S.M.Zのお使い アトラ大陸 1 ゴーレム
Sシメジ、Mモモちゃん、Z慈王君のお使い編です。
我らの主人公が、外界に仕事(植林)で出張している2人と1匹の事を心配しながらも、日々バイクの部品や、必要な工具を自作する事に費やしている頃。
心配されているなど、ひと欠片も気にしていない2人と1匹……
[面倒臭いから3人と書こう。と筆者が言っておりますので、以後2人と1匹は3人と表記します。]
最初に訪れたのは、アトラ大陸中央に聳える霊峰アトランティス山頂にある転移門。
標高13000m・生き物を拒む山頂付近に設置してある転移門を護るのは無機物生命体のゴーレム一族。
「ごめんください。お久しぶりです東郷 慈王です。」
転移門の周りに住むゴーレム達は、普段は岩に擬態しているので、見渡しても何処に居るのか分からなかったりする。
慈王君の問い掛けに答えが帰ってきた。
「あれまあ、慈王ちゃんでねえの。えらい別嬪さんな魔族さんと、強そうな猫さんを連れて、どうしたんだ? 珍しいのう、こんな辺鄙な場所に。」
ゆっくりと動き出した大きな岩、黒鉱を主体とする岩のゴーレムさん、この地域の代表者で名前は無い。
「お久しぶりです、族長さん。他の皆さんは何処に?」
初めて見る無機物生命体に、尻尾を水平に揺らして警戒するオスの三毛猫で九尾の猫・シメジ。
鬼の外見だと体が大きすぎて、慈王君を蹴っ飛ばしたりするからと、ゴブリンシャーマンクイーンの外見をしているモモ。
モモちゃんは、ゴーレムを見るのが初めてでは無いようで、普通に見る事が出来るゴーレムよりかなり大きいゴーレムだが、落ち着いている。
「オラぁだけが留守番しとるんだよう、5000mほど下った温泉街に他の皆は、温泉旅行に行っとるんだあ。」
「就業中の一家の大黒柱は辛いですねえ。」
どうやら1人だけ仕事があるからと、家族旅行に連れて行って貰えなかったようだ。
お父さんは世知辛い。
「初めまして、霊峰アトランティスの転移門の守護者様。ニカラ・チャとパン・チョモの末裔でニカラ・モモと言います。」
幼い頃から神に感心されるほどに、丁寧な挨拶をするモモちゃん。
相変わらず丁寧に挨拶しているようだ。
「フシャーフシャー、ウナァァニャァォァ……」
何故か威嚇しているシメジ。
もふもふ過ぎて可愛いく見えるだけなのだが。
「示芽慈彦、おいで。」
何故か神より慈王君に懐いてしまったシメジ。
慈王君においでと言われて、体を駆け上って肩に全身を預ける。
「あらまぁ九尾の猫様でねえの。めんこい子だなぁ。」
モモちゃんに一礼してから、シメジに触ろうとする巨大なゴーレム。
指一本がドラム缶くらいのサイズである。
「うにゃ! ヤバイ! 大きくならないと。」
そう言って、慈王君の肩に乗ったまま巨大化するシメジ。
父親のガンモ並の神気を備えた九尾の猫が、一気に大きくなる。
大きさで言うと、4tトラックくらい。
「ほええ、すっごいモフモフだなあ。めんこい子だ事お。」
たとえ大きくなっても、ゴーレムよりは小さかったようで、全身くまなくモフられている。
シメジは必死に噛み付いたり猫キックしたりしてるのだが。
「硬い! 初めての感触! これはイイ物だ。」
父親や飼い主に戯れ付いても、簡単にあしらわれてしまうので、思いっ切り戯れ付ける相手を見付けて、お気に入りになったようだ。
「族長さん、聖域に住まう星神様から依頼を受けまして、世界中に霊草霊木、仙草仙木を植えて回らないとなのですが。アトラ大陸だと、どの地域に植えるのが宜しいでしょうか?」
モモちゃんに聞かれたゴーレムの族長。
太古の神より任命された、アトラ大陸全域の守護者でもある。
「テキトーにそこら辺に植えたらいいんでねえか? 聖域の植物さんなら、住みやすい環境に勝手に移動するんでねえ?」
わざわざ正式な転移門を使って、守護者の助言を受けようと移動してきたと言うのに、返された答えは、超が数個付く程にテキトーなものだった。
「示芽慈彦、重い……。」
肩に抱いたままで巨大化されたせいで、シメジに押しつぶされている慈王君。ガンバレ。
シメジの下から抜け出した慈王君が、人種の住む地域にも植えたいと、ゴーレムに助言を求めたら。
「それなら、ダークエルフの集落の近くに植えるのが良いんでねえか? 他は見つかったら採取されちまうでぇのお。」
3人の次の行き先が決まったようだ。
次の行き先は、アトラ大陸北西部。
綺麗な砂浜と、豊かな森と川と共に生きる種族、ダークエルフの集落に向かうようだ。徒歩で。
徒歩と言っても、3人共に思いっ切り走れば時速80kmくらい出すのは余裕なのだが。
「ありがとうございました族長さん。今度お礼に星神様にお願いして、星神様の神気で魔石でも作って貰って来ますね。」
一礼して移動を始める3人。
ダークエルフの集落に向かう前に、温泉街にでも寄って行こうか、なんて考えているらしい。
「次期魔王と、鬼の英雄と魔族の女王の末裔に、災厄の獣かあ、なんか起きそうな予感がするだあよお。」
寝転んで岩に擬態しようとしているゴーレムの呟きは、3人に聞こえていなかった。
ゴーレムさんは、黒鉱で体の殆どが出来ているので、ヒヒイロカネの原料にされちゃいそうです。
次回、温泉に浸かる3人とゴーレムと火竜。
読んで貰えて感謝です。