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おっさん家!  作者: サン助 箱スキー
閑話 蟲魔王になった少年
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閑話 ドス黒い何かに支配された蟲魔王

今回の前書きでネタバレは無しです。


 東郷少年の日本人としての意識が心の奥底に閉じ込められ、ドス黒い何かに体が支配されたまま、行く先々に血の川を張り巡らせる。


 牧童が使っていた魔道具のひとつで、ランプの燃料となっている魔石に触れた東郷少年の慟哭は如何様だったのか。


 その魔石の元々の主は、産まれたばかりの小さな狐の魔物、まだ授乳すら終わっていない魔物の魔石であった。


「再生の血肉になれ。」


 東郷少年が牧童の頭を握り潰すと同時に、牧童の体の一部が素材となり、肉体を失った小さな狐の魔物が復活を遂げる。


「なあ人間、お前達の血肉をくれよ。失われた魔物の肉体を再生(つくる)のに。」


 人種の使う魔道具の殆どの燃料となるのは魔物の体内から奪われた魔石である。

その魔石ひとつひとつに魔力を注ぎ込み、人の血肉を触媒にして魔物達の肉体を再生させる。


 与える事の出来る者、魔王の資格を備えた者だからできる事である。


 ただ奪われた物を取り返しているだけなのだ、魔物側から見たら。


 魔石の魔力を補充され、肉体を再生され、意識を取り戻した魔物達は、東郷少年の後に続いて蹂躙を始める。

 死肉となった人々は、次々に魔物や魔族の再生されるための触媒に代わりながら。


 いつしか東郷少年の後ろには魔物の大軍が出来上がっていた。




 東郷少年を追い掛ける魔族が率いる魔物や動物達の集団の先頭を走る1羽の兎、2本角の角兎タマオ。


「早く!早く行かないと、和真がダメになっちゃう。」


 蹂躙の後を辿る魔物の1団の中で特に焦る魔物ミノタウロスのモーブ。


「オラぁ先に行くだぁ。待ってられんだよぅ。」


 3年の月日を常に東郷少年と共に生き、共に戦った2人の魔物、他の魔族や魔物達と違い東郷少年が魔王として生きるには優しすぎる事を良く理解している。


「迷宮に住んでた頃に連れてこられた子供達も、森に迷い込んで来た和真も優しいんだぞぅ。人の大人達は残酷だぞぅ。そんなのに和真の心が殺されちゃいけないんだぞぅ。」


「モーブ、先に行くから。ワタシ1人なら和真に追い付けるから。」


 ミノタウロスのモーブ。


 産まれて直ぐに異常な程に発達した筋肉のせいで、軽く触れた物でも破壊してしまう事を家族に恐れられ、ラビュリントスに閉じ込められ、食う物も与えられず、何故か毎年送り込まれる数人の子供達を必死に岩壁を掘り逃がす。


 送り込まれた子供を逃がし、人々の目から隠したせいで人肉を貪る怪物と恐れられたが、心優しき半牛半人の魔物である。



 2本角の角兎タマオ。


 額に生えた2本の角のせいで同族から異形と恐れられ孤独に生きていた所を人に捕まり見世物にされていた。


 小さな檻の中で日々人の目に晒され、食う物もろくに与えられず魔力の薄い地域を連れ回されたせいで死にかけていた。

人の目の冷たさを良く知る魔物である。


 二人共、古き神の手で保護され世界を渡り、いつしか深淵の森の東の守護者となったのだが、元々戦い等を好まない優しい魔物であった。




 東郷少年が工場街デトロの象徴でもある溶鉱炉の大煙突を目にした時に、ドス黒い何かが更に膨れ上がる。



 鉄を溶かす火力を出すために燃料として使われているのが魔物達の命でもある魔石だと言う事を、煙突の先から霧散する様々な種類の魔力を感知して気付いてしまった。


 そして東郷少年の心は完全に壊れる事になった。


 率いる魔物や魔族達と共に動き出す。


『人に奪われた魔物の命の怨みを晴らすために』


『人に奪われた魔物達の住処を取り戻すために』


『人に奪われた魔物達の魔石を取り返すために』


 惑星パンツで初めての火薬を作った街・デトロに蹂躙と言う名の悲劇が降り注ぐ。


 地球の歴史を知る東郷少年には、火薬がどれだけの命を奪うのかを理解している。

銃火器を作った者達を生かしておく事など出来なかった。



 東郷少年から発せられる魔力は様々な魔道具の魔石に吸収され魔物や魔族の体が人の肉を触媒に蘇る。


 街の至る所で悲鳴が上がる、持っていた魔道具が突然魔物や魔族に変わる、その場で人達は更に肉塊へと変わり他の魔石に触媒として血肉を与える肉袋に成り果ててしまう。



 それから2日、デトロの街に生きている人種は1人も存在せず、魔物や魔族を避難させた後に東郷少年の取った行動は、火薬や銃火器を処分する事。


 火薬庫に自ら赴き、中に入り火魔法を使い爆発させる、漆黒の禍々しい鎧には焦げあと1つつくことも無かった。


 アトラ大陸の唯一の幸運は、火薬の製造方法をデトロの街のドワーフ達が独占していた事と、銃火器の製造を街の外に出す事も無く秘匿し続けデトロの中で完結させていた事。


 数人のドワーフを身体の端から焼いて聞き出した、他の街には知るものは居ないと言う言葉を聞いて、この街に存在する火薬を含む銃火器を処分すれば良いと考えた東郷少年。


 全ての火薬や銃火器の処分が終わった直後にタマオとモーブが東郷少年を見つけた。


 先日までの、少し滑稽なゴキブリ姿の鎧では無く、禍々しい黒い棘と赤く血管に見える筋が入った鎧に身を包み、激しく叫び続ける東郷少年を見て、モーブが走り出す。


「タマオさぁん、オラが抑えるぞぅ。和真の目を覚まさせないとだぞぅ。鎧の1番薄い部分にタマオさんのいつものキツイ奴を1発かますんだぞぅ。」


「1秒抑えてモーブ。1秒あればぶち込んでやるわよ、ドギツイのを!」


 東郷少年を体ごと抱き着き止めたモーブは、鎧に触れた瞬間に皮膚が焼け焦げる。

火薬を焼いて処分した鎧に籠る熱は、モーブの皮膚を焼くのに十分な熱量を保持していたようだ。


「和真ぁ、目を覚ますんだぞぅ。覚めないならタマオさんのキツイの1発喰らうんだぞぅ。」


 数々の冒険者を恐怖させた、タマオの必殺の一撃が東郷少年を襲う。


 3年共に戦い、その鎧の装甲が1番薄い部分を把握していたモーブとタマオだったから出来た事。


「お尻の鎧は布だけなのね!どんな屈強な冒険者でも耐えられないワタシの必殺技! いっちょ喰らえ。44カ〇チョー!」


 タマオの頭部に着いている大きな角が東郷少年の尻の穴に突き刺さる…………。


「くぁw背drftgyふじこlp;@:「」」


「よっしゃ大成功!モーブ早く離れて。」


「タマオさんも、早く引き抜くんだぞぅ、和真のお尻が大変な事になってるんだぞぅ。」


 タマオの頭部の大きい方の20cm程の角が、根元まで東郷少年の尻の谷間にくいこんでいる。


「あれ?タマオさんモーブさん。あれ?ここって…………。」


 東郷少年の意識が戻ったようだが……。


「あぁああぁぁぁあああああぁぁあぁぁああ」


 尻の痛みでは無い、自分がここ数日やった事を思い出した東郷少年……。


 嘔吐を繰り返して、のたうち回る東郷少年を火傷した肌も鑑みず押さえ付けるモーブ。


「和真、大丈夫だぁ良いんだァ、和真がやらなくても誰かがやってたんだぞぅ。だから良いんだァ。」


「サマンサ様、ライ造様、ポロ様、和真が壊れちゃう、ここじゃない何処かに移動させないと!」


 タマオに言われて転移門を作り出す3人の魔族。

飛んだ先は、モーブの家の地下。保存庫の中であった。




  白い月の内部


「何故に転生して人の敵になる! 普通なら魔物の力を手に入れれば、それを隠して人の世の味方をするのが日本人じゃないのか!」


「そんなの分からないわよ、あの時の声の(ぬし)が何かしたとしか思えないわ。」


「火薬が発明されれば宇宙まで人が達するのはあと少しだと言うのに。」


「我々の与えたギフトを使えば思考を操作出来た、だがなぜに使わんのだ!」


「また失敗だ。今度の失敗は痛いぞ、我々の行動が化け物にバレてしまっている。」


「日本の神々にもバレてるわ、帰れなくなっちゃうどうしよう。」


「ゼウス様が早く見付けてくれないと、ほんとに僕ら全員が権能だけ残して消滅させられちゃうよ。」



 偽の名を騙り、惑星パンツの資源を地球に持ち帰り、自分達のためにだけ生かそうとした数柱の神の評定が始まる。


 いつか来る主神の助けになる為に、少しでも何か出来ればと。




後書きで次回予告も無しです。



読んで頂けて感謝です。

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