名前が……
名前が……主人公より……
自由交易都市を出て、20分程歩いた所にあるスラム街と言っても良いくらいの、バラックのような建物が雑多に並んでる場所まで土精人さん二人と一緒に歩いてきた。
歩く途中で、右腕の無い理由を聞いたんだけど、この二人欲しいです。
「お二人は、ご兄弟でしょうか?それとも兄弟弟子でしょうか?」
少し背の高い土精人さんがドルト兄さんと呼んで居たのが気になって聞いてみた。
「血の繋がった兄弟でもありますが、兄弟弟子でもあります。」
答えてくれたたのはゴッペさん、ちゃんとした名前はゴスペルさんらしい。歌が上手そうな名前だな。
「あんたは、利き手の無いドワーフでも雇ってくれるのか?ワシら二人合わせても一人前の仕事も出来んのだが。」
うん、大丈夫。聖域に行ったら治すから、ガンモが。
「大丈夫ですよ。そんなに仕事を詰め込む事もありませんし、お二人が拒否するのなら、サボっていても構いませんから。」
変わった人間だのうなんて、声に出てないけど表情で少し分かる……
「お二人の利き手の無い理由を教えて貰えませんか?話したく無ければ構いませんが。」
酒も飲まずに話すような事じゃ無いが、家までもう少し時間が掛かるからと話してくれた。
「12年前にな、大きな戦争があったんじゃよ。」
ふむふむ……
「その少し前に、鍛冶仕事の出来るドワーフ全員に武器を作れと国から命令書が回ってきてな。」
「ドルト兄さんとワシ、二人とも断ったんだよ。」
「ワシらは武器は作らんと若い時に決めたからの。」
「武器等は、お作りになられないのですね。覚えました。」
土精人さんの歩幅に合わせて歩いているから、のんびりだな。
「そしたらこれじゃ。スパーンと切られちまった。」
右肘の少し上を左手を手刀型にして切る仕草をするドルトさん、本名はドルトムントさん……かっこいい名前じゃないか。フットボールが上手そうだな。
「見せしめと言う奴じゃな。それから鍛冶仕事の出来るドワーフ総出で武器作りじゃよ、他国の同族を殺すとも分からずにのう。」
この二人、息がピッタリだな。兄が話して弟が補足する。弟が話して兄が補足する。
ボケとツッコミが激しく入れ替わる芸人さんが思い出される。
家に着くまでに、色々聞いたけど。
二人共、子供は独立していて違う国に住んでいるとの事だ。
親は二人とも既にお亡くなりなってるらしい。
どちら共既婚者で、奥さんと二人暮しらしい。
ドルトさんの奥さんが、ふいごを使って火力の調整をしてくれてたから鍛冶仕事が出来てたけど、肺をやられて、今は寝たきりになっているらしい。
ゴッペさんの奥さんは、毎日木工ギルドから依頼されてる農具の柄を作る作業と家事に追われて、ここ数日体調を崩して寝ているらしい。
「ワシら二人とも武器じゃ無ければどんな物でも作らせて貰いたい。」
「ワガママかも知れんが、これだけは譲れんのじゃ。」
もちろん大丈夫ですとも。任せなさい。
なんで武器を作らなくなったかの理由を聞いたからな。
この二人と二人の奥さん、合わせて四人。
ちょうど欲しかった人数だし、聖域に行けば治るし若返るし、ベジタリアンな土精人さん、見つけた!
何としても確保するぞ。
アカペラで唄うのが上手そうなのと、フットボールが上手そうな名前……
主人公よりかっこいい名前かもしれない。
次回は、有無を言わさず聖域に連れて帰ります。
読んで貰えて感謝です。