そして
そしてです。
1793年1月21日。
「私は私の死を作り出した者を許す。私の血が二度とフランスの地に落ちる事の無いように神に祈りたい。」の言葉の後にルイ16世はギロチンの刃で首を落とされる。
同年10月16日。
「お赦し下さいね、ムッシュ。わざとではありませんのよ。」と執行人を睨みつけた後に仰向けに寝かされたマリー・アントワネット。12時15分ギロチンの刃が落とされ37年の生涯を終える。
1794年5月10日。
兄夫婦の処刑を知らされる事も無く一年以上幽閉されたまま裁判にかけられ死刑判決が下り、最後まで王族としての威厳を保ったまま、マダム・エリザベート、ギロチンの刃で命を失う。
そして……活発で聡明で健康的で優しい皇太子は幽閉されたまま虐待により10歳で命を落とし。
唯一生き残ったマリー・テレーズは……
影武者として身代わりになったエルネスティーヌであり、本当のマリー・テレーズの行方は全く分からない。
ヴァレンヌ郊外で別れた従者と言えば……
ルイ16世一家がタンプル塔に幽閉された日。
後にルイ16世の処刑が行われる事になるコンコルド広場で……
「ぁぁぁぁ…………」「………………」
真夜中のコンコルド広場。1人の男と1人の女が、目深にフードを被り、広場に置かれた台の上を見ながら、言葉にならない声を出して涙している。
置かれている物は、仮面やカツラを剥ぎ取られ、頬に刺し傷のある人の頭部……
火傷痕が醜くい首なのだが、昼間は王家に飼われた化け物と言われて石を投げつけられ、殆ど原型を留めていない。
晒されている首はニノ。
夜中に首を見ながら涙を流すのはハンス・アクセル・フォン・フェルセン侯爵とマリー・テレーズ・ド・フランス。
涙を流す2人は、夜の闇へと消えていった。
そして……次の日昼間、1人の老人がコンコルド広場に現れる。
「自分、イエスはんの信者の癖に解脱ポイント貯まっとるやん?解脱出来るけどどないしはる?」
晒されている首に向かって声を掛ける老人。
その姿は誰にも認識されていない。
「な……ん……だ…………」
「やから、解脱ポイントが1やけど貯まっとるねん。兄さんの人生を覗き見ても貯まる要素なんてちょっとしか無いんやけどな。しかもカトリック教徒やろ?なんで仏さんの教えの解脱ポイントが貯まっとるか全く分からんのやけど、兎に角貯まっとるねん。」
さらし首を睨みつける老人。周りを通る人間達にぶつかられるが、まるでそこに何も無いように通行人はすり抜けていく。
「なんもかんもキレイさっぱり忘れて輪廻の輪に戻るっちゅう手もあるんやで。今回どぎつい人生やったし、次は少しは幸せになるんちゃう?知らんけど。」
「なんだお前は!我が王は!我が王はどうなった!?」
「そんなん死んでしもた兄さんに教えられへんわ。ささっさと選びや、ワシも暇じゃないねん。解脱して木っ端神になるか、今を忘れて生まれ変わって次に行くか、どっちがいい?」
晒されている首は通行人からは動いているように見えないのだが。
まぁ主人公の目的はこんな感じです。
次回、冥王との会話。
読んで貰えて感謝です。




