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おっさん家!  作者: サン助 箱スキー
7章 クラス転移なんて迷惑でしかない
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アバター

過去に体験したアバター達です。


 ガンモを肩に抱いたまま、食堂に皆を引き連れて来た。マルトさんも参加してくれるみたいだ。ガンモを地面に下ろして、真面目な話を始めよう。


「さて、今回はお酒も料理も無しです。ホントに真面目な話なので、忘れないようにメモしても構わないですが、聴き逃しの無いようにお願いします。随時質問するので、わかる事は答えて貰って構わないです。」


 真面目な顔で前置きを話してみた。まず最初にする事はタブレットを操作する事。


「この顔が私の名前の元になった人間だった頃の顔です。どんな風に見えますか?」


 この顔を知ってるのはガンモくらいだな。

誰も答えないな……自分で説明しようかな。


「このアバターは首から下がありません。転生する前に顔しか残ってなかったので。酷いでしょ?この顔の時はまだ幼い頃にこの状態になって育ちました。」


 当時はキリスト教徒でさ、基本的に土葬なんだよキリスト教って。首から下は焼かれたからアバターにならなかった。顔の殆どがケロイドになってるんだ幼い頃の出来事のせいで。


「次はこれです。何に見えますか?」


 最初の人生が終わった後に転生したのはイノシシ。このアバターで残ってるのは顔の左半分だけ。


「次はコレです。どう言う状態に見えますか?」


 イノシシの後はトンボ。両目を抉られて羽を毟られてるアバター。


「なんで誰も答えてくれないんですか?次のアバターになりますね。」


 皮を剥がれたオオカミアバターになってみた。


「どんな風に見えますか?次のこれは?」


 丸焼きにされた豚アバターになってみた。


「こんなのはどうです?」


 焼かれたイワシになってみた。


「これは?」「これは?」「こんなのはどうです?」「どんな風に見えますか?」


 次から次に解脱する前に転生したアバターに変化させてるんだ。誰も何も言えないみたいだ。


「これはピグミーマーモセットだった時のアバターです。このアバターは全身揃ってます。でもですね、このアバターの時の死に様は酷いもんでした。」


 色んな死に様を体験したけど、この時に人間不信になったのかもな……


「異国の金持ちのペットにする為に捕獲されたんですよ。生後半年くらいで。その後に真っ暗な箱の中に入れられて運ばれる途中、誰に看取られる事無く1人で飢えと暑さで死にました。死体はゴミ箱に捨てられましたよ。」


 捕獲された後に船で運ばれる最中に餌も水も貰えなくて、海洋コンテナの中で蒸されて死んだんだよ。


「怖かったです。ひもじかったです。家族に会いたかったです。」


 次は鮭アバターだな。


「これは?どんな風に見えますか?腹を開かれて干されて保存食にされてる所ですよね?」


 次のアバターもキツイな……


「このアバターは何に見えますか?人間でしょ?でもどんな風に見えますか?」


 皆が目を逸らしはしないけど、誰も答えてくれないな。


「飢饉で食べる物がほとんど無いのに、力あるもの達に無けなしの食料を奪われて、飢えて死んだ人間の子供アバターです。」


 確かこの頃が元禄時代だったんだよな……


「これは何に見えますか?顔の半分が吹き飛んで手足が無いアバターですけどこれも人間です。どうしてこうなったと思います?」


 このアバターは、日露戦争の時の旅順攻略戦で大砲の玉に直撃されて死んだ時のアバターだな。


「なんで誰も答えないんですか?普段なら色々と意見や文句を言うじゃ無いですか。次です。」



 その後も色んなアバターになってみた。細菌だった時のアバターや小さな植物だった時のアバターは巨大化して。体が半分なかったり、毟られてボロボロだったり、色々だな。



 これは皆が知ってるアバターだな。


「裸になりますね。何時もの私の見た目ですが、どう見えますか?」


 本来の姿の田崎和信アバター。肋骨が飛び出して左の太ももと左の腕が変な方向に曲がってて頭に大きな傷がある。普段はそこは綺麗に補修してある。


「今までお見せしたアバターは、単体で見せられるアバターです。他のアバターは殆どが見せられるような状態じゃありません。」


 そう言えば金鬼もちゃんと見せとくか。


「金鬼アバターですが、首と胴体が離れます。この時は自殺だったので他のアバターとは違いますが、他のアバターの時は、なんであんな見た目になったと思いますか?」


 なんで誰も答えないんだろう?簡単だろ?


「このアバターはチンパンジーアバターですね。このアバターは全身綺麗に揃ってます。ですがこのアバターの時は新薬の実験代になって殺されました。」


 新薬の副作用で、ずっと続いた微熱が辛くて、投与された薬に耐えられなくて高熱を出して、結局肺炎になって死んだんだ。生まれてから1度も空を見ること無くラボの中で育てられてさ。


「皆さんは、なんで奪おうとするんですか?奪わなくても、戦わなくても生きて行けるじゃ無いですか。私は普段から見せていませんか?争う事なんかしなくていいと。戦いなんか放棄してしまいたいと。見せていませんか?そのために毎日皆さんに与えていませんか?助けるためってなんですか?守って下さい助けて下さいと言いましたか?」


 誰1人答えてくれない……


「協力してくださいと言いました。出来るだけ穏便にと言いました。あなた達がやった事は穏便だったのですか?私は競い合う事は嫌いじゃないですよ。だから相撲とかで競い合うのは構わないと思ってます。」


 でもさ……


「私が1度でも誰かの命を奪う様な事をしましたか?誰かに暴力を振るいましたか?皆さんは私の本気の暴力を受けてみたいですか?」


 神罰系の神力なんて腐る程あるぞ、使った事なんて無いけど。


「私の本気の暴力となれば、この惑星ごと消滅させられますよ。そんな事したくないですが、神と戦うなら、やらなければならないかもなんです。なんの為に体の1部を犠牲にして檻を作って中で耐えたと思ってるんですか?」


 皆にちゃんと理解してもらいたな。


「私は、私の周りの誰かが、理不尽な事で悲しむ事が無い世界を作りたいんです。その中にあなた達は既に入っています。暴れたいなら、それなりにルールを作って競技として暴れて下さい。誰かを助ける為に誰かを殺さないといけないなら、私に相談してください。普段はほわっとしてますが、私は全能の神の1人です。全力で何とかしますから。」


 あんまり言いたく無かったんだよな……


「私の上役は世界を作った創造神の全てを受け継いだ最後の息子です。全世界で唯一世界創造が出来る神でした。」


 でも、今は違うんだ。


「でも今は唯一の存在じゃありません。その上役と全く同じ権能を持って神になった私も、大いなる主と同じように世界創造が出来ます。そんな存在なんですよ私は。」


 実は俺って……パンツァー……いや、デュポーン様の体を食べたんだ……そして全権能を受け継いだ。


「私が頼りないですか?常に威張り散らかして、私は神だ、私は神だと言い触らして回ればいいですか?何処ぞの星の神々のように、ちょっとした事で直ぐに神罰を使えばいいですか?」


 皆にちゃんと教えておこう。変な行動を起こさないようにね。


「私はこの後祟り神になりますが、ガンモが居るから大丈夫です。なので暴れたりしないで下さいね。」


「ニノさん!ダメです!祟り神になんかなったらダメです!堪えて下さい。」


 最初に言葉を返したのはマルトさんか、相も変わらず有難いな。


「マルトさん。大丈夫ですよ。ちゃんと戻れますから。何の被害も無く。」


 ニコッと笑ってマルトさんに小さく頭を下げといた。だってマルトさんが居なかったら、誰も喋ろうとしないんだもん。


「それじゃ見てて下さいね。長い宇宙の歴史の中で滅多に使われる事の無かった神力ですから。調べたら過去に1回だけしか発動された事が無いらしいです。」


 ガンモをチラッと見て、神の檻を自分に向けて発動する。檻に包まれた後に大きな声で。


「歴史改変。もしも惑星パンツでインフルエンザウイルスが原因で死んだ生き物が居なかったら。」


 現在の神格5299。神格1に対して100個の命を救えるはずだから、たぶん行けるはず。


 神格1減る毎に、えぐい倦怠感が襲ってくる。


「ガンモ。後はよろしくね。」


「うん!ニノ!いっぱい癒してあげるね!」


 エッヘンって言ってるみたいな表情のガンモが、めちゃくちゃ頼もしかった。





読んで貰えて感謝です。

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