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奴隷拳闘士の下克上  作者: ためため
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第一章 第二十一節 覚醒

【第一章 第二十一節 覚醒】

 ディディ?「オゴォアァァァァ」

 ガイード「スバル来るぞ!」


 ガイードの声に呼応するかのようにディディはこちらに突進してきた。

 直線的な動きで回避することは簡単だが俺とガイードは分断される形になった。


 ガイード「スバル!このまま挟撃するぞ!こいつを人間と思うな!やられるぞ!」

 スバル「あぁ!わかってる!」

 ガイード「おい!こっちだ!でくの坊!!俺が相手になってやる!」


 ガイードは持っているラウンドシールドを剣でガンガン叩きディディを挑発する。


 ディディ「ゴァァァァ!!!」


 異様に巨大化したディディが繰り出す強烈な拳をガイードは盾で受け止める。


 スバル「おぉぁぁ!!」


 ガイードが攻撃を受け止めたのに合わせ、ディディの脇腹に連打を浴びせる。


 スバル「くっ・・・手ごたえがない・・・!」


 こちらの攻撃を無視しガイードに攻撃をしかけるディディ。


 ガイード「打撃じゃ効果は薄いか・・・」


 ガイードは敵の攻撃を盾でうまくいなし、伸びきった腕に斬撃を加えていく。


 ディディ「ギャアァガァァ!」


 ディディは痛みで腕を押えうめき声をあげるが出血はすぐに止まった。


 ガイード「何だ!?あの再生力は!」

 スバル「これは・・・どう倒せばいいんだ?」

 ロロミア「魔力です!膨大な魔力が彼の体を変異させています!肉体の再生にも魔力は消費されるはずです!攻撃の手を休めないで!」


 関係者席からロロミアが叫んだ。


 スバル「なっ!ロロ!?」


 今まで俺たちとの繋がりを王国側に悟られないように動いていただけに俺は驚いてしまった。


 ソフィア「あの宮廷魔導士は誰だ!?あんな無能者を助けるなんて、つまみ出しなさい!!」


 ソフィアはイライラしたようすで兵士に指示を飛ばす。


 ガイード「ロロの嬢ちゃんも腹をくくったってことだろう。スバル気合入れろ!ここで負けたらあの嬢ちゃんも先はないぞ!!」

 スバル「あぁ!もちろんだ!」


 ガイードは引き続き、ディディの攻撃を受け流しながら腕や胴体に攻撃を浴びせ、俺はガイードの邪魔にならない角度から拳を叩きつける。


 ディディ「ガァァァァ!!」


 思い通り攻撃が当たらずイライラするディディは腕を振り舞わすが単調な攻撃で俺もガイードも距離

 を取ることで簡単にかわすことができた。


 ガイード「こいつぁ時間がかかりそうだな」


 切り付けた傷がすぐに再生してしまうのを見てガイードが愚痴をこぼす。


 スバル「しかし、攻撃し続けるしかない。無敵なヤツなんていないんだ」


 わかってる!とガイードは返事を返すと同時にディディに切りかかろうとした。


 その時


 ディディ「ゴアぁぁぁ!!」


 ディディは両腕を思い切り地面にたたきつけるとディディの周囲の地面が割れ俺もガイードも態勢を崩してしまった。


 スバル「なっ!?」

 ガイード「ぐっ!チィィ!」


 態勢を崩したガイードにディディは容赦なく拳を叩きこむ。


 ガイード「ぬぐぅぅぅ!!」



 踏ん張りの利かないガイードは数メートル吹き飛ばされてしまった。


 スバル「ガイードぉ!!」


 俺は吹き飛ばされたガイードに気を取られてしまった。


 ガイード「ば、バカやろぉ!!前を見ろ!ごふっ!」


 ガイードが口から血を吹きながらこちらに向かって叫んだ。

 しかし、すでに遅かった。


 スバル「ぶぐぬぅぅ!!」


 腕でガードしたもののディディのパンチをもろで受けてしまい、俺はコロシアムの壁にたたきつけられた。

 そのままズルりと地面に倒れ込んでしまった。


 ガイード「ぐっ・・・!ス、スバル・・・くそ!」


 ガイードは何とか立ち上がり武器を構えた。

 ガイードはまだ諦めてはいなかった。



 *



 スバル「ゴフッ!ガ、ガハ・・・うぐ・・・」


 息ができない、口の中が血の味で染まっていく。

 体が動かない。遅れて体中から激痛がやってきた。


 ロロミア「------!!!!」


 聞こえないがロロが何かを叫んでいた。

 俺はロロを見て決勝戦前夜のことを思い出していた。



 *



 決勝戦前夜、俺は武道場でリアーナと別れ自分の部屋に戻ろうとした時、ロロと出くわした。


 ロロミア「スバル様・・・少しよろしいですか」

 スバル「ロロ・・・」


 俺はロロについていき、空き部屋に誰にも気づかれないようにそっと入った。


 スバル「で、話ってなんだ?」


 ロロは思いつめたように少し言いづらそうに俺に言った。


 ロロミア「スバル様、決勝戦・・・ご辞退ください」

 スバル「どうしたんだ急に?」


 ロロが意味もなく提案してくることはないと思い、話を聞くことにした。


 ロロミア「決勝の相手・・・王宮の魔道研究所で強化されたブーステッドマンが相手です」

 スバル「ブーステッドマンってまさか・・・」


 ロロミア「えぇ、初戦で戦った。ヘルシングとドーズ、あの後、調べてみたのですが彼らも魔力強化を施されていました」

 スバル「やはり・・・」


 スバル(あいつら、誰かに与えられたみたいなことを言っていたが・・・)


 ロロミア「彼らも十分強力な魔法を駆使していましたが、決勝戦はあれの比じゃありません・・・」

 スバル「ロロ・・・それでも俺は引くわけにはいかないんだ」


 ロロミア「だったらせめて!あの力を使ってください!でなければ本当に死んでしまう!」

 スバル「しかし・・・あの力は」


 ロロの言う力というのは予選決勝戦で見せた力のことだ。

 ロロが言うには闇の魔力の暴走により起こったものらしいのだが、あの力を使いこなすことにより大きな力を得ることができるらしい。


 俺はコロシアムについてから普通の訓練以外にロロがトレーナーを買って出てあの力を引き出す訓練も行っていた。

 しかし、訓練中に発動させることはできたが何度も暴走してしまい、その度にロロに止めてもらっていた。


 ロロミア「使うことがリスキーなのもわかります。でも死んでしまったら元も子もないんですよ!」

 スバル「・・・・・・」


 俺は予選のときの自分を思い出していた。

 力に飲み込まれていた自分のことを・・・。


 ロロミア「スバル様が不安なのもわかります。これを・・・」


 そういうとロロは俺にネックレスを手渡した。

 銀色のチェーンに黒紫色の宝石が付いていた。


 スバル「これは・・・?」

 ロロミア「これは闇属性魔法の耐性を高めるものです。闇属性の魔力を結晶化した宝石が埋め込まれています」


 スバル「これがあれば力に飲み込まれることがなくなるのか?」

 ロロミア「スバル様の魔力量が測れないため、どれだけ持つかは不明ですが少なくとも予選の時のようなことにはならないはずです」


 スバル「ロロ・・・ありがとう」


 俺はもらったネックレスを首につけ、ロロの手を握ってお礼を言った。


 ロロミア「へぁ!?い、いえ!コ、コホン・・・私もスバル様には何としても勝ってもらわないといけません!この国のためにも・・・」

 スバル「あぁわかった———」



 *



 スバル「ごふっ!がはっ!」


 俺は全身が痛む中、ロロの方を見た。


 ロロミア「スバル様!力を!魔力を解放してください!!」


 ま、魔力・・・

 俺は魔力開放の訓練をしていた時のことを思い出していた。


 ロロミア「スバル様、初めて力が現れた時のことを思い出してみてください。どうして力が発現したのかを」


 あの時はたしか———



 *




 俺は目の前を見た。

 ガイードは立ち上がっていたが先ほど受けたダメージのせいで防戦一方になっていた。


 スバル(こ、このままだと・・・ガイードだけじゃない。ロロミア、オルド・・・リアーナも終わってしまう・・・)

 スバル(思い出せ・・・あの時のことを・・・!)


 予選の出来事がフラッシュバックする怒りで体が熱くなっていくのが分かる。

 体の中心から黒いものが血管を通り頭の先から足の先まで広がっていく感覚。

 その時、俺はすでに立ち上がり、体から痛みは消え去り力が漲っていた。



 *



 ガイード「く!ぬぐ!スバルいつまで寝てやがるんだ!」


 ガァン!バァン!と金属音が闘技場に響き渡る。

 ガイードはディディの強烈なパンチを必死に受けていた。


 ディディ「グルァァァア!!」


 ディディは力任せに拳を叩き続けていた。


 しかし・・・


 ディディ「ゴグァァ!・・・・!?」


 ディディが何かに反応し攻撃の手をピタリと止めた。


 ガイード「ど、どうした?・・・な、これは?!」


 ガイードはディディの不可解な動きが気になったがそれ以上に自身の毛が逆立つのを感じた。

 ガイードも戦うことを忘れディディが見ている方を慌ててみた。


 ガイード「あれは・・・スバルか?」


 ディディにぶっ飛ばされたスバルが立っていたが明らかに様子がおかしい。


 ガイード「スバル、ダメージは・・・?いや、それよりあの力、何だ?あれが話しに聞いていた力なのか・・・?」

 ディディ「ゴァァァァァ!!!」

 ガイード「な!?」


 ディディの咆哮にガイードが戸惑っているとディディはスバルに向かって突進していった。



 *



 スバル「体が軽い・・・意識もはっきりしている。ロロのくれたアクセサリーのおかげか?」


 そう言ってネックレスを見てみると宝石にほとんど目立たないほど小さなヒビが入っていた。


 スバル(これは・・・この宝石が砕けたら俺はまた・・・)


 予選のことがよぎった。


 ディディ「ゴァァァァァ!!!」


 ディディが咆哮し体の筋肉を隆起させ、こちらに向かって突進してくる。


 スバル「ガイードは・・・?」


 ディディの後ろにいたガイードはこちらを驚いた様子で見ていた。


 スバル(よかった、無事のようだ)


 ディディが自身の拳の射程に入ったのか、その巨大な拳を振り上げる。


 スバル(イメージしろ・・・格闘技と同じだ。体重を乗せるイメージで拳に魔力を・・・乗せる!)


 ドォォォオン!!


 巨大な物同士がぶつかった音、ものすごい轟音と衝撃が闘技場に響き渡る。


 リアーナ「きゃぁ!」

 ロロミア「リアーナちゃん大丈夫!?」


 衝撃にリアーナが尻餅をついてしまった。


 ディディ「ゴギャァァァァァァ!!」


 拳を振るった方の腕を押さえ、ディディは悲鳴を上げた。


 バロン王「な!?」

 ソフィア「ば、馬鹿な?!」


 あまりのことにガタリとバロン王は立ち上がり、ソフィアは目の前で起こったことに信じられないと言った表情で闘技場を見つめた。


 観客A「な、何が起こったんだ!?」

 観客B「あの化物の腕が吹っ飛んだぞ!」

 観客C「ま、魔法か!?」


 観客A「ば、馬鹿な!あいつは無能者のはずだろ!?」

 観客C「じゃあどうやってあの化物の腕を吹き飛ばしたんだよ!」

 観客A「そ、それは・・・」


 観客も目の前で起こったことがあまりにも衝撃的すぎて混乱している様子だった。


 バロン王「そ、ソフィアよ!どういうことだ!?」

 ソフィア「陛下!ご安心ください!ゴライアスウォーリアーはあの程度の傷すぐ再生いたします!」

 バロン王「そ、そうか・・・そなたが言うのだ。間違いはないのだろう」


 ソフィア(それにしても、あ奴・・・スバルタスク、奴の魔力はすべて奪ったはず・・・あの力は・・・)


 ディディ「ガァァァァ!!」

 ソフィア「!」


 ディディが全身を強張らせると千切れた腕が再生していく。


 バロン王「フハハハ!もはや無敵ではないか!これであの無能者も終わりじゃ!」


 ソフィア(たしかに魔力を大量に注入したゴライアスウォーリアーの再生力、膂力は圧倒的・・・しかし、あれだけのダメージを回復したとなると・・・)


 ディディ「・・・ニヤァ」


 ディディは再生した自分の腕を見てニタリとした。

 そして自身の腕をつかみ思い切り引っ張り始めた。


 スバル「な、何をしてるんだ?」

 ガイード「!ス、スバル手を止めるな!攻撃しろ!!」

 スバル「えっ?」


 ディディは肥大化している左腕を引きちぎり、その腕を俺に向かって叩きつけてきた。


 スバル「ぬぐぅぁ!」


 何とかガードしたものの体がミシミシと軋む音が聞こえるほどの衝撃が走る。

 俺は数メートル飛ばされるも着地してすぐに臨戦態勢を取る。


 スバル(魔力の効果で痛みはあまりない。しかし、この力を使いすぎるとネックレスの宝石が砕けてしまう)


 俺がディディの方を見ると、ディディは新しく左腕を再生させていた。

 千切れた腕は硬直し、こん棒のようになっていた。


 スバル(再生した腕・・・細くなっている?)


 普通なら死んでもおかしくないほどのダメージで回復力が落ちているのか。


 ガイード「スバルゥ!!」

 スバル「はっ!ガイード?」


 俺はガイードの方を見た。

 ガイードがこちらをみてコクリと頷く。

 ガイードも気が付いたようだ。


 スバル「おぉぉぁあぁああ!!」


 俺はディディに向かって大声で咆哮する。

 それに合わせてガイードはディディに向かって走り出した。

 ガイードが走り出したすぐ後に俺もガイードに向かって走り出した。


 ディディ「ガァァァァ!!!」


 ディディは俺の挑発に呼応するかのように叫び、引きちぎった腕を振り上げた。

 ディディの腕が振り下ろされるよりも前に、ガイードがディディの後ろを通り過ぎざまに膝の裏を切り裂いた。


 膝裏の筋を切られたディディはガクンの仰け反って倒れてしまう。

 仰向けに倒れたディディを見て俺は魔力を足に込めて高く飛び上がった。


 スバル(まるで昔見た特撮ヒーローのようだな・・・)


 何メートルは跳躍しただろうか?俺は小さいころに見ていたヒーローを思い出して口元が緩んだ。

 そのままディディの顔めがけて自然落下していく。

 射程に入った瞬間に腰の回転を利用して足に魔力を込め顔面に向かって強烈な蹴りを入れる。


 リアーナ「黒い・・・流星・・・?」


 ディディに向かって落ちていく黒いオーラをまとったスバルがリアーナには流星に見えた。


 ロロミア「っは!流星・・・ダークネス・・・メテオブレイク」

 リアーナ「えっ?ロロさん・・・?」


 ロロミア「闇属性の魔力を纏い、上空より敵を穿つ姿は黒き流星・・・まさにスバル様オリジナルの魔法・・・!フンスッ!」


 ロロミアがリアーナに顔をぐいっと近づけて興奮気味に説明した。


 リアーナ「えっ!?う、うん。い、いいと思うなぁ」


 リアーナはロロミアの勢いに押されしどろもどろにながら返事を返した。


 ロロミア「はっ!す、すいません!つい・・・スバル様の技が凄くて興奮してしまいました・・・コホン!」


 ロロミアは咳払いして真面目な顔に戻る。


 ロロミア「いくら再生力があっても立て続けにあれだけのダメージ、さらに頭部の消滅・・・」


 頭を失ったディディの巨体が自身に起こったことに気づかず起き上がろうとするが・・・。


 ロロミア「スバル様たちの勝利です!」


 ロロミアの言葉に呼応するように力付きズズンと音を立てて倒れた。


 ガイード「ったくヒヤヒヤさせやがって」

 スバル「それは、お互い様だろ」


 俺はガイードと勝利を確信し、ゴチンと拳を合わせた。

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