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奴隷拳闘士の下克上  作者: ためため
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第一章 第九節 悪意

【第一章 第九節 悪意」

 結界が解かれ俺とガイードは外で待つリアーナの元に向かった。

 リアーナもうれしそうにこちらに駆けてきた。


 リアーナ「スバルさんすごい!ガイードさんも!」

 ガイード「俺も驚いたぜ!いったい何があったんだ!?」


 俺は試合のことを思い出していた。



 *



 数分前―――


 スバル「すぅ~~~はぁ~~~」


 俺は大きく深呼吸をしてフライング気味にこちらに走り出したガリスン弟から目を離し、ガイードに目を向けた。

 合流を諦めたガイードはガリスン兄に突っ込んでいった。なるべく早く相手を倒してこちらと合流しとうと考えているんだろう。


 スバル(俺が足手まといになるわけにはいかないな・・・)


 試合が始まってもなお、俺は恐ろしい程、平常心を保っていた。

 ガリスン弟は自身の射程距離に入るとこちらに向かって剣を振り上げた。


 ガリスン弟「ヒャハハハ!ビビッて体が動かないか!?大人しくそこで寝てやがれ!」


 俺は大振りしてくるガリスン弟に対して、まるで練習の一環のようにスッと上段突きを放った。


 ガリスン弟「おぶぁ・・・」


 ガリスン弟が振り下ろした剣は俺を外れ地面にたたきつけられた。

 そして、俺のはなった突きはガリスン弟のアゴを砕き、ガリスン弟はそのままドサリと倒れた。



 *



 俺たちは選手に用意されていた控室に来ていた。

 そして俺は採石場で過ごした2週間のことをガイードとリアーナに説明した。


 ガイード「な、そんなことが!?」

 リアーナ「ひどい・・・」

 スバル「でも俺は採石場に行ってよかったと思ってる」

 ガイード「結果的にはそうだな!今のお前だったら予選の相手はもはや怖くない!」

 リアーナ「で、でも・・・私のせいで・・・」


 リアーナは俺がひどい目にあったのは自分のせいだと自身を責めていた。


 スバル「いや、むしろリアーナのおかげだ。オルドに出会ったおかげでこの国や俺に起こったことがわかったんだからな」


 そういって俺はリアーナの頭を優しくなでた。


 リアーナ「ふぁ!よ、よかった・・・」


 リアーナは嬉しそうにはにかんだ。



 *



 その後、一回戦でガリスン兄弟に圧勝した俺たちは二回戦以降の相手は敵ではなかった。

 もともとこの国の中でもかなり強い部類に入るガイードと、一回戦でガリスン弟を一撃で沈めた俺に相手は必要以上に委縮し、降参する選手が続出した。


 準決勝もあっさり勝ち上がることができ、体力をかなり温存して決勝戦に挑むことができた。

 俺たちは決勝戦が始まるまでの間、食堂で休憩していた。

 久々の食堂の食事は採石場で食べた食事の何倍もうまく感じた。


 予選が行われる日は選手とその関係者に無償で食事がふるまわれるため、俺の隣でリアーナもおいしそうに食事をほおばっている。


 ガイード「しっかり喰っておけよ!採石場ではまともな飯も出なかったんだろう!?」

 スバル「あぁ、でも決勝戦もあるしな。ほどほどにしておくよ」


 満腹すぎて動けなくなったら元も子もない。


 ガイード「ガハハハ!一回戦のあのスバルを見て立ち向かってくるやつがいるかね!?」

 リアーナ「うん、二人ともすごく強いし、きっと大丈夫・・・!」


 二人が持ち上げてくれるが俺の中に油断はなかった。



 *



 食堂でゆっくりしていると、外から歓声が聞こえた。


 ガイード「決着がついたようだな」


 俺たちは対戦相手を見るために食堂を後にして中央広場に向かった。

 人ごみに近づくとガイードが観客の一人にどちらが勝ったのか訪ねた。

 しかし、俺は兵士の一人が観客の輪の外にいた審判に近づき、話をしていることが気になっていた。


 スバル(何を話しているんだ・・・)


 俺が審判たちに近づこうとするとリアーナが俺の手を掴み軽く引っ張った。


 リアーナ「ガイードさんが戻ってきたよ!」

 ガイード「スバル!対戦相手のこと聞いてきたぜ!俺たちツイてるぞ!さっきの試合、かなりの泥仕合だったらしく勝った奴らもかなり消耗しているみたいだ!」


 リアーナ「じゃあ!」

 ガイード「あぁ!今の俺達なら十分に勝機はある!」


 俺達に勝利ムードの空気が流れる。


 スバル「でも油断せずに行こう!あと1つ勝てば本選に出れるんだからな!」


 俺達3人は顔を見合わせて、うんうんと頷いた。

 俺達は名前を呼ばれるのを待っていると審判が広場中央に立った。


 審判「ただいまの準決勝二組目の戦いにより選手の消耗が激しいため、決勝戦は翌日の昼とする!」


 大会が二日にわたって行われることで観客から大きな歓声があがった。

 観客は喜んでいるようだが俺達は何だか肩透かしされたような気持ちだった。


 ガイード「まぁ、いいじゃないか!1日で回復できるとも思えないし、俺達も明日万全の状態で望むことができるしな!」


 こうして俺とガイードは予選大会1日目を無事に乗り越えることができた。



 *



 俺達3人はガイードと俺の装備を戻すために宿舎にもどってきていた。


 ガイード「夕飯までまだ時間はあるし、今後のことを話しておこう。嬢ちゃんもよければ聞いてくれ」


 うんとリアーナはうなずくと俺の隣に座った。


 ガイード「次の決勝に勝てば一か月後、俺とスバルはここから二つ上の階層中流街にあるコロシアムで本選がある」

 ガイード「そして、本選がおこなわれる間は奴隷街を離れることになる」


 それを聞いてリアーナがしゅんとしてしまった。

 その様子を見てガイードが慌てて説明した。


 ガイード「嬢ちゃん心配するな。本選に出るメンバーには1人関係者をつれていくことができる。そこで俺たちの関係者として嬢ちゃんも連れていく」

 スバル「おぉ!そんなことが!」


 俺とリアーナは顔を見合わせた。


 リアーナ「で、でもいいの?私だと二人について行っても何も役に立てない・・・」

 ガイード「そんなことはねぇ。嬢ちゃんは俺たちに定期的に薬草を持ってきてくれたからな。立派な俺たちのパーティーの一員だ!」


 ガイードの言葉を聞いてリアーナ照れて下を向いたが、顔は嬉しそうにほほ笑んでいた。


 スバル「本選に上がるためにも明日の決勝、きっちり取らないとな!」


 ガイードはあぁというと俺と拳を合わせた。



 *



 翌朝、俺はガイードよりも早く目覚め、習慣となっていた瞑想を行っていた。

 瞑想をしながら昨日の試合を反芻し、イメージトレーニングを行っていた。

 しばらくして、ガイードが目を覚まし支度を行い、リアーナと合流するため食堂へ向かった。


 食堂で朝食を済ませ、昼の試合まで時間を潰すことにした。

 そして昼頃に俺たちは中央広場に向かった。

 すると観客がザワザワと騒いでいた。


 ガイード「おい、何があったんだ?」

 観客「あぁ、あんたか。あんた達の対戦相手がまだ来てないんだとよ。決勝戦どうなるんだろうな」


 昨日かなり消耗していると言っていたからな。

 一日でどうにかなる状態じゃなかったのかもしれないな。


 ガイード「こりゃもしかして不戦勝かもな」


 俺たちの中に弛緩した空気が流れる。

 しばらくして、審判の男が広場中央に立ち、状況を説明した。


 審判「え~今日の決勝でガイード、スバル組と戦うはずだった選手は今日まともに戦えることができる状態ではないとのことで棄権することになった!」


 それを聞いて観客からブーイングが起こる。

 審判がブーイングを制して説明を続ける。


 審判「しかし、せっかくの決勝戦が不戦勝では興が削がれるというもの。そこで決勝戦の相手はこちらで用意させてもらった!」


 それを聞いて歓声が沸き起こる。

 しかし、俺は何だか嫌な予感がしていた。

 昨日の審判と兵士が話をしているのを思い出したからだ。


 スバル「ガイード・・・」

 ガイード「あぁ、まぁ仕方ねーな。楽に上に上がることはできないってことだ」


 ガイードも俺の様子を見て目つきが鋭くなった。



 *



 対戦相手の準備が整ったようで観客が騒めき始めた。

 そして再び審判が広場中央に立ち選手の呼び出しを行った。


 審判「ガイード、スバル組前へ!」


 俺たちの名前が呼ばれると歓声が上がった。

 ガイード、リアーナと共に観客をかき分け前に出ると、選手はおらず大きな檻が立ち位置に設置してあった。


 スバル「ガイード、あれ・・・」


 俺の嫌な予感はどうやらあたったようだ。


 リアーナ「ス、スバルさん」


 リアーナも気が付いたのか心配そうにこちらを見る。


 スバル「リアーナ大丈夫だ。応援しててくれな」


 そういうと頭にポンっと手を置くとガイードと共に広場中央に向かった。

 中央で審判に昨日と同じ説明を受けて、俺たちが下がろうとすると審判もなぜか観客のほうに向かった。

 そして先日同様に、結界が張られたが、審判は結界の外に立ち。スタートの合図をした。


 審判「決勝戦、始めぇっ!」


 審判の開始の合図に呼応するかのように檻の鍵がバツンと音を立てて中から子供の大きさ位の魔物が出てきた。


 ガイード「ゴブリン!?アイツら魔物と戦わせる気か!」


 ゴブリン、ゲームやマンガでは何度も目にしたモンスターだ。

 しかし、今目の前にいる醜悪な小鬼は俺たちと違い鉄の装備を身に着けている。

 さらにあの尖った歯、噛みつかれてしまったらそれこそ死んでしまうかもしれない。


 俺が動揺していると後ろからクスクスと笑い声が聞こえた。

 後ろを振り返ってみると結界を張っている魔導士の一人がこちらを見てニヤニヤと笑っていた。


 魔導士「無能者め、思い知るがいい」

 スバル「な、なに・・・?」


 もしかして・・・これは俺を潰すための・・・?


 スバル(この国の連中はどこまでも俺を・・・)

 ガイード「スバル!しっかりしろ!来るぞ!!」


 ガイードの声に俺は慌てて態勢を立て直し、三度さらされる悪意と対峙することとなった。

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