会いたくて会いたくて震えてる?
悪ノリ回なのかな?
どうしてこうなった?としか言えない状況になっちゃった。
パンツァー様にポーダブルタイプの吸引力の変わらない掃除機型の神器を譲って貰ったんだけどさ、それを使って高校生のギフトを吸い出したら……
「さすがに可哀想じゃね? 心を麻痺されてたんだろうから、あまり責めてあげない方が良くない?」
カンタ君から言われた事に激しく同意する。
それもこれもギフトの吸い出しが終わったら、高校生達が叫んだり泣いたり、塞ぎ込んだり、喚き散らかしたり。大変な状況なんだよな。
「壊れかけのレイディオみたくなってんじゃん。心が完全に壊れたら治してやるのも大変だから、少しでもマシな今のうちに癒してやっといたら?」
「うん、そうするよ。罰を与えようと思ってたけど、この子達も被害者だもんね。でもさカンタ君、何も聞こえなくて何も聞かせてくれないレイディオは、壊れかけじゃなくて壊れてるよね?」
とりあえずガンモにお願いして、5人の壊れかけた心を治療して貰った。
ガンモにしたら簡単な事だったみたいで、尻尾を膨らます事も無く、スンッとしたままサッと治療を終わらせてくれた。
「しかし、この後に連れてこられる高校生達も同じ状況なのかな?それだと流石に罰は与えられないよね。」
「似たようなもんじゃね?ニノにい、あんまり思い詰めたらダメだよ。なるようにしかならないんだからさ。」
言葉には出さず頷くだけで答えといた。
白い月や世界中で起こってるインフルエンザの猛威の事を考えながら、カンタ君と色々話してたら、普段なら滅多に起動しない転移門が自動販売機の横に現れたんだ。
「あっ。マルトさんでしたか、少し驚きました。今日はどうしました?」
普段なら迎えに行かないと遊びに来るのを遠慮しちゃうマルトさんが、兎姿でこっちに来た事に驚いてたら……
「ニノさん、止められませんでした。申し訳ない。」
マルトさんの言葉の後に、すっぽんぽんの白人系オバチャンと、同じくすっぽんぽんで日本人風な疲れた感じのするオバチャンと、すっぽんぽんで哀愁漂う日本人風なオッサンが、1人は堂々と、2人は少し恥ずかしげに転移して来る所だった。何コレ?
「えーと…………」
とりあえず直視するのも何だから、目を逸らして声を掛けようと思ったんだけど、言葉に出来ない。
「あら、結構良い環境じゃないの。再教育するにはもってこいね。ナメッコ!さっさと果実を寄越しなさい。」
すっぽんぽんで偉そうに最長老に命令するオバチャン……なにこいつ?
後ろの2人は、いそいそとタブレットを出してアバター操作で服を着込んでた。なんか縄文時代?って聞きたくなるような服装だな。
「私の事をシカトとか、貴方ホントに地球出身? しょぼい見た目と同じで礼儀すら分かってないのかしら? これだから未開のアジア人は……」
少しカチンと来るけど、脇毛ボーボー、股間もボーボー、それ以外にも全身に濃いうぶ毛?が生えてるオバチャンに言われてもなあ……。
「どちら様でしょうか?初見なので御存知申し上げない事には謝罪しますが、いきなり尋ねて来てその見た目と態度はどうかと思いますが?」
33歳の時にマダラな金髪の17歳の上司に顎で使われてた、日雇い時代に鍛えた丁寧な口調の皮肉を言ってみた。
「あんた何かどうでもいいから、さっさと果実を寄越しなさいナメッコ。」
ムカつく。これは本気でムカつく。
「おいっ!くっそババア。俺の家にいきなり来たと思ったら、俺の家族を脅すとかどういう了見だコラぁ?」
本気で神気解放して怒ってみた。そしたら青ざめた顔をしながらもこっちを睨みつけるような目付きで、すっぽんぽんのオバチャンがタブレットを操作して鎧みたいなのを着込んだ。
そして……
「ヘーラー!ここには謝罪にきたのだぞ。武装を解け。」「そうですよヘーラー姉上。未開のアジア人と言っても元はヨーロッパ出身じゃないですか。」
縄文時代の風体の2人が必死に、すっぽんぽんのオバチャンを押さえつけてた。
「おーす。イザ&イザ夫妻。お久じゃん。流石にこんな対応だとニノにいでも怒るよ。マルトっちに先にメールで連絡させとけば良かったのに。」
「おお!カン!お主も異世界におったのか!助けろ。くそばばあは言い過ぎだ。気にする年頃なんだから。」
「ちょっと貴方?気にする年頃って、私と同い年なんですけど?私の事もそう思ってるわけ?」
俺が知らないのが悪いのか?それとも配慮って言葉を知らない奴が悪いのか?
「本気でイライラさせられたので、本気で対応しますね。」
そう言って発動しといた。
「ギフト【神の檻】発動。」
一瞬で3人の高齢者を包み込んで発動した神の檻なんだけど、実はこれって普通に俺も使えるんだ。タブレットをいじってて知った。
「うんニノにい。それが1番良い選択かもね。」
檻の隙間からずっと聞こえてくる「出せやゴラァ!」「貧相なんだよ!」「しょぼっ!」とかがウザイ。
俺の後ろで、盆栽サイズの最長老が
「私などを家族と呼んで下さるなどと。」
なんて言いながら、会いたくて震える人より震えながら号泣していたし、周りの植物さん達は、俺の神気を浴びて爽やかな顔をしていた。
最長老はちょくちょく震えます。
読んで貰えて感謝です。




