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おっさん家!  作者: サン助 箱スキー
8章 惑星パンツが……
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閑話 肉体労働系魔族 安西 隆文

閑話です。


 日本に住んでた頃、日本の城が大好きだった者が惑星パンツへ召喚されたのは、昔の山城(やまじろ)を見学する為に有給を使って山奥で単独でキャンプをしていた時に、土砂崩れに巻き込まれた瞬間だった。


 この男、若くして両親を亡くして兄弟等もおらず、趣味と言えばジオラマ制作とキャンプ。生業としているのは両親を亡くしてから大学中退した後に就職した土木関係の重機オペレーター。そんな男は土砂の中で孤独に死ぬ筈だったのだが……


「女神様……超綺麗だったな……異世界か……」


 太陽と月が共に空に登っていた時に、たまたま移動中の2柱の女神の目に止まり、とあるチート能力を貰って異世界に転生させて貰ったようだ。


「背中の翼のせいで寝袋に入るのは大変だし……角が邪魔でテントから出るのに引っ掛かる……人間のままでよかったのに……」


 背中に梟と鷹の翼、額に捻れた大きな角を与えられ、長生き出来るようにと魔族として体を作り替えられたようだ。


「動物っぽい顔した奴とか、ムキムキで藍色の肌した剣とか槍とか持った奴の方が魔族っぽいだろ……」


 連れてこられた場所が悪かったのか、獣人や魔人の多く住む地域に放置されてしまった。

それのせいで、突然魔族と叫ばれ襲われた事に憤ってるようだ。


「山登りの装具もあるし……保存食も数日分残ってるから、どこか山の中にでもかくれようかな……」


 日が登る前に行動を開始するようだ。与えられた物は翼と角だけでは無く、梟と鷹の目も含まれていて、夜でもハッキリと物が見えている。もちろん遠くの物もハッキリ見える。


「お腹が空いてるけどスニッ〇ーズだけじゃ足りないよな……なんか食べられる物でも探そ……」


 1人キャンプが趣味だったので食べられそうな物を見つけるのは比較的簡単だったようだ。見つけたキノコ小さい小鍋を火にかけてフライパン替わりにして、塩コショウで薄く味付けをして食べている。


 男は簡易インベントリや与えられたチート能力の説明書を読んだ後に、和装の方の女神に貰った物を見てニヤニヤし始める……


「江戸城見取り図・神界詳細版か……」


 何か欲しい物はあるか?と女神に問われて答えたのが【江戸城の設計図】。

渡された物は普通では見る事の出来ない隠し通路や隠し部屋まで詳細を見る事の出来る分厚い1冊の本。丁寧に1つ1つの細工の詳細まで載っている。


「どうせならインベントリに時間停止機能も付けてくれたらよかったのに……まあ手ぶらで歩けるからいいか……」


 与えられた羽や魔力の外部タンクの角が何故か使い方が分かる事に驚いている。まるで生まれつき持っていた物のように。


「う〜ん……高くは飛べない。ちょっと浮くくらいか……と言うか疲れるな羽を動かすの……」


 羽のサイズを小さく出来るらしく、ちょこんと小さな羽にして森の中を徒歩で進んでいく。そのうち自由自在に飛べるようになるのだが今はまだ知らない。




 男の名前は安西 隆文。


 後に現魔王から魔王業を引き継ぎ、星神の加護を受けて五千年の間世界に君臨する、猛禽類の大魔王・禽魔王と呼ばれる者の惑星パンツ最初の半年は前途多難であった。



 それと言うのも……何処に行っても魔族と言われて追われる事。何も罪は侵して無いのだが……

 現地人と交流を持とうと村を尋ねれば、剣や槍、弓や魔法で追い払われ。仕方ないから森や山で暮らそうとすると、冒険者と呼ばれる者達が夜襲を仕掛けて来たり等、落ち着く事が出来ないままで数ヶ月孤独に生きていた。


 そんなある日、辿り着いたのは霧の大森林と呼ばれた森。今代の魔王が君臨していて、人種の横暴を食い止めている森の端。


「何だこの黒い綿毛……さっきからずっと角にくっ付いて……」


 森の端で食べられそうな物を探していると、捻れた角と楽しそうに遊ぶ黒い綿毛のような何か。


「おっ!たぶんこれは舞茸!舞茸だよな……」


 小さな片手鍋に採取したキノコを入れて煮る。味付けは残り少ない塩を少々……だがしかし……


「ダメだ!舞茸じゃなかった……やばい!」


 どうやら腹を下したようだ。

茂みに隠れて排便をしている所に現れたのが……


「うわ!ごめん!まさか誰か居るなんて思ってなかった!」


 頭に花の冠を付けた小さな女の子。全体的に緑の色素で可愛らしい。


「言葉は分かる?ごめん。直ぐに片付けるから。」


 頷いた女の子に隠すようにキャンプセットの中から折り畳み式のスコップを取り出して排泄物を地面に埋める。それを真後ろで見ているのは……


「うわ!ちっちゃいライオン……ぽっい子供?」


 顔がライオンなのだが、体は人間ぽい子供。


「ゔぅぅぅっ……」


 目の前に現れたライオン顔の子供が急に泣き出した……


「どうしたの?ねえ言葉は分かる?なんで泣いてるの?」


 頷きながら指を指すライオン顔の子供と、緑の色素の花冠を付けた女の子……誘導するように飛ぶ黒い綿毛。


「なんだろ?あっちに何かあるの?」


 指を指された方に来てみれば……


「うわ……酷いな……君の家族?」


 逞しい体を切り刻まれて(たてがみ)や皮を剥がれ、胸に大きな切り傷のあるライオン顔の大人の死体が1つ。


「君も魔族?俺の事が怖くない?」


 泣きながら頷くライオン顔の子供を抱き上げて、貼っていたテントに置いて来た、そして墓を作り始める。


「牙も爪も……なんもかんも持って行かれたんだな……」


 大腿骨まで抜かれている死体を埋めて居るのだが、気持ち悪いなんて全く思わなかったようだ。

何よりも、このまま放置する事が可哀想に思えて。


「安らかに眠れないよな……でも安心しろ。俺がアンタの子供を育ててやるから。旅は道連れって言うもんな。立派な魔族に育ててやるよ。」


 その日から共に行動する事になる。千年後に三魔将と呼ばれる者達と共に。




 それから数年後。



 この当時の惑星パンツには月が3つ、青い月、黄色の月、緑の月。そしてその日、赤い月が数日後に白い月が増えようとしていた。


「大陸を渡る奴らは船に!早く船に乗り込んで!」


 与えられたチート能力【異空間作成】を使い、木の葉を地面にして沢山の魔物や魔族。動物や虫等の生き物を船状にした異空間に乗せる安西。


 数年間霧の森で過ごして、様々な生き物と仲良くなった彼は焦っていた。


「デカい!なんだよ!樹魔王様より大きいじゃないか……あんなのが住んでるのかよ……」


 安西が呟いた言葉に反応したデカいなにか……


「ああ?なんだお前?俺の事がわかんねえ魔族なんて居たっけ……」


 睨みつけられて身動きの取れなくなった安西だったが……


「ちっ!ここがバレちまったか。仕方ねえ。おい!そこの魔族。てめえに掛けられた呪いは解除しといてやる。」


 女神より与えられたギフトに含まれていた隠れた呪い。女神達の意識誘導を解除してくれたようだ。


「チシャ菜!お前に任せんぞ。そこの魔族!さっさと出港しろし!」


 大きな何かが大きな腕を振ったように見えたのだが……


「地面が飛んでいく……でっかい木に見えるレタスと一緒に……ラピ○タ?」


「ちげぇよ、そんな事はどうでもいい。お前は大陸を東に迂回して北東に向かえ。デカい亀が居るから引っ張ってもらえばいい。辿り着いた先の森をお前にやる。ちょっくら俺は仕事しなくちゃだからよ。」


 そう言って巨大な何かは、飛んでいく大陸と共に空に登って行った。




 数日後出会った亀はとてつもなく大きく、沢山の亀を従えて船状に作られた葉っぱの異空間を保護しつつ、乗っている生き物を砂浜に上陸させてくれた。


「赤い月が出来て、白い月が増えましたな。我らの大いなる主の命令ですので、ここまでは協力しますが、あなたは地球人ですよね?過去に現れた勇者や聖女のように我らの大いなる神に歯向かうような事はしないで頂きたい。」


 夜中に海に戻って行こうとする大きな亀に去り際に言われた事。大いなる神と言う言葉に何故か納得がいった安西。転生時に出会った神は、どこか俗世にまみれているような気がしていて胡散臭いものだったのだが、先日の巨大な何かは、まさに神と言うに相応しい力を持っていた。


 ムラスト大陸から離れる時に海から見たものは、綺麗に真っ直ぐ切り取られ、断崖絶壁になった大陸だったのだから。




 安西は辿り着いた深淵の森で活動を始める。


「隆文パパ。こっちの石がおっきくて持ち上がらないよ。」


「頑張れよライ造。俺は物を持てないけど応援は出来るから応援してやる。ガンバレー!」


「ポロ!魔法で手伝ってあげなさいよ。ライ造だけに任せちゃダメでしょ?」


「サマンサはさっさと植物を移動させなよ。隆文パパが困ってるよ。」


 何故か3人の魔族にパパと呼ばれるようになった安西。嫌な気はして無いのだが……

安西を含む4人が何をしているかと言うと、地面を掘っている。


「もう少し広げたら空間を切り離すから頑張ろう。」


 安西はスコップで。ライ造は後ろ足で土を掘りながらお手伝い。ポロは魔法でお手伝いをしつつ、サマンサは植物の根を避けてくれている。


 4人がかりで地下20m程の所に500㎡程の空間を作っていた。


「なんで自力で作った建築物や建造物とか庭園とかしかダンジョンに出来ないんだよ……」


 ダンジョンマスターとしてのチートを与えられていたのだが、手作りの何かしかダンジョンに出来ないようだ。


「まっ良いか。そのうち江戸城も作ってやる。設計図はあるんだし!」


 趣味のジオラマ作成が1/1スケールになっただけで、案外嫌では無さそうだ。


「隆文パパ。ゴハンの時間だよ。」「お手伝いしたからお腹減った。」「飯ーー!」「はいはい。分かったから。皆何を食べたい?」


 いつの間にか父親が板に付いてきたようだ。独身のくせに父性に目覚めている。


「やっと1個目のダンジョンが出来たな。みんなでお祝いでもしよう。」


 アトラ大陸深淵の森の西端に位置する小さなダンジョンが安西の最初に作ったダンジョン。何も無いただの洞窟なのだがスコップ1本で作るのに一年以上かかったようだ。


「ライ造とサマンサは木苺のパイでいい?ポロは水飴で良いかな?」


 野生の麦が生えていて、それを他の魔族が小麦粉にしてくれた物を分けて貰って作ったパイと水飴。安西には少し物足りないが気にしていない。


「隆文パパ。サマンサも料理を覚えたい。」「げえっお前の料理は黒焦げの何かじゃんかよ!」「あれは料理とは言えない。食材の無駄。」


「まあまあ、ちゃんと覚えたら料理なんて簡単なんだから。サマンサ、次から一緒に作ろうか?」



 惑星パンツにカラフルな月が加わって、月が6つになってからも楽しい日々がそれなりに続いていった。






 





読んで貰えて感謝です。


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