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おっさん家!  作者: サン助 箱スキー
7章 クラス転移なんて迷惑でしかない
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閑話・冒険者3人組・見つけた宝箱

宝箱見つけました。


 蒼大陸南東部。人の手が殆ど入っていない森の中に、ひっそりと口を開けているダンジョンが1つ。

このダンジョンに辿り着いた冒険者達は殆ど口を揃えて言う事がある。


 行くだけ無駄。


 広い空間なのだが、ダンジョンコアが据えてある台座以外の物が何も無い洞窟。冒険者ギルドの絶対的な掟として、ダンジョンコアを破壊したり持ち出したりする事は禁止されているので、本当に何も無いのである。


 ダンジョンの中の構造は、広々とした大きな部屋の天井にヒカリゴケが生えていて薄明るく、綺麗に整地された床は、真っ平らで隅々まで掃除が行き届いているようで、とても清潔な空間なのである。


 世界中の冒険者ギルドで見る事の出来る、ダンジョン一覧表に書いてあるダンジョン名は【10辛ダンジョン・何も無い洞窟】なのだが、本来の使用用途は災害時緊急避難所。


 太古の神が、近隣の生き物達の為に用意した、災害時の備えである。


 このダンジョンの床が何故に綺麗で何も無いのか?と問われたら、とある一族によって管理されているから。


 太古の神から依頼され、数百の世代を受け継いで来た大切な役目なのだが、前魔王がダンジョンに掛けた呪いの影響を受けて、その一族はダンジョンに縛られ、ダンジョン崩壊まで永遠を生きる事になっていた。


 そんな呪われた一族の中で、比較的若い3人。

トラ吉、マダラ、ポム。この3人が今回の主役である。



「トラ吉、お腹減ったにゃ。なんか食べる物を手に入れて来るにゃ。探して来にゃいとチョッキを齧るにゃ!」


 トラ吉と言う名前だが、毛並みは白に黒ぶち。着ているチョッキは、伝説級の大きな鮭の皮を鞣した物である。厚み5mmもあったりする。何ヶ所か付いてるポケットに短剣を隠し持っている。


「そんにゃ事を言っても、このダンジョンには、にゃにも無いにゃ。この間の冒険者達が置いていった干し肉の残りも全部食べてしまったにゃ。」


 トラ吉が答えた相手はポム。ふわふわのタンポポの綿毛のような、真っ白の毛並みの雌である。背中に短弓を背負っているのだが、矢は持っていない。


「2人共五月蝿いにゃ。静かにしにゃいと人魚さんに勘づかれてしまうにゃ。黙って見張るにゃ。」


 最後の1人はマダラ。マダラと言う名前だがキジトラ柄である。タラの皮のチョッキを着て、チョッキに付いた金具を使って、背中に盾を1枚付けている。


 この3人は、何も無い洞窟の近くに居を構える、にゃん族と言う獣人の1種なのだが、世界的に見てもこの一族しか居ない希少種なのである。


 太古の神より依頼された種族の使命は、大きな災害が起きた時に、近くの小動物を纏め上げて、何も無い洞窟に避難させる事。その代わりにダンジョンコアから毎日2回、食べ物を受け取っていたのだが……


「お腹減ったにゃ。コアから出てくる食べ物が減ってから、ずっとポムは空きっ腹にゃ。」


 ポムの言った通り。数百年前から徐々に出てくる量が減り、先代魔王と契約してダンジョンの掃除屋になるまで、仕方ないから草を食べて生きて来た種族である。


「まだ禽魔王様にお願いされた仕事が有るからマシだにゃ。」


「そうにゃそうにゃ。アレのおかげで魔力を食べて生きて行けるにゃ。あれがにゃいと飢え死にしてるにゃ。」


 魔王と契約して魔族になった種族。魔族になった事で、元来は喋れる猫でしか無かった種族が、二足歩行を手に入れたのである。


「きたっ!静かにするにゃ。」


 どうやら今回の獲物が来たようだ。

マダラの目線の先には、数人の人魚。太刀魚タイプの人魚が、波打ち際から砂浜に上がってヒレの掃除をするようだ。


「太刀魚人魚さんだにゃ。舐める方向に注意しにゃいと舌を怪我するにゃ。」


「ヒレのお掃除を始めたら飛び掛るにゃ。」


「1番小さな人魚さんが捕獲しやすそうにゃ。アレを狙うにゃ。」


 3人が身を屈めて太刀魚の人魚を狙っているのだが。少し離れた所でも同じ様に太刀魚の人魚を狙っている者が居て、先に飛び出されたようだ。


「お爺にゃん!やられたにゃ抜け駆けされたにゃ!」「急いで追い掛けるにゃ!海に入られたら追い掛けられないにゃ。」「黙って走るにゃ!」


 飛び出したのはトラ吉の祖父。数ヶ月前にダンジョン内部で復活を遂げたのだが、以前人間の冒険者に狩られて、殺されて、皮を剥がれた経験を持つ。


「うひょ〜い!太刀魚人魚様ぁ!ええ味しとるにゃ。やはりワシは太刀魚人魚さんが大好きにゃ。」


 太刀魚タイプの人魚でも比較的幼い、まだ幼児と言っても良い位の少年にトラ吉の祖父が飛び掛って下半身を舐め回す。


 見た目が二足歩行しているだけの猫と、小さいながらも人魚だから微笑ましい光景だが、人魚君やトラ吉の祖父が人間だったら逮捕間違い無しな光景だったりする。


「ずるいにゃ、お爺にゃん。今日は僕達の番だにゃ。」


 祖父に飛び掛ってドロップキックをぶちかますトラ吉。ゴロゴロとドロップキックを食らって転げ回る祖父。


「太刀魚人魚君。名前はなんと言うにゃ?」


 太刀魚人魚君の前に、守るように立ち塞がるマダラ。


「私達は味方だにゃ!安心するにゃ!」


 マダラと同じく人魚君を守るように構えるポム。


「トラ吉。老い先短いワシに譲ってくれんかにゃ?」


「お爺にゃん、嘘を言っちゃダメだにゃ。歳は取らにゃいし、死んでも生き返るにゃ。老い先なんてにゃいにゃ!」


 そんなやり取りを見ていた大人の太刀魚人魚達は、海から子供に声を掛けた。


「ロドリゲス!下半身を隅から隅までザラザラの舌で舐め回されるわ!早く逃げて来なさい!」


 たぶん母親だろう人魚から逃げて来いと言われたロドリゲス君(5歳)。


「ヒレに付いた藻を綺麗にしてくれたよ?悪い人達なの?」


 教育上悪い人達である。幼子の下半身を舐め回す……めちゃくちゃ悪い人達である。


「ええい!ラチがあかん!皆の者!水球を放て。」


 たぶんお父さんだろう人魚さんが、大きな水の玉を魔法で作り出して投げて来る。それに追従するように沢山の水球が空中に現れて投げ込まれた。


「濡れるのは嫌だにゃ!」「太刀魚人魚君。また会いましょうにゃ!」「早く走るにゃ!ビショビショになるにゃ。」「ワシを置いて行かんでくれにゃ!」


 トラ吉、マダラ、ポムの3人は逃げ切ったようで、少しだけ濡れたのだが、トラ吉の祖父はビショ濡れである。


「お爺にゃんが悪いにゃ。今日は僕達の番にゃ。なんで抜け駆けしたにゃ?」


「年寄りに優しくにゃい孫だにゃ。そんにゃだから嫁が来にゃいにゃ。」


 ダンジョンの中に移動して来た4人。ダンジョンコアが少し暖かい石なので祖父の毛を乾かす為である。


「嫁なんか来るワケ無いにゃ!マダラとポム以外に若いにゃん族が居ないにゃ!」


 魔族になった時点で生殖能力を失ってしまったにゃん族。又従兄妹同士の3人以外に若いにゃん族は居ない。


「ポムを嫁にするにゃんて自殺行為だにゃ。何時も呪ってくるにゃ。」


「あんた達の嫁にゃんかならないにゃ。もっとイケメンがいいにゃ!」


 そんなこんなで言い争って居たら、ダンジョンコアから宝箱が現れた。何年かに1度出て来る、最下級の木の宝箱である。


「おお!宝箱が出現するのを初めて見たにゃ。「まるでウンチのように出て来るんだにゃ。」「中に食べ物が入ってたら、食べられなくなる出現の仕方にゃ。」「おぬし達は知らにゃいのか?宝箱からは食べ物は出てきた事が無いにゃ。」


 鍵も掛かっていない宝箱を豪快に開けるポム。

覗き込むトラ吉とマダラ。除け者にされる祖父。


「ニャンと!チョッキだにゃ!ポムサイズのチョッキが出たにゃ。」


 小さい皮のチョッキが1つ入っていた。


「やっと脱裸にゃ!服を手に入れるまで長かったにゃ!」


 脱裸と言っても猫だから……見た目はまるっきり猫だから。


 背負っていた弓を外してチョッキを着込むポム、自前の毛並みが白で、チョッキは薄いグレーだから似合ってはいる。


「弓を背負い直せにゃいにゃ!トラ吉、マダラ手伝うにゃ。」


 3人がかりでポムに弓を背負わせて、3人でポージングを決めようとしている。


「やっぱり3人ともチョッキを着てると様になるにゃ。」


 3人が決めたポージングは招き猫だったりして、カッコイイと言うより可愛らしい感じだったりする。


「一丁前の冒険者に見えるにゃ。孫に衣装にゃ。」


 楽しそうである。




 ある程度毛が乾いた祖父が、コアから出てきた今日の分の食料を拾って集落に帰ろうとしているのだが、濡れて入ってきたせいでダンジョンの床が濡れていた。


「お爺にゃん!床がビショビショにゃ!」「お掃除するにゃ!」「ダンジョンを綺麗に保たないとにゃ!」「任せたにゃ!さらばだにゃ!」


 トラ吉、マダラ、ポムの3人は、自前の尻尾を箒のように使いダンジョンの床を綺麗にしていく。


 ダンジョンコアによって作り出された異空間で、外がどれだけ酷い天候でも中は快適空間な【10辛ダンジョン・何も無い洞窟】の管理人兼冒険者。


 ポムがリーダでトラ吉とマダラが隊員。

パーティー名【青い魚】の3人組は今日も楽しそうである。







もう1話、青い魚の話が続きます。


読んで貰えて感謝です。

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