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奴隷拳闘士の下克上  作者: ためため
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第一章 第二十三節 決着

【第一章 第二十三節 決着】

 俺は再びベッドの上で目覚めた。


 スバル「・・・・・・またこのパターンか・・・」

 ロロミア「スバル様!よかった・・・」


 部屋にはロロミアがいて俺が目が覚めたことにいち早く気が付いてくれた。


 スバル「ロロ・・・俺はどれくらい寝ていた?」


 力を開放してからの記憶がない、あの化け物を倒せたのか心配だった。


 ロロミア「大丈夫です!決勝が終わってそれほど時間は立っていません!」

 スバル「俺たちは・・・勝ったのか?」

 ロロミア「・・・は、はい!スバル様とガイード様は見事、勝利なさいました!」


 ロロは少し涙ぐんでいた。


 スバル「そうか・・・よかった・・・」


 カッコつけた手前、負けていたらどうしようと内心不安だったがほっとした。


 ロロミア「二人共もうすぐ戻ってくると思いますよ」

 スバル「ガイードの奴、大丈夫なのか?あいつもかなりダメージ受けていたと思うが・・・」

 ロロミア「そのはずですが・・・回復魔法を受けられたらすぐに食事にいかれました・・・」


 スバル「あいつも化物だな・・・」

 ロロミア「ふふ、そうですね」

 スバル「手当はロロがしてくれたのか?すまないな・・・」


 ロロミア「いえ、ほとんどはリアーナちゃんが、とても心配していたのでちゃんと安心させてあげてくださいね」

 スバル「あぁ・・・リアーナが・・・」


 後で謝っておかないとな。


 ロロミア「スバル様、起きれますか?しばらくした後、表彰があります」


 ロロが真剣な表情で聞いてきた。ロロもわかっているのだ、決勝戦以上に重要なのはこの後の表彰式だということが。


 スバル(ロロは俺が何をしようとしているのかわかっているようだな・・・)


 スバル「あぁ、大丈夫だ。これからが本番みたいなものだからな」


 その後、すぐリアーナとガイードが部屋に戻ってきた。

 部屋に戻るなり、泣きながらリアーナは俺に抱きついてきた。

 また心配させてしまったようだ。


 スバル「リアーナ、ごめんな。また心配かけた・・・」

 リアーナ「ううん、帰ってきてくれたから・・・」

 ガイード「ったく、無茶しやがって!」


 ガイードはそういうと俺の頭をわしゃわしゃ撫でた。


 スバル「ちょ、やめろって!」

 ガイード「ガハハハッ!それだけ元気がありゃ大丈夫そうだな!」


 医務室で俺たちが賑わっていると一人の兵士が俺とガイードを呼びに来た。


 兵士「スバルとガイードはいるか?まもなく表彰式だ。二人とも準備をしろ」


 兵士に呼ばれ俺たちは準備を行うが俺の装備は決勝戦で壊れてしまったらしいのでシエナさんが用意してくれた予備の装備を装着して武道場に向かった。

 入場ゲートに近づくにつれて大きな歓声が聞こえてきた。


 兵士「案内があるまで、ここで待て」


 入場ゲート付近にいた兵士に促される。


 ガイード「やっとここまで来たな・・・」

 スバル「あぁ・・・だが、ここが本当の正念場だ」


 ここで失敗すると今までの苦労が全て無駄になる・・・俺は決勝戦以上に緊張していた。



 *



 コロシアム全体が決勝戦で化け物を倒した二人の登場を待ち望んでいた。

 スバルの攻撃によりえぐれた武道場が修復され、デミトロが登場すると歓声が上がる。


 デミトロ「皆様、大変お待たせしました!今回の大会はイレギュラーの連続!しかし、それすらも乗り越えたスバルとガイードコンビ!!」

 デミトロ「これほどまでの激闘、衝撃・・・私も長くコロシアムヲ見てきましたがこれほどまでにドラマチックな結末を見たことはありません!」

 デミトロ「私同様、この場の皆様は伝説を目の当たりにしたのです!!」


 デミトロの口上に会場がヒートアップする。


 デミトロ「さぁ熾烈な戦いを勝ち抜いた勇者を皆で迎えましょう!!」


 会場が歓声につつまれ、会場全体がスバルとガイードを讃えた。



 *



 デミトロの呼び出しに合わせて俺たちの目の前の入場ゲートが開いた。


 ガイード「さぁ、ブチかましてやれ。スバル」

 スバル「あぁ・・・!」


 俺とガイードは場内へ足を進めた。

 割れんばかりの歓声、俺とガイードを呼ぶ声が360度全ての方向から聞こえてくる。

 あれだけ罵声を浴びせられた時を思うと今の状況が嘘のようだった。


 ガイード「スバル、こういうときは観客の声に応えてやるんだ」


 ガイードのアドバイスに俺は観客に向けて手を挙げた。

 それを見た観客からさらなる歓声があがり、俺は体が熱くなるのを感じた。


 スバル(これだ・・・この力、熱、うねり。これがあれば行ける・・・!)


 俺とガイードが場内に設けられた舞台にあがった。

 やまない歓声にバロン王がすっと手を挙げて制止すると会場がスッと静かになる。

 会場が静まり返るとバロン王が玉座から立ち上がり口を開く。


 バロン王「・・・ガイード、スバルよ。此度の戦いぶり誠に大義であった。」


 バロン王は不機嫌そうに心にもない事を言っている。

 ふん、いい気味だ。


 バロン王「優勝したそなたたちは奴隷街の人間だったな。優勝トロフィー、優勝賞金とともにそなたたち二人と関係者一名を恩赦として上の階層への移住を認めよう」


 バロン王の言葉に歓声が上がり、両サイドに立っていた兵士が俺とガイードに賞金とトロフィーを渡そうとしてきたその時―――。


 スバル「待て!!」


 唐突な俺の発言に、コロシアムがしんと静まり、トロフィーを俺に手渡そうとしていた兵士の手も止まった。


 バロン王「ぬ・・・スバルタスク・・・何だ」

 スバル「恩赦を受けるのは、ガイードとリアーナ、そしてもう一人の関係者のオルドだ」

 バロン王「な、なに!?オルドだと・・・い、いやそれよりも。貴様は今のままでいいというのか!?」


 俺の発言に会場が騒めく。


 スバル「何を言っているんだ。俺はそもそも不当に奴隷街に連れていかれたんだ。転生者である俺をな!!」


 会場がさらにどよめいた。


 バロン王「な、何をバカなことを言っておる!!貴様が奴隷街に堕ちたのは貴様の罪ゆえ!無能者の分際で我を謀ったためであろう!」

 スバル「なんだって?もう一度言ってみろ!」


 ここで引くわけにはいかない。攻めろ!


 ソフィア「はっ・・・!」


 王の傍でやり取りを聞いていたソフィアは何かに気が付いた。


 ソフィア「いけません!へい―――」

 バロン王「貴様が・・・無能者の貴様が勇者と偽り、我を謀ろうとしたのであろう!!!」


 怒りで我を忘れたバロン王にソフィアの声は届かず、大声でスバルを糾弾した。

 バロン王の声に騒めいていた会場が静まり返る。


 リアーナ「ス、スバルさん・・・」

 ロロミア「大丈夫、ここまでは計画通り・・・」


 入場ゲート付近で様子を見ていたリアーナの肩に優しく手を置きロロミアは安心させるように言った。


 スバル「はは、アハハハハ!!!言った・・・言ったな!」

 バロン王「な、何・・・?」

 ソフィア「くっ・・・」


 スバル「聞いたか!!?みんな!!ここにいるお前たちの王は俺のことを”無能者”だといった!!」


 再び会場が騒めき始めた。


 スバル「だがっ!!!!」

 スバル「だが!俺は使った、魔法を!このコロシアム、場内で!みんなの前で!」

 バロン王「はっ!」


 ここでようやくバロン王そして観客全員が気づいた。

 スバルは決勝戦で使っていたのだ。

 それも通常では使うことができない強力な魔法を、そして勝利したあの化け物相手に


 スバル「お前たちは俺が”無能者なのに勇者と偽り王を謀った”罪で俺を奴隷街に堕とした・・・魔力のあるこの俺をな!!」


 観客「ひ、ひどい・・・」

 観客「そんなことが許されるのか・・・?」


 スバル「ここにもいるはずだ!あの茶番のような裁判を傍聴していた奴が!!」


 会場の騒めきは次第に大きくなり、野次が飛ぶほどの騒ぎになって言った。


 観客「きたねーぞ!」

 観客「恥を知れぇ!!」


 スバル(これだ・・・この観客の熱。これを利用するんだ)


 バロン王「だ、黙れ!黙れ黙れ!!仮に魔力があったとしても窃盗を働いたのは事実であろう!」

 スバル「そんなものは通らない。お前たちは俺が魔力のある勇者に成りすますために服を盗んだと言ったな。だが魔力がそもそもある俺は服を盗む必要なんてないんだ」


 スバル(なんだか・・・前に読んでいたマンガのキャラみたいな口調になってるな・・・)


 ロロミア「それに―」


 いつの間にかロロミアが俺たちの近くに立っていた。


 バロン王「ぬぅ貴様はあの時の宮廷魔導士!何者だ!無礼者めが!」

 ロロミア「大変失礼いたしました。陛下。私は元宮廷魔導士のロロミア・アルバ・アゼルフィート、今はそこにいらっしゃる勇者スバル様の専属魔導士です」


 バロン王「な、なにぃ・・・!」

 ロロミア「話を戻させていただきます。私がその被服店を再度調査した結果、スバル様は窃盗どころか店にすら行っていないことが判明いたしました!」


 バロン王「な、なんだと!ば、バカな!!」

 ロロミア「店長や当日の客に裏取りをおこなったので間違いありません」

 スバル「ロロ・・・いつのまに?いや、どうやって・・・?」

 ロロミア「ふふ、ちょっと強い口調で質問し、お金を積んだら快く協力してくださいました」


 スバル(ロロ・・・実は恐ろしい奴なのか・・・?)


 ロロミア「つまり、スバル様が問われていた罪、その全てが偽り!奴隷街に堕とされたことなどあってはならないのです!!」


 ロロミアの声に会場が一気にヒートアップした。


 観客「国王がそんなことにしてもいいのか!」

 観客「ふざけるな!」

 観客「勇者スバルを奴隷街から出せぇ!」

 観客「そうだ!出せ!」


『出せ!出せ!出せ!出せ!出せ!』


 観客から出せコールが湧き上がった。

 奴隷街の人間が自分に反旗を翻す、観客が自身の敵に回る、そのあり得ない光景にバロン王がキョロキョロと周りを見わたした。


 バロン王「ば、バカな・・・こんな、こんな事が・・・」

 ソフィア「陛下、ここは素直にスバルタスクの要望を受け入れるのがよろしいかと」

 バロン王「なぬ!?なぜワシがヤツの世迷言を聞かねばならぬ!!」


 ソフィア「陛下、ここで陛下の器量を見せねば民の信用を失います」

 バロン王「ぬうぅ・・・ぐうう・・・!」

 スバル「それともまた誰かと戦わせるか?」


 俺はそういうと俺の傍にいる兵士が持っていたトロフィーに手を添えた。


 兵士「えっ・・・?」


 スバル(かなりしんどいけど・・・手にだけ魔力を集中させる・・・)


 俺の手に黒いオーラがまといトロフィーをケーキを潰すように握りつぶした。


 兵士「ひ、ひぃぃ!!」


 兵士はその様子に驚き腰をぬかしてしまった。


 バロン王「ぐ・・・わ、わかった・・・ガイード、リアーナ、オルド・・・それにスバルタスクの4名を奴隷街から解放する」


 一瞬の静寂


 うおおおおおおおおおおおお!!!!


 ガイード、ロロミア、リアーナ・・・コロシアム、街中から歓声が上がる。


 スバル「やった・・・やったのか・・・」

 ガイード「あぁ!やったぞ!みんなで出れるんだ!」


 あぁ・・・そうか、やっと。


 俺は歓声の中、天を仰いだ。


 スバル「これで・・・これでようやく」


 俺は今までこの世界で過ごしてきた数か月を思い出した。


 スバル「・・・第一歩か」


 *


 第一章完

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