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おっさん家!  作者: サン助 箱スキー
6章 惑星パンツ初のメイド・イン・パンツ製オートバイ爆誕
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閑話 俺達ヘリコバクター

ピロリ菌ですね。





 「目を開けなさい。お前の名前は、白湯(さゆ)ラッシュだ。」


 誰かの声が聞こえる、僕の名前?

そうだ、僕の名前は白湯ラッシュ……


 ヘリコバクター・白湯ラッシュ・ピロリ



  閑話・俺達ヘリコバクター




 元和二年四月十三日(1616年5月24日)払暁。


 真っ暗だけど、周りが見える世界で、僕は目を開けた。

僕と同じ様な外見をしているヤツらが、沢山僕を見ている。


「やっと目を開けたか。我等の最後の同胞よ、歓迎するぞ。」


 目の前に、威厳を称えた体躯の良いやつが居る。


「私は乳ラッシュ。この世界に住まう、全てのヘリコバクターの父。私が抗う敵は、全ての乳製品だ。」


「抗う? 誰かと戦わないといけないの?」


 目を開けたら、直ぐに戦いに加わるなんて、嫌だなと思った。


「違うぞ。我々は、世界に知らせる一族なのだ。世界に、コレは食べてはいけない。これを食べると体調不良を起こすから、食べてはいけない。とな。」


「食べる? 世界なのに食べるの? 世界は生き物のなの?」


 僕達の住む世界は、まるで生き物みたいだ。

ご飯を食べるなんて、凄く不思議な世界だな。


「我々ヘリコバクター・ピロリ菌族の使命だ。我等の住むこの世界に、少しだけ痛みを与えて、お腹に優しい食べ物を食べさせ、無理矢理にでも休ませる事なんだ。」


 お腹に優しい食べ物?


「それはどんなもの?」


「各々が抗う敵では無い物。各々の名前が付いていない食べ物だ。しかし世界は、既に白湯すらも受け付けなくなってしまった。お前が目を開けた事で、それを証明してしまったのだよ。」


 白湯って僕の名前だよね?


「僕は白湯ラッシュなんでしょ?白湯と戦えば良いの?」


「違うぞ。白湯と戦っても、我々のような微小な存在には、何があっても勝てない。お前が抗う相手は世界。白湯を飲み込んだ世界に、痛みを与えて知らせなければならないのだ。」


 何を知らせるんだろう?


「もう、食べるなと。口にするなと。そしてゆっくり休んで体調を整えろと。」


 白湯だよね?白湯を口にしちゃいけないの?


「さあ。そろそろ世界の食事の時間だ。鶴ラッシュ、鳩ラッシュ、草ラッシュ、鯛ラッシュ、米ラッシュ。右側は任せた。」


 沢山の、僕と同じような見た目をした奴が動き出した。


「油ラッシュ、麦ラッシュ、牛ラッシュ、猪ラッシュ、兎ラッシュ、酒ラッシュ。左側は任せた。」


 テキパキと動き出す皆を見て、僕は唖然とした。

皆が、お尻に付いてるうねうねを回転させて、凄くテキパキと動き始めたから。


「中央に、粟ラッシュ、稗ラッシュ、豆ラッシュ、酒ラッシュ、牡蠣ラッシュ、桃ラッシュ、犬ラッシュ、猿ラッシュ、雉ラッシュ。お前達が行きなさい。」


 名前を呼ばれた奴らが、一斉に動き出す。


「そして白湯ラッシュ、準備しなさい。我々は後詰だ。戦いの時間がやってくるぞ。さあ触腕を広げて。」


 お尻に付いてるコレかな?広げたら良いのか。


「良し、8本の立派な腕だ。立派な白湯軍団の指揮官になれるぞ。お前は私に付いて来なさい。」


 そう言われて後ろを見ると、僕とそっくりな見た目で、触腕の少ない奴らが大勢並んでいる。


 そいつらを引き連れて、乳ラッシュについて行く。


 そして、世界に様々な物が降り注いだ。

その間、僕達は必死に世界にしがみついた。

押し流されないように、押し潰されないように。


 そして食事の時間が終わる。

食事の中には、色々な成分を含んだ物が。


「ビフィズスさん、外の様子はどうだった?まだ世界は、生き長らえそうか?」


「もう、ダメかもしれない。とても弱っていたわ。私の体が溶けないくらいの、弱い胃酸しか出せないのですもの。もう長くは持たないかも。」


 とても美しいビフィズスさんが、乳ラッシュと話している。


 凄く気になる事を。


「世界が長く持たないって何故?」


 僕が質問をしたら、ビフィズスさんと乳ラッシュが哀しい表情になってしまった。


「この世界は、沢山無理をしてきた。ストレスと言う、目に見えない感情にとても弱い人間と言う世界なのに、ストレスを沢山抱え込んで。」


「だから世界が崩壊し始めてるの。あそこを見て、ヘリコバクターの新部隊長さん。理由が分かるから。」


 ビフィズスさんに促されて見た先には、ドス黒い何かが。怖い。


「アレは、世界を崩壊させる混沌(がんさいぼう)だ。あれが広がると、世界は死に行く運命に向かって行くのだ。」


「そうなる前に私達微生物軍団は抗った。だけどダメだった。」


 死に行く運命の世界に僕は産まれたのか。



 僕の後ろに居る大勢の僕とそっくりな奴らと、混沌に近付いてみた。

そしたら、僕の後ろに居た触腕が5本しかない奴が、飲み込まれそうになった。


「危ない! 手を伸ばせ! 」


 僕や、僕の後ろに居た奴が、触腕を伸ばして助けようとした。


「ファイトー!」「いっぱあぁぁぁぁ……」


 だけどダメだった。混沌に飲み込まれてしまった。


「あの貪欲な黒い塊が混沌だ。我々は、混沌の周りに住む事が出来ない。身体ごと飲み込まれてしまうからな。」


「そして飲み込まれたら……」


 飲み込んだ奴を栄養にして、混沌が大きくなった。


 そして毒を吐き出す。


「世界中に送り込んでいるんだよ。自分の眷属をね。混沌は、そうやって世界を崩壊させて行く。」


「これ程までに混沌が広がってしまったら、何が起きても、崩壊しない未来は無いわ。」


 崩壊しちゃうんだな。


「さあ、我々の使命を果たそう。世界に痛みを与えるぞ。」


「頑張ってヘリコバクターさん達。私は腸に行くわ。少しでも消化の助けにならないとだから。」


 使命……訳わかんないよ。

ビフィズスさんも行っちゃったし。



 そして桃色をしてる世界の壁に向かって、乳ラッシュが叫び出した。


「ヒャッハー! 汚物で!消毒だぁぁぁぁ!」


 うわぁぁぁ。乳ラッシュが、沢山の乳ラッシュ軍団を率いて、乳ラッシュ軍団全員で、体液を振りまきながら、触腕を振り乱してヒャッハーしてる。


「さあ白湯ラッシュも殺るんだ。ピンク色の壁に向かってな。」


 ムズムズする。コレは本能なのか?


「ヒャッハー! 汚物だ! 消毒だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 凄く気持ちいい。この為に僕は、産まれてきたんだ。


「汚物で、消毒しなくちゃなあ。」


 後ろの方で、僕より腕の数が少ない、白湯ラッシュ軍団達からも、やっちまえー!って声が聞こえた。




 あれから3回、世界に食物が降り注いだ。

と言うか、世界に白湯が降り注いだ。


「白湯ラッシュよ。この世界は、既に死に行く運命。もう抗わ無くていい。最後くらい自由に生きなさい。」


「嫌です。僕は最後まで戦う。世界の崩壊まで、ずっと闘い続ける。」


 沢山の仲間が、混沌に飲み込まれた。

僕は、最後まで諦めず、混沌に抗うんだ。


 だけど、世界がどんどん寒くなって行く。


「ついに崩壊が始まったか。」


「乳ラッシュ!大腸菌の反乱だ!十二指腸方向に大勢のビフィズスさん達が逃げて来ている。援護を頼む。」


 僕は、僕の後ろに続く、ヘリコバクター・白湯ラッシュ・ピロリ軍団を率いて、病原性大腸菌軍団と戦った。


 でも、大腸菌軍団は強かった。


「6本腕!逃げるんだ!」


「5本腕!走れ!」


「ああ!貴様らの血は何色だ!」


「引かぬ、媚びぬ、顧みぬ。我がゆく道は帝王の道!」


 様々な病原性大腸菌軍団に、桃色の世界へと押し込まれるヘリコバクター軍団が、ビフィズスさん達と共に撤退したのは、たいして時間は掛からなかった。


「我々ヘリコバクターの一族全て。産まれてから死ぬまで、何一つ。そう、何一つ。」


 乳ラッシュが叫んでる。


「我らがピロ生に一片の悔いなし。」


 そして乳ラッシュは、触腕を1つ天に向けて動かなくなった。





 世界は、極寒の世界へと変貌を遂げた。



「寒いよ雉ラッシュ。どうにかして温まれないかな?」


「無理だよ。もう世界の命の火が消えたんだ。」


「そうだよ白湯ラッシュ。僕らは死に行く運命(さだめ)なんだ。」


 皆が動かなくなって行く。


 乳ラッシュも、米ラッシュも、粟ラッシュも……


 皆、皆、動かなくなって行く。


「来てくれたんだね、鳩ラッシュ……。」


 僕の傍に来てくれた鳩ラッシュ……


 乳ラッシュの触腕を1つ抱えて、座り込む鳩ラッシュに、僕は寄りかかった。


「鳩ラッシュ……疲れたろう。僕も疲れたんだ。なんだかとても眠いんだ……鳩ラッシュ……」


 そして……





「いやぁ。ホンマに今回は、ええもん見せてもろたわ。まさか罰やった筈やのに、こない感動物語になるなんて、予想すら出来へんかったで。」


「どうもです。次に行くのにダーツ投げれませんけど、どうすれば良いですか?」


 目の前の転生課の課長さんに質問してみた。

今回は、鳩ラッシュの身体を借りているようだ。


「はあ?まだ罰は続いとるんやで。自分アホとちゃうか? 簡単に許されると思とったら大間違いやで。」


 うそ?まだ罰が続くのかよ……


「今回はカマキリかカメムシの2択や。どっちか好きな方を選びなはれ。」


 カメムシは無いなあ……


「カマキリで、お願いします。」


「ん、さよか。先に進みや。カマキリの一生で解脱ポイントを1ポイントでも貯められたら、次の転生先は、ダーツ投げられる生物にしたるわ。」


 うん!次の生命も頑張ろう。


「ほなな。」


 そして俺は次の生き物に転生した。


「しかしな、鳩ラッシュってなんやねん。ギリアウトや、ホンマにギリギリアウトやで。」


 そんな声が聞こえながら。



 

 ピロリ菌の一生は4日で終わりました。

ちょっと悪ノリし過ぎましたかね?この回は特に感想を待っています。宜しくお願い致します。




読んで貰えて感謝です。

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