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奴隷拳闘士の下克上  作者: ためため
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第一章 第八節 第一歩の始まり

【第一章 第八節 第一歩の始まり」

 翌日、俺は周りの囚人より早く起き、配膳されていた朝食を手早く食べ、昨日同様に瞑想を始めた。


 スバル(ただ、ここを出るだけではダメだ・・・!)


 予選前日までここに収監されるなら、ここでできることを考えなければ・・・少しでもレベルアップするためにも。

 深く集中していた為、また時がたつのを忘れていたが先に足かせをつけていたため、今日は水を浴びせられることはなかった。


 そして、この日から俺はオルドと一緒に作業をこなすことにした。

 オルドにこの世界の基本的なこと、俺がこの世界にきて知らされていない情報を教えてもらう代わりに、オルドの作業をバレない程度に肩代わりした。


 俺は考え方を変え、奴隷街にいた時のようにここの作業も訓練だと思うようにした。

 そして牢屋に戻されてからは就寝時間まで型の訓練やガイードととの訓練を思い出しイメージトレーニングに努めた。

 もちろん少しでも体力を落とさないため出された食事はきっちりと食べる。



 *



 そうして採石場に連れてこられ1週間ほどが過ぎた。

 食事が少なく、重労働をこなしているため体重は落ちて体の線が細くなっていっているが、感覚は研ぎ澄まされているのを感じていた。


 オルドにも雰囲気が変わったと言われた。

 多分、俺が明確に目標を見つけたからだと思う。

 ソフィアに一矢報いる。それまではこんなところで潰れるわけにはいかなかった。



 *



 そしてさらに1週間、最終日の夜を迎えた。


 オルド「明日で奴隷街に戻れるな。今のお主のたたずまい、ここに来たばかりの時とか比べ物にならない。これなら戻ってもきっと大丈夫じゃろう」

 オルド「ワシも・・・ここで後悔しながら朽ちるのみかと思っておったが、お主が・・・お主が赦してくれたおかげでワシも心置きなく・・・」


 オルドも何かを決意したようだった。


 スバル「オルド・・・まさか死ぬなんて言わないよな」

 オルド「・・・・・・」

 スバル「生きるんだ。オルド、生きて罪を償うんだ」

 オルド「し、しかし・・・ワシにはもう・・・」

 スバル「俺がきっと何とかして見せる。だから生きてくれ・・・」

 オルド「わかった・・・何とかふんばってみよう・・・」


 俺はオルドの言葉を聞いて安心して眠ることにした。

 朝、予選当日、俺はいつもの通り早めに起き、与えられた食事をとり、看守が来るまで瞑想していた。

 看守の気配を感じ俺はすっと目を開けた。


 看守「出ろ」


 俺は看守の言うことに素直に応じ、外に止めてある檻付きの馬車に向かった。

 オルドの部屋の前を通るとき、チラリとオルドのほうに顔を向けるとオルドもこちらを見ていた。

 俺はコクリと小さく頷くとオルドも頷き返した。

 そして馬車の檻の中に入って、俺は奴隷街に向かった。



 *



 ガイード「スバルはまだか・・・もうすぐ1回戦が始まっちまうぜ」


 ガイードとリアーナは、奴隷街の中央広場付近でそわそわしていた。

 もう少しで1回戦が始まってしまうのにスバルがまだ到着していなかったためだ。

 タッグマッチのコロシアムは予選でもそのルールが適用される。パートナーがいない場合は一人で戦うことになり圧倒的に不利なってしまうのだ。


 ガイード「このままだと1回戦がはじまっちまう・・・」

 リアーナ「そ、そんな・・・」


 二人ともヤキモキしていると馬車の音が聞こえた。


 ガイード「来たか!」


 檻付きの馬車は中央広場の近くに止まり、馬から降りた看守が後ろの檻の鍵を開けてスバルを外に出した。

 ガイードとリアーナが奴隷街に戻ってきたスバルに駆け寄る。


 ガイード「スバル!大丈夫か、ずいぶん痩せちまったな・・・」

 リアーナ「スバルさん・・・」

 スバル「ガイード、リアーナ心配かけてごめん。でも大丈夫だ」


 俺は力強く言った。


 ガイード「スバル・・・お前いったい・・・」


 ガイードはスバルに起こった変化を敏感に感じ取った。


 スバル「その話はあとだ。予選の準備をしないと・・・!」

 ガイード「あ、あぁ!そうだな。お前の装備を用意しておいた。大したものじゃないがないよりかはましだと思うぜ」


 ガイードは担いでいた袋をこちらに渡した。

 中には革製の防具一式と木製のヘッドギア、拳部分に金属の板が張り付けられたグローブが入っていた。


 俺はガイードに手伝ってもらい。

 ガイードが用意してくれた装備を装着した。


 ガイード「おぉ、似合ってるじゃねーか!」

 リアーナ「うん!かっこいい」


 コスプレなどしたことない俺は初めて防具をつけたが二人に褒められて少し恥ずかしくなった。


 審判「次、ガイード・スバル組 対 ガリスン兄弟」


 自身の名前を呼ばれ俺は気を引き締めなおした。

 しかし、ガイードは浮かない顔をしていた。


 スバル「ガイード、どうした?」


 広場の中央に歩きながらガイードに聞いてみた。


 ガイード「スバル、これはやっかいだぞ。ガリスン兄弟・・・こちらの奴隷街の中でもかなり強敵だぞ」

 ガイード「しかもあいつらは人を殺した経験がある。そして手段を択ばない・・・俺はともかくお前には荷が重いかもしれん・・・」

 ガイード「とにかく、2対1の状況に持ち込み確実に一人ずつ潰していくんだ。わかったな。」


 俺はガイードの説明に静かにうなずいた。

 奴隷街の円形の中央広場には大勢の人間が集まっていた。

 その中央には予選の審判を行う男が一人立った。

 そして、スバル達と対戦相手のガリスン兄弟が中央に集まりルールの説明を受けていた。


 審判「勝敗は相手を気絶、または降参させること。また魔法の使用は禁止だ。感知魔法を展開しているから使用が認められた段階で反則負けとなる。」

 ガリスン弟「魔法禁止?そもそもそこの無能者は魔法なんぞ使えんだろう!ヒャヒャヒャ!なぁ兄者」

 ガリスン兄「ガハハ!そうだな!しかもなんだその貧相な体は!宿舎で横になっていた方がいいんじゃないか?」


 ガリスン兄弟が挑発してくる。


 審判「こら!貴様たち、私語はやめろ!それぞれ持ち場につけ!」


 そういうと俺たちとガリスン兄弟は持ち場につくために下がった。


 ガイード「気にするな。訓練を思い出すんだ。」

 スバル「大丈夫だよ」


 俺の心は乱れなかった。

 恐ろしく平常心を保っていた。


 ガリスン兄「あの無能者、戦いの経験もないうえに今朝まで採石場にいたらしいぞ。クククッ」

 ガリスン弟「なるほど、じゃあ俺があの無能者を・・・」

 ガリスン兄「あぁ・・・この試合もらったな。ヒッヒッヒ」


 中央広場の四隅には魔導士が立ち、何やら詠唱を唱えた。

 するとドーム状の結界が張られ逃げられないように俺たち参加者を閉じ込められた。


 スバル(観客に被害が及ばないようにもしているんだろうんな・・・)


 そして俺を含めた参加者4人はドーム内の四隅にそれぞれ立った。

 どうやらお互いが離れた状態でスタートするらしい。


 審判「両者準備はいいな!」


 そういうと審判は俺たちとガリスン兄弟を交互に確認した。


 審判「はー」

 ガリスン兄弟「ヒャッハー!!!!」

 審判「じめ!!!!」


 ガリスン兄弟は審判が開始の合図を言い切る前にそれぞれ正面にいる対戦相手、ガイードとスバルに向かって突っ込んできた。


 ガイード「な、なに!?」


 俺たちはガリスン兄弟のフライングに対応が遅れたがそのまま予選は開始された。


 ガイード(くっ!まずい、今からでは間に合わない!こうなったら・・・!)


 ガイードは瞬時に状況を判断し、正面から向かってくるガリスン兄に突っ込んだ。


 ガイード(俺が真っ先にこいつを倒し、スバルと合流する・・・!頼むスバル持ちこたえてくれ!)


 ガイードとガリスン兄の剣がぶつかり合い音を立てる。

 それを見て周囲の観客が歓声を上げた。


 ガリスン兄「ガイードぉぉ、聞いてるぜぇ。アイツは戦闘経験もないうえに、今日まで採石場送りでボロボロなんだってなぁ!?」

 ガイード「くっ!」

 ガリスン兄「弟がアイツを始末するまで、お前は俺に付き合ってもらうぜ!ヒャハハハ!」

 ガイード「くそ!邪魔するんじゃねぇ!」


 ガイードは剣を振り払ったがガリスン兄は後ろに軽く飛び距離をとった。

 あくまでも弟がスバルを倒すまで時間稼ぎをするつもりらしい。

 するとひと際大きな歓声が上がり、ガイードもガリスン兄もそれに体がビクっと反応した。


 ガリスン兄「よし!弟よ!やったか!」


 勝ちを確信してガリスン兄はスバルとガリスン弟のほうに目をやった。

 しかし、ガリスン弟は膝から崩れ落ちるようにドサリとその場に倒れた。

 そしてガリスン弟を倒したスバルはガリスン兄のほうを見るとニヤリと笑った。


 ガリスン兄「な、なんだと!?アイツはもうボロボロのはず――」


 ドガァ!


 動揺し、狼狽えたガリスン兄にガイードの強烈な一撃が入った。

 ガリスン兄はガイードの強烈な一撃を受け数メートル吹き飛びピクリとも動かなくなった。


 審判「あ・・・な・・・?しょ、勝者!ガイード・スバル組!」


 一瞬で勝負がつき、審判もあっけにとられていたが勝者をコールした。

 コールを聞き、会場はわれんばかりの歓声に包まれた。

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