S.M.Zのお使い ラスト大陸 2 ペシャペシャ
何となく、そういう擬音に聞こえてしまいます。
話は元ニカラ集落があった場所に6人組が到着した時に戻る。
何も無い、ただの土剥き出しの大地に降り立った。
ここが、かつての霧の大森林の名残を残す、豊かな森だった事など、今の状態を見ても誰も分からないだろう。
「モモさん、この場所で合っていますか?」
現に慈王君も分かっていない。
「にゃんにもにゃいにゃ。」
あれから数年、当時8歳だったモモちゃんの記憶に残る豊かな森は何処にも無かった。
しかし……
「大きな岩があるにゃ。」
「何か書いてあるにゃ。」
「遠くて読めないにゃ。」
元々は、北の広場があった場所に、1つ岩が残っていた。
クロの実兄でアオの義兄、ハイが振り回した大岩である。
何か書いてあると言われて、モモちゃんが歩き出す。その文字を読む為に。
この岩は、神鉄オリハルコンとアダマンタイトで構成された大岩。
元はニカラ村の中央広場に座していた、古くからある石碑であった。
【英雄ニカラチャと魔女王パンチョモの偉業を此処に称える。ムラスト大陸の全ての人より感謝を込めて。】
その一文の後に……
【この場所立ち入りを禁ずる。何人も荒らすこと無きよう。未来永劫ニカラの鬼の鎮魂の為に。初代征夷大将軍・ニカラ・カイゼルの名の元に。】
それを見たモモちゃん、いきなり泣き始めた。
「モモさん。」
「「モモにゃん。」」
「モモ。」
それぞれが、思い思いにモモちゃんを励まし始める。
「やっぱりカイゼルおじちゃんだった……」
モモちゃんは覚えていた。
毎年のように数回訪れる、ヘンテコな髭をたくわえた人間の事を。
大好きなアオや母達を尋ねて、手にいっぱいのお土産を抱えて遊びに来る、優しい顔付きの面白いおじちゃんだった事を。
ニカラの鬼達は、人間側が何を考えて戦争を始めたのか、全く知らない。
何故に、優しかった、面白かった、帰る時は寂しかった、素敵でヘンテコなおじちゃん、カイゼルが、自ら家族と呼ぶ者達を滅ぼしたのか。
「ニノ様は、教えてくれるかな? ホントの話を教えてくれるのかな?」
少しだけ落ち着いたモモちゃんが慈王君やシメジに聞いてみる。
「モモさんが本気なら、神は逃げないと思いますよ。」
「モモの事をニノは大好きだから、モモが聞いたらちゃんと教えてくれるよ。」
「よく分からにゃいけど、カリカリをくれた奴は良い奴にゃ。」
「あんな美味しいカリカリを用意出来る奴だから、きっと色々知ってるにゃ。」
「もう一度帰って聞いてみるにゃ。」
真面目に答えたシメジと慈王君。
にゃん族3人は、あまり良く分かっていないのだが、ここまでずっと優しかったモモちゃんに、何か声を掛けてあげたいと、頑張ったようだ。
「いえ、大丈夫です。ちゃんと仕事を終わらせてから帰りましょう。」
そして、慈王君の一言である。
「モモさん。ここに全て植えて行きましょう。」
そう言った慈王君は、魔法鞄の中から様々な種子や苗木を取り出し、1つ1つ丁寧に地面に埋めていく。
そして……
また、おもむろに左手を引きちぎり、地面に投げ捨てる。
「我が身を糧に、育て。」
大岩の周りに、小さな雑木林が出来上がる。
気合を入れて左腕を生やした慈王君。モモちゃんの方を見てみた。
「やり過ぎです。そんなに無理はしなくて良かったですよ。」
少し笑顔になったモモちゃんに言われて、慈王君は嬉しかったようだ。
「ここは僕の縄張りにして行く。誰も荒らせないようにね。」
そう言ってシメジがマーキングをし出す。
ペシャペシャとお尻をフリフリ、尻尾をフリフリしながら、オシッコを掛けて回るシメジ。
マーキングの匂いで、恐怖して怯えるにゃん族。
岩場や土塊に擬態する魔物達が、雑木林を見付けた動物達が、岩の周りに出来た雑木林に立ち入る事は、数百年後に匂いが消えるまで、1度たりとも無かった。
猫がマーキングする時の、お尻と尻尾を振る姿……
匂いがヤバいっすよね。アレを高い服に掛けられた時は、怒るに怒れませんでした。
読んで貰えて感謝です。