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おっさん家!  作者: サン助 箱スキー
6章 惑星パンツ初のメイド・イン・パンツ製オートバイ爆誕
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S.M.Zのお使い ラスト大陸 4 無茶な条件

 条件を出されちゃいました。


 元木こりの冒険者ギルドマスターや、高校生の見た目の水神に、スキルを駆使して見られていた一行の出立は、何も起こらず普通だったようだ。


「モモさん。先程の舞は、特別なものなのですか?」


 初めて見るニカラの次期巫女姫の単独の舞に、感動した慈王君。鎮魂の歌が、かなり気に入ったようだ。


「滅多に唄わない歌なんですよ。特別かと言われたら特別かもしれません。」


 好きな相手の特別を知れて、機嫌が良くなった慈王君は今回の旅が良いものだと、心から思っている。


「でも母は。本物の巫女姫は、もっと上手に舞いますよ。私でも見惚れてしまうくらいに。」


 ハクさんって普段は暴力的だが、歌や舞に限って言えば、長いニカラの歴史の中で1番と言われている。


 モモちゃんの目標は、母親のハクさん。

ニカラの舞を全て知る鬼、全てを魅了する巫女姫と呼ばれている実母だったりする。


 あまりにも美し過ぎる歌声と舞に、獅子王と呼ばれた獣人の王が人妻と知りつつ口説いてしまう程に。

 しかし、口説く時にハクさんの尻を撫でたせいで、全力のビンタをくらい、首が捻れて死に至ったのだが。


「ハクさんの本気の舞も、1度は見ておきたいですね。」


「毎年数回は、単独で舞いますよ。ニノ様がリクエストなさるので。」


 何かある度に相撲大会を開こうとする鬼達を、どうにかして歌や踊りに誘導出来ないか思案するニノ。


 相撲大会に巻き込まれるのが、あまり好きじゃ無いようだ。


「しかしハクさんは、相撲もお強いですよね?ニカラの一族でも上位に入るのでは?」


「本気を出せば母より父の方が強いんですよ。」


 慈王君は、エンジさんを思い出して不思議に思ったようだ。


「エンジさんは、それほどにお強いのですか?」


「ええ。母が父に恋した理由が、父の強さを物語っていますから。」


「どんな理由なのですか?」


「少し長くなりますよ?」


 モモちゃんは、母が父に惚れた日の話が大好きなようだ。いい笑顔である。


 にゃん族の3人は、シメジの尻尾に掴まって、風を感じている。

なのでシメジの背に乗るのは2人なのだが、慈王君は2人だけの空間だと思っている。凄く楽しそうだ。


 長くなる事を了承した慈王君に、モモちゃんから母の恋した理由を教えられた。


「本当は、父が次のニカラの族長になるはずだったらしいんです。」


 アオさんでも、アオさんが指名したアカ、クロでも無い。


「それくらい、優しくて強い鬼なんですよ父は。」


 ニカラの大人の強さを、慈王君は身を持って知っている。ちょくちょく相撲大会に参加しているから。

それでもエンジさんが、族長を務められる程に強いとは思えないようだ。


「まだ母が今の私より若かった頃に、父に命を救われたそうなんです。」


「どんな状況で?」


 慈王君は興味津々。


「まだ8歳の子供が、何も持たずに土竜を倒せると思いますか?」


 モグラじゃなくて、竜である。

土の中を魔法の力で泳ぐ手足のある巨大なサメのような生き物。


「それは無理でしょうね。今の私でも不意を付かれたら、逃げに徹する事しか出来ないでしょうし。」


 音も無く、匂いも無く、土の中から突然襲い掛かっって来る土竜、そんな生物を確実に撃退出来るものは、世界中を探しても数人しかいない。


「突然地中から襲ってきた土竜に、母が飲み込まれた時に、そばに居た父は、自ら土竜の口に飛び込み、腹の中まで自力で辿り着いて、土竜の腹を破って母を助け出したんですよ。」


 慈王君は驚いている。

モモちゃんの言ったことを、普段は温厚で優しいエンジさんがやった事に。

そして、それが8歳の時と言う事に。


「皆が諦めてしまったらしいんですよ、母の事を。なのに父だけが諦めなかったらしいです。」


 モモちゃんの顔がうっとりしている。


「左足に大怪我をして、膝から下を切り落とさなければならない程に、足に大怪我をしつつ、母を無傷で助けたらしいんです。8歳の父が1人で。」


 ニカラの鬼の8歳と言えば、身長140cm程が平均だろうか。

そんな子供が体長30mを超す土竜の口に自ら飛び込んだ事を、単純に凄いとしか思えない慈王君。


「その時に父が叫んだ言葉に、母は恋をしたそうです。」


「どんな?」


「ハクお姉ちゃんは僕のお嫁さんにするんだから、化け物のゴハンになんかしてやらない。」


 実を言うとエンジさんは、アカアオクロハクの2歳年下なのである。


「その時の父は無我夢中過ぎて、覚えてないらしいですけどね。」


 ハクさんは、丸呑みされて消化される直前で、助けられたのだ。プロポーズされながら。


「母と同い年か、それ以上の年齢の皆さんなら、覚えている事らしいです。私が小さい頃は、良く昔話もしていたので。」


 慈王君は、俺には無理かもって思っている。


「私が小さい頃の父は、片足に棒を付けてましたが、他の人より働けないはずなのに、1番の働き者って言われてたんですよ。でも族長の資格は失っちゃいましたからね。片足が不自由なので、戦えませんから。」


 片足で石工をやるとか、エンジさんだから任されていたらしい。


「聖なる大地に辿り着いた後に、色々あったのですが。切り落としたはずの足が生えてる事に、父はとても感謝しています。」


 ガンモの治癒魔法で生えちゃったらしい。

因みに、ニノもガンモも、エンジさんの片足が不自由だった事は知らない。


「普段だと相撲がそれほど強くないのは、思いっ切りやって誰かに怪我をさせるのが嫌らしいんですよ。」


 だから、ニノやカンタ君に挑戦する時だけ、本気になるらしい。

聖域に来たばかりの頃は、久々に両足で大地を踏み締められる感覚に慣れておらず、負け続けていたが。


「私を嫁に欲しいなら、本気の父に向かって行ける程に強くなって下さいね。まずそこが最初の条件です。」


 勝てとは言わないが、かなりキツイ条件である。


「ははは……」


 慈王君苦笑い……


「そして、アオ兄さんでも叶わない程に、凄く強くてカッコ良くなってくれないと、私は好きになりませんよ。」


 5万を超える軍隊の前に、棍棒1本片手に持って、単身で突撃して行けるアオさん以上に強くなれと言う、モモちゃんは鬼か?


 鬼だな……


「慈王ガンバレ!僕も応援してあげるから。沢山鍛えよう。」


「玉砕覚悟で頑張るにゃ!」


「お嫁さんが欲しいなら、頑張らないとにゃ。」


「玉砕戦法にゃ!当たって砕けるにゃ!」


 風を感じる事をそうそうに飽きて、2人のそばに来ていたにゃん族3人と、2人の話をずっと聞いてたシメジに励まされる慈王君。


 しかし、ポム(雌)の言葉は、応援じゃない気がする。


 そして、その頃。


 ヤポーネ王国の首脳陣から神とキャットナインテイルの存在を公表しないように、と過去に口止めされていた元木こりのギルドマスターなのだが……

 大勢の人間が見てしまった、ナインテイルと魔族の2人の事を、ラスト大陸に広まらないように隠すのは、不可能だった。


 足を失ったショックが大き過ぎて、自分が言ったことを忘れてしまっていたエンジさん。

さっさと嫁にしない事に、痺れを切らしたハクさんに迫られて、嫁にするか、ぶっ殺されるか選ばないといけなかったらしいです。



読んで貰えて感謝です。

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