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おっさん家!  作者: サン助 箱スキー
8章 惑星パンツが……
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閑話 ガテン系魔王の苦悩

後編です。


 アトラ大陸深淵の森に住み始めた安西。

今日も今日とてダンジョン作成を楽しんでいるようだ。


「最初に作ったダンジョンは意味が無かったね。誰も来てくれないんだもんな。でもさ、いくらダンジョンを人の領域に作るからって集まり過ぎだろ?」


「隆文パパ。今更そんな事を言っても遅いよ。皆の協力も得られたんだから、すっごいの作ろ!」


 集まった魔族や魔物達の数が、霧の森に住んでいて一緒に逃げて来た数と殆ど同じな事に驚いている。安西と集まった魔物や魔族達を様々な部署に振り分けるポロ。サマンサは食料調達班兼調理班に。ライ造はガテン系魔族達と一緒に肉体労働に。


 安西の作成したダンジョンは、自然界に漂う魔力や侵入して来た人種から微量の魔力を吸収して様々な物を生み出すダンジョンだったりして、周りの魔族と相談したら人種側の地域に作ろうか?となったのである。


「だけど凄いな……最初に作った穴と全然違うや。数の力ってのはホント驚くよ。」


 洞窟型のダンジョンを作ったのだが、沢山の地中に住む魔物が協力してくれたおかげで、とんでもなく複雑な構造の地下ダンジョンを作る事が出来た。


「このダンジョンに登録したい方は居るかな?」


 ダンジョンモンスターとして登録されれば、基本的にダンジョンの中に居る限り死んでも生き返る。

外出中であっても適用されるらしく、外出中の場合は肉体や魔石が残ってなくても、登録された魔物や魔族は空気中に変質して霧散した魔力をダンジョンが1箇所に集めて再構築して再生してくれるのである。


「もう少し早くにダンジョンマスターとして生きていれば、ライ造のお父さんも死ななかったのかもね……」


「隆文パパがライ造に優しくしてくれるのは可哀想だから?」


 ポロが疑問に思ったらしいのだが……


「違うよ。ライ造だけじゃない。ポロもサマンサも……俺が魔族になって初めて優しくしてくれたから。だから俺も優しくするんだ。」


 ポロは意味がわかってなかった……

1人キャンプが趣味だと言っても、それはある程度安全の担保されている日本での事。

どう見ても屈強そうな奴らから武器を持って追い立てられ、殺されそうになり何度も繰り返して襲われて。食う物も現地調達で孤独に彷徨っていた所に出会った3人である。

両方共に依存していたのかもしれない。


「さあ人の領域にオープンする最初のダンジョンだ。空気中に漂う集めた魔力を何に変換するか設定して次に行こうか?」



 深淵の森に手伝ってくれた魔物や魔族を送り返してダンジョンの監視をする安西。自分のダンジョンの中ならどこでも自由に視点を切り替えられるようだ。


「色んな人種が居るんだね。でも人種って浅ましいな……そこまでしなくちゃダメなんだろうか?」


 倒した魔物の素材を剥ぎ取る人種達を見て呟く。


「僕の兄さんが殺された時はもっと酷かった……」


 父親だと思っていた死体は兄だったようだ。


「どんなだったの?嫌なら言わなくて良いけど……」


 少し俯いてライ造が答えた。


「僕を逃がす為に囮になってくれたんだけど……凄い数の武器を持った奴らに、寄って集って……」


 泣き出しそうなライ造を抱きしめて安西は決意を固めた。


「俺が世界中にダンジョンを作るからさ。そしたら魔物や魔族を全部登録しちゃおう。そうすれば皆が殺されても生き返るから。そしたらまた皆に会えるでしょ?」


 ポロもサマンサもライ造も強く頷いて頑張ると答えた。


 それから数百年。毎日ダンジョン作成に勤しむ安西。四大陸を自前の翼で飛び回り、様々な地域にダンジョンを作って回っている。


「よっしゃ!初の要塞型ダンジョン完成!」


「ホントに疲れたー!」「ライ造は運んだだけ。僕は削ったりくっ付けたり色々したよ。」「そんな事言わないの。ご飯の時間だよ。」


「サマンサ。いつもありがとうね。」「まってましたー!」「やっとお昼ご飯!」


 仲良く4人で世界を回って、各大陸に様々なダンジョンを作り上げた最終日。4人はそれぞれの好物を食べながら物思いにふけっている。


 ダンジョンコアが精製した純粋な魔力の結晶を粉々に砕いて調味料にした物を水飴に混ぜて舐めるポロ。木苺とドングリのタルトを頬張るライ造。

リンとカルシウム、それ以外にも様々な鉱物から栄養を取るサマンサ。そして……


 数年前から何も食べなくなった安西。

ダンジョンから供給される魔力を食べているからお腹は減らないよと言うが、少しずつ角が細くなってきている。まだ誰も気付いていないのだが。




 世界中にダンジョンを作り終わって、様々な魔物や魔族をダンジョンモンスターに登録した安西は、深淵の森に帰って来てすぐに困った事を持ち掛けられた。


「俺が魔王なんて無理ですって。力も弱いし戦いなんて喧嘩すらした事無いんですから。逃げ足は自信がありますけど……」


 樹魔王ナメッコが深淵の森に来ていて、自分を探していると聞いて出向いたのだが、何故か魔王になれと言われた。


「与えられる者が魔王に。大いなる主の命令である。ワシは隠居せよと言われてな。お前しか居ないのだよ。」


 1つ食べておけと言われて渡された果実を食べた安西。転生した時は38歳だったのだが、28歳程の見た目に若返った。


「これがワシが与えられる物じゃ。お主は生きる場所を与えられる。お前だけが魔王になる資格の持ち主じゃ。」


 どう考えても自分では荷が重いと思っていたのだが……


「お前にワシらエントの大木から剪定した木材を与えようじゃないか。作ってみたかったのだろう?木造の大きな城を。」


 深淵の森には大きな木材が殆ど無く、世界中を回って探しても大木は殆どエントだったせいで江戸城を作る事を諦めていた所に、そんな話である。


「それならやります!自由に使っていいんですよね?」


「もちろんじゃとも。太って動けなくなるよりスマートな方が良いからのう。」


 そして江戸城を作り始める。神から貰った設計図を元に。


 誰にも手伝って貰わなかった、安西1人で造り上げた江戸城は築城に数百年を要した。


 その間にポロやライ造やサマンサは大人になり、安西の傍で溢れる良質な魔力を吸収して育った三人は、今では魔族の代表とも言える程に強くなってしまっていた。


「この(ふすま)をはめたら…………」


 最後の1枚の襖をはめて、江戸城の外に出る安西。そのまま門をくぐり抜け数キロ離れた場所まで歩いて来た。


「俺がこの世界で生きた証だな……いや……日本人だった証かもしれないな……」


 ただ1人自分だけがダンジョンモンスターとして登録されたダンジョン・江戸城。世界中の魔物や魔族からはこう呼ばれる……


 【魔王城】


 そんな物を造り上げたのだが、少しずつ色んな事が変化して来た。

魔王城に君臨して数百年。どんどん世界中の魔力が減っていく。屈強だった魔物や魔族がどんどん弱体化していく。


「聖域だったっけ?神様が住んでるのは。」


「どうしたのですか隆文様?神様に会いに行きたいのでしょうか?」


 どんどん乱れていく魔力の流れ、それが何故なのか知りたくなった安西。江戸城で働く魔族に聞いてみたのだが……


「聖獣の監視を潜り抜けて聖域に到達するなんて不可能ですよ。海からは海の2強が、空からは朱雀が、たとえ辿り着けても白虎が居ますから。」


 腕っ節には全く自信の無い安西は即諦めたようだ。


 その日からまた安西は旅に出た。世界中にダンジョンを増やす為に。ポロもサマンサもライ造も今回は着いて来ていない。それぞれに仕事が出来ていて、それなりに立場と言う物もあるから。


 たった1人でダンジョンを増やし続ける安西。

増やしたダンジョンの殆どはフィールドタイプのダンジョンだったのだが、蒼大陸の南西部に辿り着いた時に不思議な種族と出会ってしまった。


「変にゃ魔族にゃ。すごく力の弱い魔族にゃ。」


 災害時緊急避難所と日本語で書かれた看板が気になった安西。中に入れば異空間でダンジョンだと認識出来た。


「そうか!こうすれば良かったんだ。」


 ダンジョンコアから食べ物を供給されていると知って、それに関心した魔王。真似して様々な場所に似たようなダンジョンを作っていく事に決めたようだ。


「君達も相当に弱い種族だよね?魔族になる?なれば魔力を食べておけば死ぬ事は無くなるし、死んでもダンジョンで生き返るから死ぬ事は無くなるけど。」


 喋る猫にゃん族。愛玩魔物として扱われる事が多く、大きな肉食獣に食われる事が多かった彼らは。


「最近食べ物の量が減ったにゃ。食べ物がにゃくても死なないかにゃ?それなら皆で魔族になるにゃ。」


 その答えを聞いて作り出した小さなダンジョンコアを砕いてにゃん族に飲ませる。喋る猫だったにゃん族が魔族に変化して二足歩行になった……


「くっそ可愛いな……これって乱獲されそう……」


 そう考えて、にゃん族が住む森の傍に、とてつもない広さのフィールドダンジョンを作った。

そこに住むのはエントやドライアド、アルラウネやマンドラゴラタイプの魔物達。


「皆さんにお願いです。出来るだけ森を抜けさせないで欲しいです。」


 そう言って蒼大陸を後にした。


 アトラ大陸に戻って来た時に深淵の森の西の端にある砂浜側から帰って来た安西。懐かしいダンジョンを発見した。


「ここは最初のダンジョンか。そう言えば誰も登録してないんだな……」


 そう言いながら、近くにあった岩を入口近くに動かして来て、大きく日本語で災害時緊急避難所と掘る。


 直径3mの岩を片手で運べる力にも、爪で岩に深く文字を掘り込める事も異常だと気付いていない。


「さあ江戸城に帰ろう。」


 江戸城に帰った安西が見た物は、魔力が足りず弱ってしまった魔物や魔族達。


 地下に作った特別室、ダンジョン制御室の中に行けば簡単に原因がわかった。


「なんで星全体の魔力量が減ってるんだよ?昔は一定だったのに……」


 その日から苦悩した。魔物や魔族がどんどん弱って行く姿を見続けて。自分の角がとても小さくなっている事すら気付いていない。


「サマンサ。ポロ。ライ造。ちょっとお願いがある。」


 そう言って、三将と呼ばれる魔族に成長して、日々忙しく過ごす子供達に一通の手紙を渡した安西。


「いつか新しい魔王が生まれたらコレを渡して。俺はダンジョンそのものになるから。」


 自分の体をダンジョンコアに変える。

それがダンジョンマスターとして与えられた最大のギフト。使えば意識が無くなる代わりに、全てのダンジョンに魔力を供給出来る物。


 どんなポーズでダンジョンコアになるか思案して、意味のわかってなかった三人の子供達にさよならを告げた。


「三人共に仲良くね。いつか必ず魔王が現れる。絶対現れると思うから、その時はよろしく。あの世から見守ってるよ。」


 三人が意味が分からず考えている隙にギフトを発動した。


 そして……


 次代の魔王が深淵の森の東側に誕生するまで、空気中の魔力を集めて増幅した後に世界中に作った自作のダンジョンに魔力を供給するだけの水晶になった安西。


 君臨し続けた5千年間にどんな小さな命も1度も奪わずに、魔物や魔族に生きる場所を与え続けた安西は、全ての魔物や魔族から尊敬の念を込めて……


 優しき猛禽類の大魔王。禽魔王・安西 隆文と呼ばれる事になる。



読んで貰えて感謝です。

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