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第30話 監禁犯の、生まれた日


 朝になり、カーテンの隙間から零れる陽光で目を覚ます。

 俺の上に誰も乗っていないことを確認してリビングへ顔を出すと、まだ誰も起きていなかった。


(昨日は散々だったし、無理もないな……)


 俺は顔を洗って身支度を済ませると、キッチンで朝食のメニューを吟味する。


「今日からバイトが始まるから、さっと食べて行けるものにしよう」


 俺は三人分の食パンにバターを塗ってトースターに入れると、コーヒーメーカーのスイッチを入れた。

 しばらくするとこんがりとしたいい匂いがリビングに充満し、匂いにつられて胃がもそもそと活動を始める。そして、咲月の部屋のドアが勢いよく開いた。


 ばたばたばたっ――

 ジャラジャラジャラッ……!


「哲也君!?これは一体どういうことなの!?」


 ぱたぱた――

 ジャラジャラ……


「えへへ……哲也君がこういうプレイをご所望なら、それもやぶさかではないですけども。ふふ……」


「ふたりとも、おはよう」

「お、おは――」

「おはよ?」


「トーストできるから、座ってな。それより、顔は洗ったのか?」

「まだ、だけど……」

「それもそうだね、まずは身支度を――」


 いたって平静な俺のペースに流されて洗面台へ向かうふたり。

 その間にテーブルに朝食を並べていく。


 三人食卓に座ったところで俺達は手を合わせた。


「「「いただきます」」」


「……って!そうじゃないでしょう!?説明してよ哲也君!」


「なんだ咲月。朝からテンション高いな?低血圧とか言ってなかったか?」

「血圧低くしてる場合じゃない!これよこれ!どういうつもり!?」


 そう言って、咲月は足首をジャラジャラと振った。

 俺はそのまま受け応える。


「どうもこうも、『外』は危ないだろ?これ以上ふたりを悲しませないためにも、ずっと『(ウチ)』にいてもらうことにしたんだよ」


「「……!?」」


「えっ、哲也君それひょっとしてガチなやつ?」

「ああ。ガチもガチ。俺、今日から鬼のようにバイト入れたから。いくら咲夜が投資とマネーゲームで稼げるって言っても、咲月は出られなくなるし、俺も家計を支えるよ」


「「…………」」


「ん。ごちそうさま」


 俺は手を合わせると空になった食器を片付けてリュックを手にする。


「じゃあ、行ってきます」


 さっさと出ていこうとする俺の背に、ふたりが声をかける。


「「待ってよ!!」」


 ジャラジャラジャラッ……!


「ん……?」


「哲也君どうしちゃったの!?おかしいよ!?」

「こんなことして、『外は危険』って!限度ってものがあるでしょう!?」


「朝から騒いだらご近所迷惑だぞ?心配しなくても鎖の長さは完璧だし、日常生活に支障はない。偏道のとこから拝借した分の足枷にも緩衝材(クッション)が貼ってあるから、怪我する心配も無い。ただ――」


「「ただ――?」」


「マンションのこの一室からは、出られない」


「「…………」」


「工具も玄関ギリギリの上の戸棚にしまってあるから、手を伸ばしても届かない」

「「…………」」


「じゃ、夕方に俺が帰るまで仲良くしてるんだぞ?」

「哲也君、ちょっと待――」


 ――ちゅ。


「行ってらっしゃいのちゅーしに来てくれたんだろ?咲夜?」

「――っ!?」

「たまには自分からするのも悪くないな。うん。行ってきます」


 バタンッ…………カチャリ。


「な、なに今の……」

「哲也君が……壊れた……」


 ふたりのその声は、ドアの向こうから俺に届くことは無かった。

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