暴走モード
ゲリオンじゃないですよ。
外界を回る3人が連れてきた、愛くるしい見た目のにゃん族に、カリカリをプレゼントしたニノ。
食べにくそうに、両手で拝むようにして美味いと食べるにゃん族達を見て、ドワーフさんの作業場へと向かったのだが……
あれじゃダメだ。美味しいって言ってくれるけど、あれじゃダメだ。
「アルトさん!大切なお願いがあります。」
やっぱりここはアルトさんに頼むべきだろう。
「どうしました?ニノ様。私で出来ることなら聞きますけど?」
さすがアルトさん。アントニウスさんと違って「外界にサーキット場を」とかの無茶な対価を求めないな。
「にゃん族の方達に特製のカトラリーを!」
あんなに食べにくそうにしてる物を食べさせるなんて嫌だ。
「カトラリーですか? それなら金属製でしょうから、ゴッペか義兄さんにお願いしては?」
「ダメです。出来るだけ軽くて丈夫で、彼らに使い易い物を作って欲しいんです。1度来てください。」
アルトさんの手を引いて、猛ダッシュでにゃん族の所に帰ってきた。
「1粒1粒が美味しいにゃ。でも一度に食べれたら幸せににゃれそうにゃ。」
「2粒同時に食べれたにゃ!カツオとマグロのハーモニーが素晴らしいにゃ。」
くそっ!やっぱり食べにくそうだ。
「彼らの手を見てください。そして彼らに合わせたカトラリーの作成を依頼します。依頼の報酬は望むままに!」
ガンモが食べ方を指導してるんだけど、ガンモは直接皿に口を付ける、普通の猫と同じ食べ方なんだ。
だから二足歩行のにゃん族さん達は、戸惑ってる。
「確かに金属製だと重いでしょうね。分かりました。作ってみます。報酬は、一流の職人の作った螺鈿細工の作品を、何か1つお願いします。」
「大急ぎでお願いします。報酬は、最高の物を用意するので。」
ニヤリと笑ったアルトさんが、エントさんに会うために森へと入って行った。
ぐはっ!めちゃくちゃ高いじゃないか、一流の職人の作った螺鈿細工って……
「仕方ない、髪の毛を沢山売ろう。ガンモ、ちょっとお願いしていい?」
「どうしたの? お仕事?」
「うん、お仕事。髪の毛を伸ばすから、ガンモの爪で切ってくれないかな?」
「ん? 髪の毛を切るの? 簡単だね。」
金鬼アバターに変化して、髪の毛を思いっきり伸ばして、ガンモに切ってもらって、天秤を出して髪の毛を皿に乗せた。
数十キロ位はあっただろう、ヒヒイロカネ製の髪の毛が消えたと思ったら、めちゃくちゃ大量の金貨が現れた。
「ガンモ。今日は、ち〇ーるを5本食べていいよ。何味が良い?」
「それなら、追加は黒毛和牛でお願いします。」
ガンモに黒毛和牛味ち〇ーるを絞り出してあげながら、タブレットに金貨を吸い込ませていく。
カンタ君が「オイラも貰うね」って言いながら、20枚くらい持って行ったけど、今日は気にしない。
「たまの贅沢だから、持って行って良いよ。」
「おっ!ニノにいが贅沢なんて珍しいな。普段なら修行僧みたく質素な生活なのに。何か良いものでも買うの?」
「うん。アルトさんに依頼した仕事の対価をね。」
カンタ君が何してんだコイツって、何時ものドン引きした顔になってる。
「相変わらず自分の事は気にしないんだな。まっニノにいらしいか。」
そんな事を言いながら、自動販売機型転移門に向かうカンタ君。
この時は気にしてなかったけど、止めておけばよかった。
人間国宝が作った蒔絵を1つ、神界オークション最大手の神オクで落札した。
落札金額が650万円……
だけど後悔はしていない。
にゃん族さん達の笑顔を、もっと見たいからだ。
運んで来てくれたのは、西〇運輸の配達員さん。今回はトラックに乗ってきた。
「まいど、おおきに。やっと舗装してくれたんやね。めちゃええ塩梅や。やけど、神器でも無いのにワシが運ぶって何を買うたんや?」
「毎度です。ちょっと人間国宝の作品を……」
「ああ、それならワシが運ばなアカンな。ちゃんと保護スキルで保護しときや。壊したらアカンで。」
去り際に言われた事がとても良いアドバイスだったので。
「はい。何時もご苦労さまです。」
届いた蒔絵に保護スキルを使って不壊を付与しておいた。
そんなこんなしてたら、埃まみれのシメジに乗った慈王君達が帰ってきた。
ぐぬぬ、俺ですらシメジの背中に乗った事無いのに! ちょっと意地悪してやろう。
「乗り物酔いの呪い。」
小さな声で呟いて、乗り物酔いになりやすくなる呪いを慈王君に与えておいた、1回で効果は消えるやつだけどね。
にゃん族さんやモモちゃんには与えてないよ。
俺は、イケメン男子に厳しいんだ。
慈王君から色々聞いて、過去眼を使って色々見たんだけど。
「どげんかせんといかん。」
元来モフモフのはずのにゃん族さん達の尻尾が、みすぼらしくマダラになっているのが気になってたんだ。
何とかしてモフモフに戻さないと。
1回癒して、生やすだけじゃダメだ。
ちゃんと原因を排除しないと。
そんな事を考えながら、アルトさんに報酬を先に渡した。
「不壊を付与しましたから、直に触っても大丈夫です。カトラリーの件は、よろしくお願いします。」
アルトさんに頭を下げて、アトラ大陸・深淵の森・魔王城に向かう。
タブレットを使って、詳細鑑定と過去眼を発動しながら。
禽魔王よ、覚悟しとけ。
モフラーの神の暴走です。
アルトさんに渡した蒔絵は、螺鈿細工が施された丸い蓋の着いた箱です。めちゃくちゃ高いです。値段を調べてビックリしました。
読んで貰えて感謝です。