表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん家!  作者: サン助 箱スキー
6章 惑星パンツ初のメイド・イン・パンツ製オートバイ爆誕
213/347

閑話 水鬼


水鬼です。


 藤原 千方の転生先を探して何年経ったのだろうか、今日も水鬼はブラブラ国内をうろついている。


「あ〜たまにはのんびり海でも泳ごうかな。」


 どんなに探しても巡り会えない事に、少しだけイラついている水鬼。

今日は瀬戸内海の海に溶け込んでバカンスでもするようだ。


「うひょーやっぱり瀬戸内は良いなあ。潮の流れが素晴らしい。」


 荒れ狂う瀬戸内の潮の流れに溶け込んで楽しそうな水鬼である。


「このまま九州でも向かって、隠形にでも会いに行くかな。」


 そんな事を呟いて瀬戸内を西に向かう水鬼。水深30m程の深さを縦横無尽に泳いで回ってるようだ。


 そんなこんなで壇ノ浦まで辿り着いた水鬼、気が付けば海上がやけに五月蝿い。


「あちゃーまた(いくさ)でもやってんのかよ。赤旗と白旗って事は平氏と源氏か。元は同じ先祖だっつーのによ。全く人間ってのは。」


 相変わらず同種で殺し合う人間を見て呆れている水鬼だが、次から次へと海に飛び込んで来る人間を見て何か気付いたようだ。


「ぬあ!ガキンチョまでいるじゃん。こりゃ助けてやろうかな。」


 そして、その子供を見た時に水鬼の表情が変わる。


「千方様!千方様じゃん!こんな所に居た!」


 数百年探し続けていた、古い主の生まれ変わりを見付けた水鬼。

 勢いよく泳ぎながら近付きつつ実体化して、子供の周りに苦手なはずの風を巻き起こし空気を確保する。


「おい、ガキンチョ。助けてやるからな!」


 そう言った水鬼に、鬼気迫る勢いで大きな錨を背負った武者が飛び掛ってきた。


「姪をどうするつもりだ海妖!その子を解き放て、その子は人間だ。」


 そうは言われても海中では生きられない人間である。水鬼が離せば海に沈んで溺れ死ぬ事待ったナシである。


「何言ってんだよ、大人の都合で子供を殺すな。てめえ姪って呼んだな。親族ならお前も助けてやる。さっさと重しにしてる錨を捨てろ。」


 その言葉を聞いて、武者が何かいい事を思い付いたようだ。


「それなら徳子を、その子の母親を助けてくれ。あれは絶対その子に必要だ。」


 そう言われて、どの女か聞いて捕獲した水鬼。

そのまま3人を海中に作り出した大きな泡の中に留めおき、九州へと上陸した。


「たくよう、子供まで巻き込んで(いくさ)なんかやるんじゃねえよ。そりゃ権力って大事なんだろうけど、そんなもん気にすんのは人間だけだぞ?」


「言うてくれるわ妖の癖に。お主に権力が何かわかっておるのか?」


 そう言った武者に水鬼本来の姿に戻る。


「あ? 藤原 鎌足の三鬼神・水鬼の俺に権力とか聞いてくんのか?馬鹿かお前? お前よりよっぽど権力なんて持ってたさ。」


 その姿見て、その名を聞いてビビる武者。


「天智の帝を助けた3人の鬼神の1人か。それなら姪を助けてやってくれぬか?」


 いきなり土下座されて、こちらもビビった水鬼。


「どういう事だ?なんで帝を助けてたら姪に繋がるんだ?」


 その言葉に顔を上げて武者が答えた。


「その子は帝だ。名は言仁(ときひと)と言う。そっちで気絶しておるのが母親の建礼門院だ。」


「あ〜。清盛入道の孫か!女の子だったんかよ。んじゃ助けろってのも納得。そりゃ子孫だし、守ってやらねばだし、どう見ても千方様だし。」


 その言葉にほっとした武者。立ち上がって水鬼に自身の名を名乗る。


「俺は平 知盛。そして、あちらで我らを追い掛けてくるのは教経。」


 教経と言われて後ろを見れば、1本の剣を携え裸の男が海から上がって来る所だった。


「いやあ、草薙の剣だっけか?これ貰ってきたぜ。金目の物ってすくねえのな。いやあ負けた負けたハッハッハ。」


 そう言った言葉の後に、続々と海から上がって来る集団が居て、驚く水鬼。


「我ら海の一族平家だぞ。瀬戸内の潮の流れくらいで死ぬわけがなかろうて。」


「せいぜい、勝利に浮かれてろ源氏。どうせ関東の北条が権力を握るんだからよ。ハッハッハ。」


 脳筋教経、意外と鋭い。


「裏で北条が源氏を操ってるくらい分からぁな。結局の所よ、平家の本家と分家の争いなんだよなハッハッハ。」


 百や二百では効かない数の人間が海から上がって来るのを見て、人間は強かだなあと思う水鬼。


「大宰府まで使いを出せ。俺の知り合いにめちゃくちゃ頭が良い奴が居るから、そいつに何処に逃げたら良いか聞こうぜ。」


 首を傾げる知盛と教経。


「菅原道真って奴がな、俺と同じ藤原 鎌足の三鬼神の1人で隠形鬼なんだわ。風鬼も協力してくれそうだし、古い知り合いに大獄丸って奴も居てよ、そいつも千方様の生まれ変わりなら助けてくれんだろ。」



 その後に隠形鬼と会い、風鬼の協力の元に海中に大きな泡を確保して、海中や川の中を進み関東の山奥に落ち延びた平家一門と水鬼達。


「ここなら山奥過ぎて誰も来んだろうよ。」


「しかし関東で良いのか? 鎌倉に近いぞ?」


 隠形鬼に指示された場所が、あまりにも源氏の本拠地に近い事を心配する教経。


「いや、悪くない。近くに居ると案外気付かぬものだ。」


 隠形鬼の策を使えば、日の本を奪い返す事も出来そうだなと考えたが、今は回復したが数日前に熱を出した姪が心配で野心を捨てた知盛。


「俺は出雲に行ってくる。ここら辺の土地神にならあな。」


「水鬼神が土地神等と心強いですね。よろしくお願いします。」


 子持ちのおばちゃんなのに綺麗な徳子にタジタジの水鬼。


「水ぅぅ。それがしも出雲に行くでござるよ。出雲で関八州見回り神になってくるでござる。」


 ん?と思った水鬼。


「なんだよ風。その喋り方。気持ち悪いな。」


「感動でござる。武者の生き様に感動でござる。」


 最後の最後まで奇襲や船頭を射掛ける等の行為をせず、負けて仕返しをするでもなく潔く刀を置いた平家一門に感動してしまった風鬼。


 そのままずっとござる語を使い続ける事になる。


「のう、母上。あれはなんなのじゃ?」


「あれは助けてくれくれた神様ですよ言仁。」


 母親に尋ねた質問に帰って来た答えを聞いて、水鬼と風鬼に近付く言仁。


「助けてくれくれてありがとう。わらわが褒めて遣わす。」


 その姿を見て、水鬼も風鬼も涙を溜めながら出雲へと向かった。






 なんで山奥の土地神なのかと、ござる語の謎でした。


読んで貰えて感謝です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ