閑話 テューポーンのあれやこれ
あれやこれです。
それはまだ神話の時代の出来事。ティタノマキアとギガントマキアの間の期間。
テューポーンがティタノマキアで息子に負けた兄・クロノスの所へ尋ねて来ていた。
「うぃーす。クロノス兄ちゃん。やられちゃったなあ⤴︎︎」
オリュンポスの神々に最高神としての地位を追われ塞ぎ込む兄の元に傷口に追い塩を刷り込みに来たようだ。
「む?テューちゃんか。うへへぇ……おやつ食べるか?美味しい知恵の実や勝利の果実が熟してるよぉ〜。」
負けた事など何処吹く風のクロノス。
末っ子だったので常々欲しいと思っていた弟。大地の原初神ガイアの末子で、激甘に甘やかされて育った自分が欲しいと思っていても、弟だけはなかなか作って貰えず。長年欲しいと強請ってやっと作ってくれた弟。溺愛する弟テューポーンに、によによしているクロノスが熟れた果実を見せている。
「勝利の果実があるなら兄ちゃん食べれば良かったのに。知恵の実はいらね、食べ飽きたもん。」
「仕方ないなぁ〜♩♩焼き菓子でも氷菓子でもなんでも好きな物を食べなぁ〜♬*.*・゜ .゜・*.」
天の川銀河の神界全てを巻き込んだ、巨神とオリュンポスの神々の争いに敗北した事を心配して尋ねて来たテューポーンの気持ちなど一切考慮せずに、まるで猫を溺愛するバカい主のように、テューポーンにデレデレなクロノス。時の神クロノスと同一の名を持つが、こちらは原初神ガイアとウーラノスの間に出来た末っ子で、農耕の神である。
「全くよう……心配して損した。これからどうすんだ?兄ちゃん。どっか別の世界に君臨すんのか?」
「ん〜。お兄ちゃまは神話から身を引きまちゅよォ〜。ここで消えないと世界が先に進まないからねえ♪。.:*・゜♪。.:*・゜♪。.:*・゜」
引退宣言である。そんな事に同意出来るわけない我儘な末っ子テューポーンは……
「はぁ?ゼウス位のちっぽけなのに負けただけで何ひよってんだよ?頭でもイカれたか?」
なんて言いながら、激おこプンプン丸である。
「ふむ。まあ真面目に話すとな。今回の件を子供達でもあるオリュンポスの神々に後始末させるのが嫌なんだよ、お兄ちゃまは。」
「そんなのアイツらがやった事だろ?何言ってんだよ。」
巨神を率いてオリュンポスの神々と金星で戦ったクロノス。金星の大地に住む生き物達が争いの余波で絶滅してしまった事の責任を取ると言う。
「耐えきれ無かったお兄ちゃまが悪いんだよ。あっ!そうだ……テューちゃんが心配だから、テューちゃんの世界でテューちゃんを見守る星にでもなろうかな?」
「はあ?そんな事をオレが許す訳ねえだろ?それよりも……もう一度戦わないのかよ?最初から本気でやればいいじゃん……手加減したんだろ?」
テューポーンの質問に何も答えないクロノス。どんどんイライラし始めるテューポーン。2人の感情は対局にあるようだ。
「テューちゃん。金星に住んでた皆を預けるから導いてあげて。あと……この鎌はロキに返しといてくれないかな?」
「なあ兄ちゃん……気が変わったりしないのか?」
アダマスの鎌をテューポーンに手渡し、テューポーンの問に答えるクロノス。
「庭の草刈りすんの超楽だった、ありがとう。ってロキにお礼をお願いね。それと……気は変わらないよ。これで世界の歴史が先に進むんだから。」
下唇を噛んでクロノスを見守るテューポーン……
テューポーンが我慢強い末っ子だって分かっているクロノス……
「神力【歴史改変】発動。もしも金星に住んでた生き物達がテューちゃんの世界で惑星になった俺の上で楽しく暮らして行けたら。」
原初に世界を作り出した神々を統べる王の中の王。そんなクロノスの神格を持ってしても全て叶える事は出来なかったようだ。
「クロノス兄ちゃん……」
神格が削ぎ落とされ、消滅するまでの時間でテューポーンに向かい微笑みながら言った言葉があった。
「次に産まれるなら……何も見ず、何も聞かず、何も考える事ない路傍の石ころに生まれたいな。ただそこにあるだけでマグマの熱で溶かされるまで、風や雨に侵食されて消えるまで、空や大地を感じながら、のんびり過ごして見たいもんだよ。じゃあねテューちゃん。」
そして自分の神格を対価に生き返らせる事の出来る限りの生き物達を生き返らせたクロノスは、消滅して小さな石ころになった。
クロノスが変化した石ころを手に握るテューポーン。
「兄ちゃんの遺言叶えてやる。俺の世界の名前をやるよ……お前はパンツ……惑星パンツな……」
自分の名を付けた恒星のハビタブルゾーンに、クロノスの変化した石ころを浮かべ第二惑星としたテューポーン。宇宙を漂う様々な隕石を融合させて大地を作り上げていく。
「まさかクロノス兄ちゃんがパンツなんて名前になってるなんて誰もわからんだろ?俺が死ぬまで可愛がってくれなかった罰だ。恥ずかしい名前にしといてやったからな。」
惑星パンツを世界樹や仙桃木に生き物の住める環境に整えさせている間に、仮に地球に金星の生き物達を避難させたテューポーン。避難してきた大型の爬虫類やシダ植物達が地球で暮らして居た頃の時代は、白亜紀と呼ばれる恐竜の時代だったりする。
「カン。預かってくれてあんがとな。火星の奴らには気を付けろよ。」
「テューポーン。オイラだってわかってるさ。何年地球に君臨してると思ってんだよ。」
預けていた恐竜やシダ植物達を、惑星パンツに移住させたテューポーン。地球の大地を司る蟲神に礼を言って惑星パンツへ移動して行った。
地球から、ある日突然姿を消した恐竜達は惑星パンツでのんびりと生きる事になる。
時代は進んでギガントマキアの後。
「まったくよう……今度はラフテルごと消滅させちゃってやんの。やりすぎだっつーのオリュンポスのバカ共。」
2度目の神界大戦の最中にラフテルに住む生き物達を惑星パンツに出来る限り移住させたテューポーン。大地の神ガイアが望んだ事なのか分からなくなってきている。だって溺愛する末っ子が大好きな、沢山のモフモフ達が住んで居た惑星だったのだから。
「う〜ん……母ちゃんって何考えてんだろ?まあいっか。2度の負けで懲りただろうしよ。気にしないでおくか。」
魔石を持つ魔族や魔物達の住む環境を整えた後に太陽系に戻って来たのだが……
「テューポーン叔父上。いい加減世界は私達に管理させるべきじゃ無いのか?いつまでも老害が君臨していては世界の時が進まぬ。」
人間とかモフモフって何してんのかな?と見に来た火星でゼウスに喧嘩を売られる事になる。
「ふははっ!コレを見ろ!これさえあれば叔父上など怖くないさ!」
テューポーンが激おこプンプン丸だったが、自分の銀河に帰って行ったと聞いて安心していたのだが、突然太陽系に帰って来たと聞いて1度は動物の姿を借りてエジプトに逃げたオリュンポスの神々。
しかしゼウスがテューポーンの前に出て喧嘩を売ったのは手に持つ2つの神器があったから。
ゼウスが手に持つのはアダマスの鎌と雷霆。
本来の所有者であるロキに「鬼嫁がエジプトの別荘の庭の草むしりをしろって五月蝿いんだ。草刈りするのにアダマスの鎌貸して」と、お願いして借りた鎌を持ち……
銀河全体を震わせる程の威力を持つ雷霆を構える。しかしそこは原初神ガイアの全てを受け継いで産まれたテューポーン。ゼウスの攻撃を全て受けきり、たった1度の攻撃でゼウスを無力化してしまう。
「アダマスの鎌は没収な。ロキに返しとく。それとしばらく反省しとけ。」
火星で大暴れしたゼウスの攻撃を全て受け切る間に火星の住人達を箱舟で地球に避難させたり。異界渡りの羽衣に包んで己の世界に避難させたテューポーン。
「しばらくしたら出してやるからよ。とりあえず火星を元に戻さなきゃ人間とか動物達の住む所が無くなるもんな。」
しかし火星を元に戻す前に、再戦を挑んできたゼウスに負けて封印されてしまう。
3度の神界大戦の余波を受けて太陽系のハビタブルゾーンである金星から火星の間に位置する惑星は、地球だけが命を育むことの出来る惑星になってしまった。
更に時は流れて18世紀。
「おお!ロキ。見てくれよ殆ど全部集まってんじゃん。」
ロキと2人で地球を観光しているテューポーン。
あまりオリュンポスの神々が司る地域へは近付かないのだが、ここだけは違う。
「おお!殆ど全部って……全部じゃないのか?」
何が集まっているかと言えば、全身に行き渡っていた無常の果実。封印された本体に自動設定していた物が、やっと全て完了したようだ。
「ちょびっとだけ義体にも混ざってやんの。あと数年くらいで効果も無くなんだろけどよ。」
本体の口の端に引っかかっている無常の果実を持ち上げたテューポーン……
「ゼウスの口に飛んで行けー!」
なんて言いながら無常の果実を投げてしまった。
「うわあ……ひっでえ匂い。腐ってた?」
「ん。たぶん腐ってた。まぁまだ無常の果実の効果が少し残ってるし、ゼウスの口に入らないんだろうな。」
ドン引きしているロキだが……
「あんな匂いのする腐ったリンゴなんて誰も食わんか。微生物達は本能的に理解するはずだから分解なんてしねえだろうしさ。」
「だろ?まあそのうちゼウスが拾って食べてくれたらな⤴︎︎⤴︎︎位の感覚だからいいさ。」
拾い食いする最高神など居ないはず。
そして、己の本体を見つめるテューポーン……
「あとは雷霆が抜けたらか……なあロキ。競馬でも行こうぜ。今なら三連単が当たる気がする!」
「おっ!当たったらハーデスの店でお好み焼きでも奢って貰おうかな。」
「もちろん良いけどさ。ずっと言わなきゃって思ってた事があんだよ。先にそれを言っとく。」
急に真剣な顔になったテューポーンを見て、ロキが何事かと構えた。
「頼むから庭の草むしり程度でアダマスの鎌を貸すなよ。ビビるわ!次元すら切り裂くアダマスの鎌で草刈りとかよ!」
「あっそれか……わりぃわりぃ。鬼嫁って聞いてたから可哀想になっちまってよ……たぶんもう貸さんよ。」
仲良く2人で時渡りをして、21世紀の日本の競馬場へと転移して行った。三冠馬に至る馬を毎回外して買うテューポーンを見て「その買い方は当たらないと思うぞ」とロキが呟いたとかなんとか。
テューポーン様回でした。末っ子なんで我儘ですよ。
次回から本編に戻ります。9章は胸糞展開が殆どなんで、お気を付け下さい。なろうの規約に引っ掛からなきゃ良いけど……
読んで貰えて感謝です。




