意外な強さ
この人ならって感じの人と意外な人です。
天元大陸に点在する禽魔王の作ったダンジョンは3辛ダンジョンが4ヶ所のみ。天元大陸には元々魔物や魔族が少ないのである。四大陸の中で最も体内に魔石を持たぬ生き物達が繁栄していると言っても良い。
2カ所ずつを二手に分かれて攻略するようだ。
「貴方の大棍棒を最も生かせるのはフィールドダンジョンだと思うのですが何故にアイ達に譲ったのですか?」
「それはだな……こうする為だ。むぅぅん!」
炸裂音と共に城壁が崩れる……ココは天元大陸3辛ダンジョン・悪魔城。通常サイズのクロさんが城の壁を崩して真っ直ぐ進み始める。
「さすがパパ!凄いキレてる!ナイスバルク!腹筋板チョコ!背中に鬼が宿ってる!」
「凄いよクロおじさん。デカくて他が見えない!土台が違うよ土台が!」
「鬼の中の鬼!男っぷりバク上がりだよ!上腕二頭筋ナイスチョモランマ!」
何処の大会の掛け声だよ……
しかし城を崩されてたまるものかと、悪魔達が続々と集まってくる。しかし……
「大棍棒の強撃を思い知れ!どりゃァァァ!」
ヒヒイロカネでコーティングされた大棍棒を振り回す度に悪魔達が消滅する。星神から預かって返すのを忘れていた特級魔石から魔力を引き出しつつ、限界を超えて暴れ回るクロさんは、倒す相手とどっちが悪魔かわからない程だった。
「ママ。私も殺る!殺りまくりたい!」「コク姉ちゃんずるいぞ!俺だって殺るんだ。」「ミドリ、貴方は後ろに居なさい。私が殺るんだから。」
暴れたがりらしい……ギン君が居なくても……普通に3人共に鬼なのだから当然なのか?
「貴方達は見学ですよ。剛力のクロを良く見ておきなさい。棍棒を持てばベニでも叶わない膂力の鬼なのですから。」
暴れ回るクロさんの筋肉は棍棒を振り回す為だけに鍛えられた筋肉である。素で相撲も強いが、こと真正面から棍棒での殴り合いに掛けてはニカラ氏族で1番の実力を誇る。
「俺は思ったのだ、ニノ様の体をぺしゃんこに潰せなかった俺の実力はクソだったと。思い上がっていたと……」
ブンブン振り回される大棍棒のせいで悪魔城の1階の内壁は粉々になりかけている。そんな状態でも崩れないのはダンジョンだからである。
「次こそぺしゃんこに潰してやるさ。その為に日々眠る間も惜しんで振り回したのだ!どっせい!」
壊す内壁が無くなれば、次は天井をぶち抜く。ぶち抜いた天井ごと上の階層を破壊していく暴力の化身と化すクロさん。
「いよ!生体重機!そこまで絞るには眠れない夜もあっただろう!」「凄い!3角チョコパイ!来てるよ来てるよ!」「腹筋で大根をすりおろしたい!」
「惚れ直しちゃいそう。カッコイイぞ旦那様♡」
5人ともに楽しそうだったりする。
方やアイ一行……3辛ダンジョンに挑むのに引き連れてきたもの達は……にゃん族……トラ吉……
「なんでアイは1人なのにゃ?他の鬼はこにゃいのかにゃ?」
「何故か私だけトラと2人を指定されたんだ……なんで私が3辛ダンジョンなどに……」
その時バサバサっとフィールドダンジョンであるが故に鳥の飛び立つ音がする……
「ひいいぃぃい!嫌だ!嫌なんだ!私は怖いのが嫌いなんだ!」「トラ吉も嫌いだにゃ!アイ!隠れさせて下さいにゃ!」
アイさんの腰に付けたウエストポーチに潜り込むトラ吉……顔だけ出して外を伺っているのだが……
「ひいいぃぃい!来るな!来るなぁぁぁ!」
そう言って腕を振り回して走り回るアイなのだが、密林型フィールドダンジョンなのに、草原を走り回る如く障害物等何も無いと言わんばかりに粉砕していく。
「凄いにゃ!走った跡が更地になって行くにゃ!粉砕された植物型や昆虫型の魔物が可哀想にゃ……」
周囲20km程ある密林型フィールドダンジョンをしばらく泣きながら走り回ったアイ。どうなったかと言えば……
「更地になっちゃったにゃ。泣いてキレて暴れるとか凄いにゃ。良くテンションがここまでもつにゃ。」
「トラ……もう何も居ないか?何の気配も感じないか?ひぐっ……ひぐっ……」
元密林ダンジョンに残っていた物は、ダンジョンコアの鎮座している台座だけだった。
覆面してたので見ていた冒険者達に素顔はバレてません。
読んで貰えて感謝です。




