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おっさん家!  作者: サン助 箱スキー
7章 クラス転移なんて迷惑でしかない
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聖域に住むもの達の裏側で

外界の話です


 天元大陸・自由交易都市ヴルスト


 天元大陸の3大勢力と言われる薬師ギルド、商業ギルド、工業ギルドの各トップとその傘下の様々なギルドマスターが、緊急招集された会議。


「アントニウスの奴がコソコソと動いとったのは知っておる。しかし今回の事態は深刻すぎる。」


 発言したのは薬師ギルドのグランドマスター、エルフ嫌いで有名なノーム。


「奴が何処から手に入れて来るか分からん植物が無ければ、どうにもん出来ん。奴を緊急指名手配するのが先じゃ。」


 ここ最近広まった謎の病。体力の無い子供や老人が病に侵されたら命を失う事態になっている。


「商業ギルドとしても困っておる、昔から入荷しとる物であれば、奴の特殊な仕入先は掴んでおるが、ここ最近の物はとんと分からん。」


「あやつが主導する木工ギルドの役員が1人も参加していないどころか、エルフ1人すら見掛ける事が無い。やはりエルフが人種を裏切ったのだろうか?」


 アントニウスさんの盟友、工業ギルドのグランドマスターのドワーフが、この場の全員が懸念していることを歯に絹も着せずズカズカと放ってしまった。


「それを言うならドワーフもかなりの数が行方不明だろう。」


「アトラ大陸から移住して来た一族だけじゃわい。そう考えると、魔族と繋がっておる事もアトラ大陸が出身と言うなら頷けるがの。」


 聖域に住むドワーフ4人組の親族は、今現在聖域の工房に併設された食堂で歌いながら飲んでいるのだが。


「既に被害は自由交易都市だけでは無い、様々な農村まで広まり始めている。」


 治療院を統べる治癒ギルドのギルドマスターが叫ぶと。


「そんな事は把握しておる。発病している者はどうする事も出来ん、こんな厄介な病は初めてじゃ。最初はただの風邪に見えるんじゃからのう。」


 インフルエンザだから仕方ない。


「しかし、既に5万人を超える被害が出ている。この病が初めて確認されてから、ひと月にもなっていないのだぞ。」


 転移した時に渡されたチートが、インフルエンザウイルス達にもあるから、地球のものより爆発的に広まっていく。


「触媒が何かすらわかっておらぬ。水なのか野菜なのか、はたまた肉なのか。最悪で悪魔の吐息と言う可能性もある。そうなったら収束するまでどれ程の被害が出るか……」


 悪魔の吐息とは、空気感染の事である。


「治癒士達も総動員して治療に当たっているが、既に治癒士達にも被害が出ておる。薬師ギルドの蓄えた薬に関する知識を公開せよ。」


 独占しているので3大勢力の1つに慣れている薬の知識を公開せよ等と言われたらグランドマスターとしてはYESとは言えないようだ。


「今回の物は過去に事例が一切無い、公開してもなんもならんよ。まずはアントニウスを捕獲して万能キノコを入荷させるのが最初にするべき事じゃ。」


「万能キノコとは、数百年前にアントニウスの娘がアトラ大陸で売り払った物だな。あれはお主の所で買い取ったはずだ、独占しておる乾燥保存されている世界樹の葉も放出せよ。」


 そんな会議が続く間も、世界中でインフルエンザを発症するもの達が出続けている。


 そして……




「慈王さん。にゃん族さん。示芽慈彦様。ホントにやるんですか?」


「もちろん。」「やってみるにゃ」「ええ、モモさん。」「やるにゃ」「やらないとにゃ」


 世界中に広がっていた病は、6人組の目に映っていたようだ。


 最初に来たのはラスト大陸、元ニカラ集落跡地の荒野。


「示芽慈彦、モモさんのサポートを頼む。」


「示芽慈彦様、頑張るにゃ。」「モモさんの方も頑張るにゃ。」「慈王もついでに頑張るにゃ。」


「うん。やろうモモ。」「はい。示芽慈彦様。」


 10年近く前に振り撒いた父親の癒し成分が残っていて、比較的被害の少ない地域から試して見るようだ。


 そして、モモちゃんが踊り出す。最大級の癒し成分を振りまくシメジの背中で。


 シメジの背中で踊るモモちゃんの動きに合わせて、それぞれを結ぶ線が正三角形になるように三方に別れたにゃん族も、地面に手を着いて拝み出す。


「被るにゃ!!」「禿げろにゃ!」「癒しだにゃ!」


 慈王君は護衛である、頭髪に住み始めた蟲達も、各々サイズを元に戻し、5人を囲んで警戒している。


 ラスト大陸・ヤポーネ地方から徐々に広まっていく癒し成分は、インフルエンザウイルス達の動きを阻害し始めたようだ。


 クラス転移とかされたら、ホントに迷惑だと思いますよ。インフルエンザがどれだけ強力な病気なのか、知りたかったらWebです。


読んで貰えて感謝です。

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