S.M.Zのお使い 天元大陸 3 桃源郷
桃源郷なのかな?
妊娠しているエメリーさんも参加したビンゴ大会なのだが、エメリーさんは余裕があるようだ。
「私は見たければ毎日見れるし、欲しければお願いすれば大丈夫だから、そこは皆より優遇されてるわね。」
慈王君やモモちゃんだってそうである。
それなのに、旅館取り潰しなんて処罰を受けた天元大陸のエルフ達にとって、聖域に行けない事は死活問題なのだ。
因みに、旅館は取り潰しにはなっていない。
宣言されただけで、ある程度落ち着いたらエルフさん達が宿泊してもいいかな?なんてニノは考えている。
そして、世界樹の若木が当選した者が現れた……
「ウヒョー!神様ありがとうございま……うっうっ……」
壇上で号泣する歳若いエルフ……
会場内のエルフ達は、それを見て。
「お前は我が家の宝だ!早く見せておくれ」
「あやつが次の世代のエルフを率いる者だ」
「アイツと共に我らの拠り所を取り戻そう」
なんて言われながら、沢山のエルフに囲まれて幸せそうに嗚咽している。
「ここまでの事なのですか?」
モモちゃんが気になってエメリーさんに質問すると。
「私達の数世代前までは、共に生きた植物達なのよ? 生まれてから1度も会えずに死んでいく世代のエルフの手に、土や石や鉄ではない、森と生きる幸せな時代が戻って来るのですもの。あれくらいなって当然よ。」
世界中のエルフの殆どが、したくもない仕事をしながら、日々探し続けていたエルフの桃源郷。
それを作る事の出来る切っ掛けが、目の前のビンゴ大会に詰まっているのだから、仕方ないのだろうか?
「それもこれも、過去の勇者や聖女が悪いのよね……ラスト大陸のじゃなくて、アトラ大陸に召喚された奴らね。」
神を追い落とそうとしたのだ、それに嫌気が差した神が、面倒くさくなって聖域に引き篭ってしまった。エルフ達には、まだ数世代前の話だ、そんな過去を事細かく知っていた。
「世界樹の若木が大木に育つまで、育ってからもだけど、エルフが自分達から望んで他の人種の文明に触れるような事は、もう無くなるわ。」
拠り所を探す為に世界各地へと散らばったエルフ達、それを造り上げられる機会が訪れたのだ。
「世界樹を見つけたら、そんな風になると思ってたけど無理ね。」
あれ?
「1家に1本世界樹の若木を手に入れるまで、ニノ様に詰め寄るわよきっと……」
植物に関しては妥協しないらしい。
「それは……ニノ様だったら渡してしまいそうですね。」
「優しいから。無理して増やして渡してくれるでしょうね。」
因みにニノは、無理などしていない。
朝のラジオ体操のついでに、神気を振り撒くだけなので。
シメジもにゃん族もビンゴ大会に参加していた。
「どれが95にゃ?読めないにゃ。」「5までしか数えられないにゃ。」「私は15まで数えられるにゃ。」「それが95だよ。そっちが32。」
なんて言いながら楽しそうである。
慈王君に着いてきた蟲達は、微妙な表情をずっと浮かべていた。
エルフさん達の暴走があと1話続きます。
読んで貰えて感謝です。




