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おっさん家!  作者: サン助 箱スキー
9章 必ずと誓った事
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私の獲物

狩の獲物です。


 森の中で虫の息の少年。捨てられたのは昨日の事、今日は雨が降っている。


 4歳の時に麦1袋で親に売られ、その後1年半近く……良くぞここまで生きていたと言う程に陵辱と虐待の限りを尽くされている。


 数日前から何も口にしていない少年は、殆ど動かす事の出来ない体を仰向けにして、降る雨を口に入れようと口を開くのだが。


 火傷の跡がケロイド状に爛れており、引きつって殆ど開く事が出来ない。

しかし雨は少年の命を、ほんのわずかだが長らえさせたようだ。


 空腹と高熱と激痛が少年を交互に襲う。

そんな少年が顔を横に向けた時に見た物は、地面に落ちて腐りかけたリンゴであった。


 鼻は折れて血で詰まり、匂いが嗅げなかったのが良かったのか、少年は僅かに動く左手でリンゴを掴み貪り始める。


 口の中には繰り返される殴打で折れて1本の歯も残ってなかった少年にしたら、噛まなくても飲み込める腐ったリンゴで良かったのかもしれない。


 そして少年は気を失う。弱った体に降り注ぐ雨に打たれ冷えきって低体温症だったのか……数日前から続く熱の影響だったのか……体に無数ある傷口から何かしらの感染症にかかったのか……


 少年には、もうどうでも良かった。




 雨が上がった次の日、森に狩人が訪れる。


「ハンス。見てみろ、珍しい獲物を仕留めたぞ。」


 大声で叫んだのは背が高くスラッとした美丈夫。

それに応えたのは1つ歳下のハンスという名の社交界を賑わす男。


「なんだオーギュスト。子供の死体じゃないか……そんな物拾ってどうするんだ?」


「死体なんかじゃないさ。見てみろしっかり息をしている。」


 薄汚れて片足が変な方向に向き、見るも無残な姿の子供。もう死にかけている。


「殿下!触れてはなりません。その様な物に触れて殿下に何かしらあったらどうするおつもりです。」


 殿下と呼ばれた男。ルイ・オーギュスト。

現フランス国王ルイ15世の孫でフランス国・王太子。


「何を言う、私の獲物だぞ?王太子である私から、お前は獲物を奪うと言うのか?それにこの子はフランスの民であろう?フランスの民と言うなら、いずれ王になる私の民になるのだ。そんな物などと言うな。」


 王太子に言われこうべを垂れる従者達。

 少年を抱き抱えるオーギュスト。


「オーギュスト。連れて帰る気か?」


「もちろんだハンス。この子の左手を見てみよ。私の服を掴んでおる。まだ生きたいと言っているようじゃないか?」


 後にギロチンで首を落とされる悲劇の王ルイ16世、この時はまだ18歳。拾った少年を上着で包み、大切そうに抱き抱えベルサイユへと帰って行く。



 一つだけ疑問な事がある。この森にリンゴの木は1本も生えていない事……


規約に引っ掛からなきゃ良いけどなぁ……


読んで貰えて感謝です。

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