S.M.Zのお使い 蒼大陸 2 ありがたや
なんか、ありがたいそうです。
猫獣人に、最初に気付いた人魚が大声で叫ぶ。
「ヤツらが来たぞ!海に逃げ込め!」
そして、十数人居た人魚が一斉に海に飛び込む。
しかし、シメジにまとわりつかれていた人魚さんが逃げ遅れた。
そこに、冒険者風の武装した猫獣人3人が襲い掛かる。
慈王君もモモちゃんも、走っているが間に合わない。
「マグロ様ぁぁぁ!マグロ人魚様ぁぁぁぁ!」
「旨いにゃ!マグロ人魚様は旨いにゃ!」
「うひょー、少年!私に舐められるにゃ!」
シメジがまとわりついていた人魚は、まだ10歳の男の子。
そして、モモちゃんと慈王君が防ぐ前に、人魚に辿り着いた猫獣人の冒険者達は、ひたすら人魚君の下半身を舐めている。
「うみゃい!うみゃい!海の旨みがたっぷりにゃ。」
「猫又様も分かってるにゃ!マグロ人魚さんは、美味しいにゃ!」
「生きたマグロ人魚様を舐めるのは幸せだにゃ。いっその事、私らと冒険者になるにゃ!毎日舐めて綺麗にしてあげるにゃ。」
慈王君もモモちゃんも、呆気に取られている。
「なんでしょうコレは……」
「さあ?なんでしょう……」
猫獣人達は人魚君を撫で回し。丁寧に布を敷いて、上に座らせたのだが……
まるで、崇拝する何かを見つけた狂信者の様に、ひたすら土下座して、仲間になってくれと勧誘している。
そして海から、親の人魚さんが人魚君を大きな声で呼んでいる。
「サミュエル。早く逃げて来なさい。そいつらは危険だ!全身を舐め回されるぞ。」
「ザラザラした舌で、全身くまなく綺麗にされてしまうわ。早く逃げて来なさい。」
う〜ん、どう言う事なのだろう?
「この人たち、悪い人じゃ無いよ。尾びれに付いたフジツボとか綺麗に取ってくれるし。」
そして大人の人魚数人掛りで、水魔法を発動する。
そこそこ大きな水の塊が飛んで来たので、濡れるのが苦手なシメジも猫獣人も避けた。
その隙に、人魚君は大人達に連れていかれたようだ。
後に残ったシメジと猫獣人3人。
慈王君とモモちゃんが近付いて来た事なんか気にしていない。
「ものすごく力の有る猫又様にゃ。」
「神々しいにゃ!こんな猫又様に初めて会ったにゃ。」
「私生きてて良かったにゃ。こんな癒しな猫又様は初めてにゃ。」
シメジに向かって自己紹介をしようとしている猫獣人3人組。
「私たち、お魚大好き冒険者パーティーにゃ!パーティー名は“青い魚”にゃ。」
う〜ん、冒険者パーティー・青い魚……
どう考えてもサバとかアジとかイワシとかを連想してしまう。
「僕はトラ吉だにゃ。逃げ足に自信があるにゃ!」
そう言って逃げる仕草をする。
「僕はマダラにゃ。隠れるのが上手いにゃ。」
草むらに頭を突っ込んで隠れるマダラ、お尻と尻尾が丸出しである。
「私はポムにゃ。戦うのは苦手にゃ。」
背中に背負った弓を持とうとするも、肉球で掴めない……。
「僕は、若竹若芽彦と若葉春芽姫の息子で若竹示芽慈彦。癒すのが得意だよ。」
シメジがちゃんと挨拶してるのを、モモちゃんと慈王君が、あたたかい眼差しで見守っている。
「うにゃ!若竹若芽彦と言う猫様は知らにゃいけど、春芽姫様は知ってるにゃ!」
「むかしむかしに、お隠れににゃった猫の神様にゃ!」
「本当に若竹示芽慈彦様は、春芽姫様の息子かにゃ?」
シメジが尻尾を解いた。
9本の尻尾全てがモフモフ、そのうち5本のカギ尻尾。
「うにゃ!猫又様じゃ無いにゃ!ナインテイル様にゃ!ありがたやーありがたやー。」
「初めて見たにゃ。本物のナインテイル様にゃ、ありがたやーありがたやー。」
「もふもふでカギ尻尾のナインテイル様にゃ、ありがたやーありがたやー。」
3人の猫獣人がシメジを拝み出す。
「なんでしょうコレは……」
「さあ?なんでしょう……」
目の前で繰り広げられる、猫神獣と猫獣人のやり取りは、慈王君もモモちゃんも理解不能だった。
うふふ。
詳細は次回。
読んで貰えて感謝です。