表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん家!  作者: サン助 箱スキー
9章 必ずと誓った事
293/347

逃亡の始まり

ヴァレンヌ逃亡事件です。


 ルイ16世一家にギロチンを。

そんな事が少しずつ噂され始めた。


 ギロチンの考案者でもあるルイ16世だが、その時に自分の運命を悟っていたのか、囚人に苦しまずに死を、そんな思いで制作したギロチンだったのだが……


「なあオーギュスト。明日の朝だ。明日の朝迎えを寄越す。その時までに準備をしておいてくれ。」


 フェルセン侯が去り際に渡した一通の手紙。

パリから逃亡する為の計画を書いた手紙である。


「私はここに残るさ。フランス国民同士で争うなど具の骨頂だ。家族を頼むぞハンス……」


「いや、ダメだ。君も来てくれないと困る。グスタフ陛下も君の身柄を望んでいる。君が居ないと革命軍を攻める理由が無いんだ。」


 そんな事は望んでいないルイ16世。


「私は地方で職人として生きて行くさ。地方に下れば誰も私の顔を知らんだろう?」


「そんな事は許さない。まだまだ王権は必要なんだ。世界が落ち着くまで、次のステップに安定して上がるまで、君の存在は必要なんだ。」


 一年以上掛けて説得し続けたハンスの言葉にルイ16世は折れたようだ。その後にパリ脱出を決める。


「ニノ。オーギュストやマリーの乗る馬車はお前に御者を任せる。」


 ルイ16世一家に最も信頼されている、プライベートでは家族のように扱われている従者。

独身で子も居ないフェルセン侯には実の子のように扱われている。

最も信頼出来る者を最も肝心な王の御者に。


 その事に誰も異論を挟む物は居なかった。



 フェルセン侯が明日の準備の為にパリを離れた頃。


「テレーズ様の変わりに私が馬車に乗ります。」


 マリー・テレーズが10歳の時に付けられた従者。

テレーズに瓜二つの外見を持ち常日頃から影武者としてテレーズの傍にいた女性が身代わりになるようだ。


「テレーズ。お前はエルネスティーヌの代わりにジャックの所に行きなさい。後の事はスシー夫人に頼んである。」


 落ち着いたら合流しようと伝えられて家族の元を離れるテレーズだが……


「ニノ。パパとママもだけど、シャルルをお願い。叔母様はどうなっても構わないわ。だけどシャルルだけはどうにか助けてあげて。」


「もちろんですテレーズ公女。それにハンス様の計画に抜かりはありませんから、心配いりませんよ。」


「テレーズ。貴方の無事を祈って居ますから。どうか……2回くらい何かの角で足の指をぶつけて、もがきあそばせ。」


 叔母様と呼ばれた事に腹を立てたのか、どうなってもいいと言われて腹を立てたのか……

こんな時まで啀み合うテレーズとエリザベート。


「叔母様。どうかご無事で……」


「ええ、テレーズ。私は強いのよ、知ってるでしょ?ヘタレで腰の重いお兄様よりずっと強いの。だから心配しないで。」


 姪に向かいにこやかに微笑みかけるエリザベート、別れを惜しむ間も無く数人でテュイルリー宮殿を後にした。


 ルイ16世一家の逃亡の準備も終わり、2台の馬車に別れて出発しようとしている時に、一家の世話役に付けられていた従者が1人、どこにも居ない事に気付く者は居なかった。




読んで貰えて感謝です。


本日夜にもう1話更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ