S.M.Zのお使い 天元大陸 1 出発前
お出かけ前です。
蟲の魔王と樹魔族の息子の慈王君。
外見は母親似なのでシュッとして金髪イケメンなのだが、能力は父親に譲り受けたのか、蟲を受け継いでいる。
そして、相性の良すぎる蟲神のカンタ君の絞り汁を受け入れたせいで、覚醒してしまった。
「寄るな!触るな!集るな!舐め回すな!」
慈王君から少しだけ滲み出る蟲神の神気に、聖域中の蟲系の生き物が集まってくる。
「なんでしょうコレは……」
モモちゃんの問い掛けに答えを知っている神が1人。
「普段だと、オイラに集まってくるのを我慢してる皆が、慈王だと舐めても大丈夫って思われたんだろ。大丈夫、危害は加えないはずだから。」
慈王君から滲み出た神気を吸収しているだけらしい、だがしかし……
「パンツの中は止めろ! 背中の真ん中は痒くなる! 毛髪に潜り込むな!」
さっきまで死にかけていたのに、元気な慈王君である。
「堕ちたって言っても元女神の呪いだったからな。外見は普通の治癒魔法で治るけど、オイラかニノにいか若芽彦じゃ無ければ危なかったかもな。」
ずっとシメジはワナワナしていた。
自分だけで癒せると思っていた。
母親に治癒魔法を手伝って貰った。
カンタ君に呪いを癒して貰った。それもこれも、全部悪いのは自分1人で捕まえる事すら出来なかった事。
慈王君が飛び出したのも、背中を庇って攻撃を受け続けていたのも、自分の気付かない攻撃を全部撃ち落としてくれてたのも、何回も瀕死の状態まで怪我させたのも、全て己の力量不足。
シメジにしてみたら、そんな自分が許せなかったようだ。
「パパさんみたくなりたい……」
ボソッと呟いた言葉は慈王君に気付かれていた。
「1度死んで魔石と死体の1部さえ回収して貰えてたら、数日もあれば、どっかのダンジョン復活するから、気にしなくて良いぞ示芽慈。」
モモちゃんにも、シメジにも意味がわかってない。
「グランド・オブ・ダンジョンマスター・禽魔王の呪いでね。」
慈王君の言葉に補足をしたのは、現魔王。
「ニノさんは……いや田崎さんは今頃きっと動いてますよ。魔物や魔族を解放しようとね。」
「だから、お使いをちゃんと終わらせよう。ラスト大陸はニノ様に任せて、俺たちは天元大陸に。」
モモちゃんやシメジにカッコよく言ったつもりだが、額に沢山のバッタが止まっている慈王君。
ちょっと気持ち悪い。
モモちゃんだって自然溢れる森育ちで、虫などは大丈夫なのだが、その数はどうか? と思う程に全身くまなく蟲に集られている。
「示芽慈、次に行こう。」
「動く虫さんに手を出しちゃダメだにゃ。」
「早く逃げるにゃ。このままだと……」
「虫さんと遊んでしまいそうにゃ!」
本能を我慢するにゃん族3人に触発されて、4番目の大陸、天元大陸へと向かう一行。
慈王君の体にまとわりついてた蟲達は、いつの間にか覚えていた、小さくなるスキルで微小な存在に身を変えて、慈王君の神器に潜り込んだ。
だから虫まで数に数えたら……
もう何人で行動してるか分からなくなっていた。
7章に繋がる回でした。
読んで貰えて感謝です。




