島へ向かった5人
島はアレです。
魔物の島。それは過去に魔物達の為だけに作られた島。人種が島内に入る事を制限されている島。
「スッポン様……ホントにワシらが行ってもええんじゃろうか?」
「何もお気になさらず。我らが新しい大いなる主の指令ですので。私も快く送り迎え出来ますよ。」
北半球の海を守護するスッポンの背に乗るのは、過去に島で暮らした5人。
ドルトムント、ゴスペル、コリンナ、アルト、エメリー。
「懐かしいわね。私は身重だから戦えないけどサポートは任せて。」
「もちろんですよエメリー。私達の一族で貴女を信頼していない者など居ませんから。」
「チョモ族にも会えるとええんじゃが……知っとる者は生きとるかのう?」
「さすがに生きて無いでしょう。だって四大陸に住む前魔王の契約を受けた者だけなのでしょう?現世に縛られているのは。」
魔物の島は完全に独立した世界……と言うか島ごとダンジョンなのである。
「それならご心配無く。この島は四大陸と違って成り立ちから特別ですから。元々が古き大いなる主がお造りになられた10辛ダンジョンを、前魔王が7辛ダンジョンに作り替えた物ですし。他の地域の魔物達と復活する条件が違いますが、確実に貴方達が知ってる者も生き残っているはずですよ。」
そんな事をスッポンに言われて喜ぶ5人。
「あヤツらにコレを渡してやらねばならんわ。」
「おお!ドルト兄さん。持ち出せたのか!」
「ニノ様に自転車もどきを作る時に渡された金剛木で作ったんですよ。木製だったらいいんでしょ?それなら金剛木で作ってしまえば大丈夫って思いましてね。」
「私やアルトが、何時か来るこの日の為に全身全霊を込めて作りましたから。」
持ち込んだのは金剛木の枝を削って作った木製バット。中は空洞になっていて軽量化してあるが普通の金棒よりずっと頑丈で、6角形の角がきっちりと出ている凶悪な棍棒である。
「オートバイのフレームやスイングアームを元に構想を練りましたからね。目の字断面の補強に手間が掛かりましたが、素晴らしい軽さと強度ですよ。」
「アンタ達は……全くもう……」
頭を抱えるエメリーだったが……
「最高じゃない!そんな物を神に隠れて作るなんて!最高じゃないの!」
「そうじゃろそうじゃろ。ワシらは従っておるが隷属はしておらん。作るなと言われて、ハイソウデスカと答えられる訳が無いだろう。」
「どうなるか分かりませんからね。過去の神が暴れたようにニノ様だって……」
「カンタ様のように天真爛漫だと良いのじゃが……」
「たまに恐ろしくなる時がありますからね。何時神罰が下るか……。」
スッポンは悲しんでいた……
「あれ程に我慢強い御方を裏切る気ですか?」と言いたかったのだが、言えなかった。
それは……
「ワシらはワシらの道を行く。それはドワーフである限り変わらん。」「ドワーフは鉄を叩く。」「ドワーフは酒を飲みます。」「ドワーフは戦います。」「アンタ達ってホント馬鹿よね……」
スッポンから降りて島の中央に据えられている2つのダンジョンコアのうち、大きい方のダンジョンコアは無視して、7辛ダンジョンを維持しているコアに星神から預かった魔石を吸収させる。
「コレでええんじゃろ?チョモ族の集落でも探そうじゃないか。」
そんな事を言う5人の傍には、地竜の死骸が複数転がっていた。
そしてスッポンは……
「一族を集めよ。聖域に害を成す者を潰さねばならん。今はまだ小さな歪みだが、いずれ大きな穴となる。気付かれぬように静かにな。」
島亀の一族を全て集めようとしていた。
何よりも平和を望む新しき大いなる主の為に。
結局の所、人って……
読んで貰えて感謝です。




