可愛らしい男の子
コメディ要素ありません。
王家所有の森から宮殿へ帰る途中。
オーギュストは数人の従者に医者の手配をさせ、自分は胸に抱いた子供に衝撃を与えないように歩いて宮殿へと向かう……そんな中……
「なあオーギュスト。弱っているモノを助けようとするのは君の悪い癖だ。狩の途中で怪我した鹿の子を助けるのとは訳が違うんだぞ?そこを理解しているのか?」
「なあハンス……私は殿下殿下と持て囃されるが、まだ何者でもない。だがな、私の癖で誰かを助ける事が出来ると言うなら、それは癖ではなく慈悲になると思わんか?」
ルイ・オーギュストと話し込むのはハンス・アクセル・フォン・フェルセンと後に名乗る男。
オーギュストの妻と不貞を働き、フランス革命後もひたすらオーギュストの妻を助けようとしたスウェーデンの侯爵。
まだこの時は17歳の見目麗しい青年であった。
「慈悲か……誰も求めてはいないぞ。君に慈悲があると言うなら、君の可愛い妻を私にくれても良さそうなものだ。」
「馬鹿を言うな……誰が聞いているか分かった物じゃない。それに君はどれだけ口で言おうと、実際には何もしないのだろう?」
史実ではルイ16世公認の間男だったと言われるフェルセン侯爵だが、こんな軽口を言えるほどの人間がそうだったのか……
「マリーが嘆いていたぞ、また昨夜も寝所に行かなかったそうだな……子供なんて拾っている場合じゃないだろ?自分の子を作るべきじゃ無いのか?」
「子供が居るのにそんな話をするんじゃない。確かに行かなかったが……」
「意識は無いのだろ?それなら大丈夫さ。今日こそ行くんだぞ。子を作ってくれないと諦める気になれないからな。」
ヨーロッパを遊学中のハンスがオーギュストと出会ったのは数年前。出会って数日で意気投合したのだが今では親友と呼べる間柄になっている。
「なあハンス……マリーは可憐だ、あれ程に美しく可憐な女性に出会ったのは初めてだ。たとえ国益の為の婚姻だとしても、あれ程に素晴らしい女性を妻に迎えられた事は嬉しく思うさ。だがな……」
だがと言ったオーギュスト、初めて見た自分の妻となる者に一目惚れしたのは良いが、あまりにも可憐で儚げな少女に……
「私のコレが簡単に入ると思うのか?」
デカいのである。何が?とは聞かないで欲しいナニがデカいのである……
「確かに……ソレが入るのか断言は出来んな……まったく……体がデカいのは良いのだが、ソコまで巨大で無くてもよかっただろ?」
ハンスの視線がオーギュストの股間に移動する、目線の先には膨らんだズボン……
「それを言うな……好きでこうなった訳じゃないさ……コレが普通であれば、毎晩でも通っている。」
ため息を吐きながら2人仲良く宮殿へと帰って行く。
オーギュストの自室に帰ってくれば、その後は慌ただしかった。
「どうだ?この子は助かりそうか?」
「いえ、無理でしょうな。現状が酷すぎます。最早意識すら戻らず天に召されると……」
最高の医師を用意して診察治療にあたらせたオーギュストだったが、ベッドに寝かせた子供の事は絶望的であると医師に伝えられカルテを渡された……
「全身に16ヶ所の骨折、高熱……衰弱して弱った体……顔の火傷は既に治っているのだな?」
「ええ、幸いな事ですが膝は脱臼だけでした、首から上の火傷の痕は何度も焼き鏝を押された痕と断言します。今の顔の腫れは殴打の痕かと……」
ハンスが顔を顰めながらカルテを覗き込む……
「陰茎は切り刻まれ、肛門は引き裂かれているか……処置はどうしたのだ?」
陰茎は根元を残して切断、肛門は縫いはしたが、全身の死に化粧をしているようだったと言われて顔を更に顰める……
「右腕は傷口が壊死していたので傷口の上から切り落としましたが……」
明日を迎えられる事は無いと医師は2人に伝えて、部屋を後にする。
ベッドに寝る男の子を見るオーギュストとハンス。
「目を開けた!今確かに目を開けたぞ!」
「ああ。確かに目を開けた。オーギュスト……私も手伝おう。この子を助けるのだな。」
その日から数日、オーギュストとハンスは勉強も趣味も社交も放り出して、子供の看病に付きっきりになるのだが……
「まあルイ、ハンス。数日尋ねて来ないと思っていたら、私を除け者にして2人で仲良く何をしているのかしら?」
4日目の夜の出来事、オーギュストの妻マリーが従者を1人も連れずに部屋に突然現れた。
小さな鍋でコトコト何かを煮るオーギュストと、洗面器で布を絞るハンスを見て、もう1人この部屋に誰か居る事に気付いたようだ。
「あら……可愛らしい男の子ですね。2人は私に内緒でこんなに楽しそうな事を……酷過ぎます……」
どう見ても可愛らしい男の子では無い。
腫れはだいぶ引いたが顔の大部分はケロイドになっており、頭髪も襟足に少し残して生えているだけ、そんな子供を見て、可愛らしい男の子と言う。
「マリー……いくら君でも……」「マリーよ……」
満面の笑みを浮かべて少年に手をかざすマリー。
「ほらこうすれば……可愛らしい男の子でしょ?」
火傷痕を掌で隠し、左目の下から顎にかけてを見せるマリー。
「本当だな。」「ああ。本当だ。」
「御夫人方と嫌味を言い合うのは飽きましたわ。これから毎晩ここに来ますから。私の分のお茶も用意してくださらないかしら?」
オーギュストもハンスもマリーの可憐な微笑みには弱いようだ。どちらともデレデレである。
マリー・アントワネット。
この時はまだ17歳。可憐で儚げだが、聡明で慈愛に満ち溢れる、高貴な青い血持つ気高き女性であった。
重い展開はブクマが剥がれて行くのでしょうか?
一気に勢いで9章を書き上げます。
読んで貰えて感謝ですが、鬱展開ごめんなさい。




