Yの字
腕をYの字にしてください、片足を上げてください。
エメリーさんの両親は、夕方6時頃にならないと帰宅しないと言うことで、先にスキルオーブと魔石を売りに来たんだ。
初めて見る魔術師ギルドに少しだけワクワクが止まらない。
「魔術師なんて魔法オタクの集まりなんだから気にしないで。建物が珍しいからってキョロキョロしないの、田舎者に見えるでしょ。」
地元だから珍しい事も何も無い、キリッとして少しだけ不機嫌そうな顔になったエメリーさん。
滅多に見れない大都市の建物をキョロキョロ見る爽やかな微笑みのイケメンアカさん。
大都市の中央大通り広場近くにデーンと構える様々な伝統的価値のある惑星パンツの建物にキョロキョロしてしまう田舎者の神。
三者三様だな。
そんな異世界情緒溢れる中で、絶対これは日本人と言うか大阪人が作っただろ!とつっこんでしまいたいような建物が1つ。
片足上げて両手をYの字に広げたランニングシャツと短パンのグ〇コのあの人が載ってる看板を掲げた建物が魔術師ギルドらしい……胸に魔術師と書いてある。歴史改変してやりたい。
「中級魔石の鑑定を依頼されたエメリー様、鑑定結果が出ております。3番の窓口までおこしください。」
銀行?役場?ちょっと異世界でしょここは。
なんで番号札を取って待たないとなんだよ……
効率を考えたら同じような物に辿り着くのか?
「正当な評価だったわ、万能型中級魔石10個で白金貨13枚ね。」
万能型?何それ?
「ニノ様。毎回どの属性にも対応出来る万能型魔石をお作りになられてたのでは?」
「普通より価値が高いなら良かったです。」
知りませんでした。ここは誤魔化しておこう。
「これで2人に予定していた物より少しだけ高級な寝具がプレゼント出来ますからね。」
白金貨13枚の寝具なんてと2人で頬を染めながらイチャイチャしてくれてるけど、神界通販サイトのニ〇リ神界通販店で少しだけ高級品なのを買うだけだからな。鬼サイズとエルフサイズでな!
今回の売却益は、2人のせいで大金をアバター課金しなきゃいけなくなったから、その補填分ですよ。
俺の貯金の。
言語スキルオーブの方は、どのギルドでも買い取って貰えるらしい、と言うのも貿易を行う部署の新人教育に使うとの事だ。
四大陸で使ってる文字は、それぞれ微妙に違うらしいから共用語のスキルオーブは、かなり喜ばれるって言われた。
英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、みたいな基本的にアルファベットっぽい文字が各大陸で使われてる文字で、共用語はラテン語みたいな感じらしい。
貿易の時の契約書なんかを共用語で書くとの事だ。
どうせなら木工ギルドで売却してよと、エメリーさんに言われて木工ギルドにやってきた。
前回木工ギルドに来た時は、エメリーさんの対応の酷さに呆れて建物の事を話さなかったけど。
木工ギルドと言うだけあって、オール木造の素晴らしい建物なんだよ。
ロシアのキジ島にある世界遺産にもなってるプレオブラジェンスカヤ教会のような建物なんだ。
斧1つで作ったと言われて、釘を1本も使ってない事でも有名だ。
日本の木造建築に携わった俺としては、かなりそそられる世界遺産なんだけど、それの見た目に近い建物が天元大陸木工ギルド総本部。
「ニノ様、この建物が気になるなら作った本人に聞いてみたら?うちのパパの若い頃の作品よ。図面も残ってるはずだわ。」
なんですとー!それは素晴らしい事じゃないか!継手がどうなってるとか、仕口はどう仕込んでるとか、仕上げは何をしたのかとか聞きたい。根掘り葉掘り聞きたい。
アカさんが木工ギルドの扉を開けて、エメリーさんが最初に木工ギルドに入っていく。
エメリーさんを見たエルフの職員さん達が寄って集ってエメリーさんを拘束してどっかに連れて行ってしまった。
俺とアカさんは呆然と見ているしか出来なかった。
だって、やっと帰ってきたギルドマスターに連絡をしろ!とか職員さんが叫んでるんだもん。
ドワーフ四人に呼ばれて、ホントに何も持たずに聖域に来たのかよ……
呆れて物が言えない植物オタクめ。
筆者が一度は行ってみたい世界遺産の上位に入るロシアの木造教会を紹介する回でした。
本日あと2話投稿予定です。
新作【ゴブリンスレイヤー】ゴブタク【風間拓斗の苦悩】の方も宜しくです。
読んで貰えて感謝です。