を持つチート勇者くらいだろうとアタリを付けたマルトさんが質問すれば……


「あれ?おじいちゃんってハゲてたっけ?」


 たまにしか見ない祖父だったのでハッキリ覚えていない。地味にマルトさんが気にしている事を言い放った勇者ちゃん……


「場所を変えるでござる。隠形も呼び出すでござるよ。」


「それが良いかもな。何があったか話すからよ。」


「マルトは残っといてくれ。金が来るかもだからよ。」


「残るのは構いませんが……先に大国主様にご挨拶でもされたら?」


 社の裏に植えられている、みずみずしい世界樹の若葉に植物用栄養活力液をあげていてる大国主。

白い月に封印されていた神々をヘーラーやイザナギに任せた後に、疲れ果てて休息をしている所であった。


「気にするな、隠形にはしばらく有給をやっておく。昔話でもしてくるが良い。」


 バイトに雇っている隠形鬼こと菅原道真に有給を与えて、マルトさんの社で世界樹の葉を見ながら1泊するつもりの大国主。今度はジョウロを持ち出してきた。


「大国主様。時渡りをお願いしたいのですが。」


「うむ。理由は聞かずともわかっているが……神気が……」


 水鬼がインベントリから取り出したのは賢者の石。ニノから預かった魔力たっぷりの電池みたいなもんである。


「おお!賢者の石か。羨ましいのう……2年か?3年か?それくらいなら余裕で時渡りさせられるが……」


 半年ちょっとですと答えられて、送ろうとする大国主だが。


「3日程待ってくれ。転移門が開く。お前たちは移動せよ。マルト頼んだぞ。」


 マルトさんの社に尋ねて来たニノに合わせたく無いようで、強制転移させたようだ。大竹和尚まで巻き込んで……


「私は気付かぬフリをしておく。」

「はい。大国主様。」


 その後にツーリング旅行に行くのである。



 そして……


「ここって何処?何となく見た事あるんだけど……」


 勇者ちゃんが見た事があっても当然である。


「太宰府天満宮だな。めっちゃ人多い……」


「隠形……隠形……」


「なあ、なんで俺まで……俺は寺に帰れば良かったんじゃ?」


 菅原道真公に電話を掛ける風神。


「もしもし。今太宰府天満宮に来てるでござる。どこに居るでござるか?うむ。したらばそちらに向かうでござる。」


 太宰府天満宮を離れて数分程歩いた所にある民家に向かう4人。


「水、風、大竹。久々だな。まあ上がっ……千方様?」


 玄関で迎えた隠形が千夏ちゃんを見て固まるが……


「そうか。藤原 千夏か。まあいい上がれ。」


 その日の夜は藤原千夏も交えて家飲みである。千夏ちゃんは高校生なのでソフトドリンクなのだが。


「まじでござるか?あの御神が金でござるか!」

「田崎ん所の次男坊が金?ウッソだろお前。」

「マルトと共に楽しそうに旅行をしてたアレが?」


 実際に出会った水鬼が、3人に話す。

千夏ちゃんは寝てしまっている。隠形の子供達と飼い犬と共にアホ面でヨダレを垂らしながら。


「なんだかんだで楽しそうにしてたけどよ。今度皆で尋ねて来いだとさ。」


「そう言えば嫁が言ってたな。久々に金メッキに会ったってさ……ラインで。」


「金メッキとは懐かしい呼び名でござるな。しかし大獄丸……嫁とか羨ましいでござる……隠形も……」


「俺は?」「水は海に入ればモテモテでござろう……拙者は地球に緑鬼の女性がおらぬ故……」


 赤鬼や青鬼はそれなりに居るのだが、緑鬼はテューポーンに保護されて殆どが異世界に渡ってしまった。

取り残された数人の緑鬼が地球には残っているのだが、皆男だったりする。


 隠形は普通に人間と結婚している。


「あっそうだ!風。緑鬼なら金と一緒に沢山住んでたぞ。めちゃくちゃ美人も居たけど紹介してもらったら?」


 ニカラの女衆である。鬼から見たら美人に見えるようだ。


「なんと!金の奴は羨ましいでござる!異界でハーレムなのでござるな!許せんでござる!」


「それは……ハーレムは無いと思うぞ……だって金のステータス見た時にチェリーって出てたから……」


「ぶっ!マジか……そういや田崎ん所の次男って彼女すら居たこと無かったけど……ステータス見とくんだった!」


「あまり言うてやるな。人にはそれぞれ道が……ぷッ……ぶはっ!ハッハッハ。」


「しかし星神とは金も出世したもんだ。」


「先日の通知でござるな。」


「テューポーン様の部下なんて異次元すぎて想像もつかねえや。」


「むちゃくちゃだったぞ。荒れ狂う海原より酷かったし。」


 酷い言われようである。


「大獄丸よ。その趣味の悪い金のネックレスは坊主にはどうかと思うぞ?」


 だんだんと場が盛り上がる隠形宅のダイニングルーム。


「そんなこと言うなよ。金の垢から作って貰った短刀をさ、最初は金槌にしてたんだけど、嫁に趣味が悪いって言われてな。」


 ヒヒイロカネだったりする。


「田崎ん()の床の間に飾ってある槍があんじゃん。あれって元々草薙の剣でさ。これと一緒に物部の一族に加工してもらったんだよ。金ネックレスだったら金ピカが普通だろ?」


「おぬし!草薙の剣と言えば壇ノ浦で無くなった神器ではござらんか!」


「ん?本当の所有者の元に戻るようにって効果を足してもらったんだぜ、ヒヒイロカネをちょっと混ぜてさ。え〜と……誰だったかな……知盛だっけ?アイツと話してさ。」


「ああ言ってたな、儀式用の切れない剣のままより使える槍にでも打ち変えて貰うかとか。あれがあの時の槍なのか……汚れてて分からんかった。」


 そんな話をしながら、藤原千夏をどうするかの話題になる。


 異世界に遊びに行くなら誰かが着いて行くと言う事と、ちゃんと説明して元の時間に返そう、と言う結論に至るまで、楽しく古い友人の現在の姿や思い出話に花を咲かせる4人の鬼であった。



 そして……


「ちょ!皆なんで裸なのよ!」


 地球から異世界に飛ばされた直後の教室に戻って来た藤原千夏と水神勇鬼。


 素っ裸の同級生達を見て驚く事になる。


「先生まで!ちょ!前を隠して!」


 次の日の地元の新聞を賑わす事になった。

 



次回から最終章突入です。


読んで貰えて感謝です。

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