炊き肉食べて覚悟を決めろ
たぶん……この旅行回が最後のコメディパートになると思います。
大急ぎで実家に転移してきた。もちろん俺の本当の愛車を持って行く為だ。
「綺麗にしてくれてるんだな……誰も乗らないのにさ……」
なんか申し訳なくなる……先に死んでしまって。
「ガソリンも満タンじゃん……売っちゃえば良いのに……」
走行距離が50kmくらい増えてるから誰か乗ったんだろうな……
「オイルは……ちゃんと入ってるな。バッテリーも切れてないか……。」
過去眼で確認してみた……元の持ち主だった爺さんが毎日磨いてくれてるみたいだ……
売ろうかって相談してた親父とお袋に「ワシがやったバイクじゃ。ワシが返して貰う。」なんて叫んだみたいだ……
目の前でケツをさらけ出して屁をこいてスマン……
そんな事を考えてたら……
「和信よ……バカもんが……楽しい事なんか何一つせず逝きおって……」
十分楽しんでたよ……それなりに色々楽しんでたさ……だからもう俺の事なんて忘れろよ……
「ワシの目が黒いうちは、しっかりと整備しといてやるからな。その後は知らん……だから帰って来い……」
そんな事呟くなよ……そう思いながらバイクに……
「仕方ない……神力【永劫の祝福】発動。」
このバイクが朽ち果てて鉄の塊になるまで、このバイクに関係する生き物を幸せにし続ける。そんな神力を発動しといた。その後に過去眼を閉じた。
結局愛車は持ち出せなかった……。
「すいません国さんマルトさん。バイク持って来れませんでした。」
「構わんぞニノ。ワシのコレクションから1台貸そうじゃないか。」
マルトさんと国さんが革ジャン姿になってる……
「コレクションですか?2ストってありますかね?」
俺は4ストのバイクだとエンジンブレーキが効きすぎて怖いんだ。
「もちろんあるぞ。とっておきのがな。」
ニヤニヤする国さんとマルトさん……連れて行かれた車庫にあったのは……
「うわ!オレンジラインのRD35〇LCじゃないですか!しかもアンダーカウルもビキニカウルも純正!メーターは180kmメーターなんですね……良いなあピカピカじゃないですか。走行距離って……50km……マジか!」
「男はkaw〇sakiだろうがな、kawa〇akiの古い2ストは長距離だと尻が死ぬ。ジャジャ馬も良いが……お主はYAM〇HA党なのであろう?秘蔵のコレクションだ。大切にぶん回してくれよ。」
サビどころか、くもり1つ無いサンパンとか……
「もちろん。思いっ切り安全運転でぶん回します。」
初めてフルノーマルの350に乗る……楽しみだ。
「って……国さんって原付?……」
ちょいまち!原付で鹿児島までとか……島根だよここ……
「原付じゃないぞ。ボアアップしてあるから60ccだ。こんなナリだが速いんだぞ。」
パッ〇ルじゃん……
「私も欲しいのですよ。毘沙門天様や国さんの愛車ですからね。憧れますよ60ccのパッ〇ルは。」
「最近は殆ど見掛ける事も無くなったからのう。大切に乗らねばなのだよ。」
「数台ありますよ。インベントリに数台眠ってますが……ドワーフさん達の手によるレストア済なのが……欲しいなら1台どうです?」
マルトさんが乱れて狂喜乱舞するのを初めて見た気がする。原付免許で乗れますか?だってさ。
「申し訳ない。60ccになってるので原付免許では……」
錆でシリンダーに小さな穴が出来てたから、ボーリング加工してピストンは自作したんだ……
「良いでは無いかマルト。125ccのオートマ免許を取りに行けば。それくらいの金額なら仙桃を1つ売れば済むだろう?毎度奉納してもらうのは気が引けていたのだ。たまには自分の事に使え。」
マルトさんが俺を見てる……
「ですよ。マルトさんの生活の充実に使ってください。」
凄く嬉しそうなマルトさんを見て、少し申し訳なくなった。お世話になってるんだから、もう少しマルトさんを大切にしようと心から思ったけど……
「それじゃ私も原付サイズの何かで行きましょうかね。出来れば二人乗り出来る奴で。」
世界一売れたH〇NDAの100ccの方の奴で、荷台に座布団を縛り付けてあるのを出して来てくれた。ソレが置いてあった場所に、マルトさんにあげる白いパッ〇ルを置いといた。
「行きましょう。風を切って!」
もちろん……神のデフォルト能力【浮く】で地上1000mくらいを走ったさ。時速60kmでね。
「真っ直ぐ来たら意外と早いもんですね。」「道路交通法なんて無視だからな。」「航空法とか大丈夫なんですか?」「透けてるのだから大丈夫だろう。」「鹿児島市内ですよね?何処に向かうのですか?」
なんて言いながら天文館を歩いている。
「煌びやかですねえ。滅多に都会に来ないので少しビビってます私。」「まあマルトの住む地域と比べたら都会だろうな。」「私も実は都会が苦手でして……」
3人とも何処にでも居そうなオッサンな外見。
入るのは炊き肉って言う聞き慣れない食べ物を出すお店【牛〇ゃん】。
「ここか……値段設定はどんな感じなのだ?」
「アルコールは別で1人3千円くらいですね。席も空いてる様なので入りましょうよ。」
「うわあ、鹿児島牛ですか……指宿のアレを思い出しますね……」
国さんもマルトさんも初めてか。美味しいよ間違い無くね。
「説明書きを見ながら炊きましょう……」
国さんもマルトさんも目が点だね……ブンブン首を縦に振ってる。
「やはりここは生で乾杯ですよね。」「だな。」「そうですね。」「それじゃ。ダメな奴らに乾杯」
「その挨拶は如何な物か……乾杯。」「乾杯。」
ぐびぐびっと一気に半分くらい飲んで……炊き肉を1口……
「美味い!」「良いですねえコレ。」「美味だな。」
料理の細かい説明なんてしないよ。食べるのに忙しいから。知りたければ、目の前のソレを検索する為に操作して、美味しい世界に導かれる為に炊き肉と入力して探してみるんだ。食べたくなるから。
〆にうどんを頼んでお腹いっぱい。後は……
「ありがとうございました大国主様、丸兎の尊様。」
もう来る事も無いよ日本には……だからさ最後くらいちゃんとしなきゃだろ?
「特に丸兎の尊様。私が解脱してから様々な事でお世話になりました。本当に感謝しております。」
「どうしたんですかニノさん?急にかしこまって……」
「そうか決めたのか……テューポーン殿やハーデスから聞いておる。応援は出来ぬが達者でな……」
そうか、俺の目的を知ってても止めようとしないんだ……申し訳なくなるな……。
「ええ。負けません。生まれながらに神として君臨し続けた奴らなんかに。叩き上げの実力ってのを見せてやりますよ。」
「ニノさん?それはいったい?国さん?なんで私には教えて下さらないのですか?ニノさん?国さん?」
「マルトさん。生きてたらまた会いましょう。しばらく転移門は封鎖しますね。10日もあれば結果は出てると思うので。生きていれば10日後に。」
そう言いながら実家に帰省の帰宅を選んで聖域に帰る。転移直前にマルトさんが……
「ニノっ!何を言ってるんですか!待ちなさい!」
ゴメン……マルトさん。ありがとうございました。
旅行回が終わったら本編は最終話に向けてのシリアスパート突入です。特に9章はクソ展開なのでご注意を。
読んで貰えて感謝です。




