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奴隷拳闘士の下克上  作者: ためため
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第一章 第十八節 強敵

【第一章 第十八節 強敵】

 リヴィア「我が名はリヴィア・アインハルト!スバルタスク!この私と勝負をしろ!」


 リヴィアと名乗る女騎士の決闘の申し込みに会場は大きな歓声を上げた。


「決闘だ!」「やれー!」「決闘を受けろー!」「無能者を殺せ!」


 俺は困惑しガイードの方を見た。


 ガイード「厄介なことになったな・・・この決闘、断ると勝てたとしても一生卑怯者扱いされる。奴隷街から出たとしても・・・」


 いい未来は待っていなさそうだな・・・。


 スバル「受けるしかなさそうだな・・・」

 ガイード「仕方ない・・・が、相手は王宮近衛兵だ。今までみたいなゴロツキとは違うぞ。ちゃんとした軍事訓練、魔法訓練を積んでる。女とて強敵だぞ」

 スバル「あぁ・・・」


 問題はそれだけじゃない。


 スバル「仕方ない・・・わかった。受けよう」


 まさか自分より年下の女の子から決闘を申し込まれるとはな・・・。


 リヴィア「ふん!どうやら腰抜けではなかったようだな」


 そういうとリヴィアは腰についた鞘から剣を抜いて構えた。

 俺もそれに合わせて構えを取る。


 リヴィア「貴様・・・馬鹿にしているのか?この私相手に素手で戦うだと?!」

 スバル「これが俺の戦闘スタイルだ。気にするな」

 リヴィア「この無能者め・・・!後悔するなよ!」


 リヴィアはそう言うと間合いを詰め俺に斬りかかってきた。

 俺はリヴィアの攻撃をかわし距離を取る。


 しっかりと訓練を積んでる国の兵士だけあって太刀筋が鋭い。

 気を抜いたらすぐにやられそうだ。

 連続して攻撃してくるリヴィアの攻撃を俺は必死にかわしていく。



 *



 スバルがリヴィアとやらの女騎士の決闘を受け戦闘に入ったが俺の目の前にいる騎士は抜剣もせず二人の戦闘を眺めていた。


 ガイード「お前は戦わないのか?」

 女騎士「アタシ?あぁアタシはいいのさ。お嬢の付き人みたいなもんだからさ。ガイードの旦那が邪魔さえしなければね」


 ガイード「俺のことを知ってるのか?」

 女騎士「そりゃそうさ。下流街出身の叩き上げの戦士。百人隊長まで上り詰めたのに貴族を殴って下に落ちたってね。有名な話しさ」


 ガイード「そーかい。お前は何て名前なんだ?」

 女騎士「アタシは。ニーア・ミア・ローナ。お嬢と同じで王宮近衛兵の一人さ」

 ガイード「ニーアか。それにしてもお前たち、何を企んでいるんだ?」


 ニーア「最初にお嬢が言ってただろ?お嬢は犯罪者しかも無能者はコロシアムに上がって欲しくないんだとさ」

 ガイード「お前は興味なさそうだな」

 ニーア「アタシはお嬢のお守りが役目だからな。どーだっていいさ」


 ガイード「あの娘、ただの近衛兵じゃないってことか」

 ニーア「まぁね。だからガイードの旦那も邪魔しないでくれよ。あんたみたいないい男は斬りたくないんでね」


 ガイード「決闘に手を出すことはしねーさ。しかしあいつをこんなところで死なすことだけは許さねぇ」

 ニーア「あんな無能者のためになんでそこまでできるのかねぇ?アタシには理解できないよ」

 ガイード「あいつは無能者でも国王を騙すような犯罪者でもねぇ」


 ニーア「証拠でもあるのかい?」

 ガイード「ない。俺のカンだ」

 ニーア「ッハ!カンだって!?アッハハハハ!話にならないね!!バカにしてるのか!」


 ニーアがガイードをキッとにらむ。


 ガイード「バカになんてしてねーさ。俺はマジで言ってるんだ」

 ニーア「ッハン!百人隊長、鬼のガイードの目も曇ったもんだね!」

 ガイード「好きに言ってろ」


 ニーア「どの道、あの無能者はここで終わりさ。お嬢は堅物だが実力は本物だからな。見ろ防戦一方じゃないか」

 ガイード「いや・・・あれは攻撃できないんじゃない。攻撃していないんだ」


 ニーア「なんだって?」

 ガイード「あいつのいた世界では戦争なんてなかったらしいしな。女と戦うなんて初めてなんだろう。あいつは優しい奴だからな・・・」

 ニーア「何!?そんな甘ちゃんにお嬢が負けるはずないだろう!」


 ガイード(ニーアの言うとおりだ。スバル、そいつは手を抜いて勝てる相手じゃないぞ)



 *



 リヴィア「貴様!いつまでそうして逃げているつもりだ!卑怯者め!」

 スバル「くっ・・・どうすれば・・・」


 リヴィアの太刀筋が鋭く、また女性を殴ることにためらい俺は攻めあぐねていた。

 そうして5分10分と避け続けていると観客からブーイングが起こり始めてきた。


 観客A「いつまで鬼ごっこしてるんだ!」

 観客B「さっさと戦え!」

 観客C「殺せ!」

 観客D「そうだ!殺せ!」


 殺せ!殺せ!


 会場に広がる殺せコール。

 それは異様な光景だった。


 リアーナ「ス、スバルさん・・・」


 リアーナは周囲の異様な光景に恐怖を覚えていた。


 ロロミア「だ、大丈夫です・・・!リアーナちゃんスバル様ならきっと・・・」


 ロロミアは震えるリアーナの手をギュッと握りコロシアムに目を向けた。


 ニーア「ふぁ~~~あ、いつまでやってんだ」

 ガイード「くっ・・・スバル」

 リヴィア「どこまでも私をコケにするというのか・・・!」


 リヴィアは連続で攻撃を繰り出しながら苛立ちを募らせていく。

 俺もこのままでいいとは思っていない。

 しかし顔を殴るのは・・・。


 スバル(仕方がない・・・!)


 相手の挙動の大きな攻撃を回避し、それに合わせてボディに拳を叩きつける。


 しかし


 リヴィア「貴様、バカか?この魔法銀の鎧を拳で砕けるとでも思っているのか?」


 リヴィアは俺を切り払おうとするが俺はバックジャンプでなんとか避ける。


 スバル(やはり、ボディは効かないか・・・ならば!)


 俺がリヴィアの次の攻撃を警戒しているとリヴィアは剣の切っ先をストンと地面に落とした。


 リヴィア「もういい。やはり貴様が勇者なわけがない。もう終わらせる」

 ニーア「!!お嬢!落ち着け!熱くなるな!」


 リヴィアの体が光始めた。


 スバル(魔法か?)


 俺は詠唱を止めようと間合いを詰めたその時。


 リヴィア「エアロドライアクセル」

 スバル「えっ!?」


 俺はたしかにリヴィアの剣をはじき飛ばそうと手首に拳を放ったが当たった感触がない。


 スバル「ど、どこへ!?」

 ガイード「スバル後ろだ!」


 ガイードの声に反応して振り返った瞬間、ほほに鈍い痛みが走って俺は地面に転がった。


 スバル「う、うぐ・・・たしかに当てたはずなのに」


 口の中に血の味が広がっていく。


 スバル(立たなければ、次の攻撃が・・・!)


 俺は直ぐに立ち上がり、リヴィアのいた方を向いたがすでに姿はなかった。

 そしてすぐに左腕に衝撃が走るいつの間にか回り込まれ剣の腹で腕を殴られていた。


 スバル「ぐぁ!」


 俺は攻撃が来た方にパンチを繰り出すが当たらず、すぐ反対から攻撃を食らう。


 ガイード「あの嬢ちゃん、無詠唱魔導師か!」

 ニーア「あぁ、詠唱を唱えず魔法を発動させる高等技術、あの無能者が仮に魔法が使えたところでお嬢には遠く及ばないってわけ」

 ガイード「スバル・・・」


 その後俺は、数分間リヴィアの攻撃をくらい続け、なぶられ続けた。



 *



 スバル「ぐっ!・・・がっ!」


 もはや公開処刑のようになっている状態に観客も誰も声を上げなくなっていた。


 リアーナ「いや!も、もう!もうやめて!」


 ボコボコにされていく俺を見ていられなくなりリアーナは目を覆った。


 ロロミア「スバル様・・・なぜ・・・何か考えでも・・・?」

 シエナ「リアーナちゃん、辛いのはわかるわ。でも目をそらしちゃダメ!」


 シエナが手で顔をおおうリアーナの肩に手を置いていった。


 リアーナ「で、でもシエナさん私・・・!」

 シエナ「大丈夫よ。あなたのスバルさんはまだ負けてないわ」



 *



 ガイードは腕を組みスバルとリヴィアの戦いを見ていた。


 ニーア「おい、あの無能者、本当に死んじまうぞ。止めるんじゃないのかよ?」

 ガイード「あぁ、まだスバルは立ってるからな」

 ニーア「立ってるって、なぶり殺されるぞ!?」


 ガイード「随分心配してくれるんだな。あのお嬢様が勝ったほうがいいんじゃないのか?」

 ニーア「な!あんな無能者のことは心配なんてしてねーよ!心配なのはお嬢の方だ」

 ガイード「あの魔法か」


 ニーア「あぁ・・・無詠唱魔法は詠唱を省略する分、魔力消費量が段違いで高くなる。あの魔法は自身で魔力カットしない限り発動し続けるタイプの魔法だ。お嬢の魔力量はかなり高いが無限ってわけじゃない。あまり長期戦になると・・・くっ!お嬢、何してる!さっさと決めちまえ!」


 ガイード「なるほどな」

 ニーア「あの無能者に伝えないのかい?」

 ガイード「そんなことしなくてもあいつはこのくらいの逆境乗り越えられる力を持っている」


 ガイード(だよな・・・スバル!)



 *



 リヴィア「いい加減!降参!しなさい!」

 スバル「う!ぐっ!まだ・・・まだ・・・!」

 リヴィア「くっ・・・しぶとい・・・!」


 ガン!ギン!ガッ!何度も攻撃を受け続け俺は少しずつリヴィアの攻撃に慣れてきていた。


 スバル(スピードが早すぎる故に攻撃が直線的になっている。かわすのは難しくともずらして直撃を避けることは・・・!)


 ガッ!ドッ!ガガッ!


 観客A「お、おい。あ、あれ・・・」

 観客B「あぁ・・・攻撃が・・・当たらなくなってきている」


 ガッ!ガガッ!ヒュッ!

 戦いの音がコロシアムにひびく。


 観客C「す、すげぇ!」

 観客A「な、何言ってるんだ!あんな無能者!」

 観客C「い、いやでもよぉ・・・」


 観客D「がんばれ・・・がんばれ!スバル」

 観客A「お、おい!」

 観客C「お、俺もがんばれー!スバル!」


 徐々に会場から沸き上がってくるスバルに対する声援、それは徐々に大きな波になっていった。


 観客「「「「スバル!スバル!スバル!」」」」


 ニーア「な!?」

 ガイード「これは・・・」


 観客からスバルコールが起こる!


 リヴィア「くっ・・・!こんな無能者に・・・!」


 観客のスバルに対する声援はリヴィアをさらに苛立たせた。


 スバル(!・・・ここだ!)


 雑になったリヴィアの突き、その腕を取り俺はそのままリヴィアを背負い投げし、地面に叩きつけた。


 リヴィア「あぐぁ!」


 俺は受身の取れずにすぐに動けずにいたリヴィアの腕を固め身動きが取れない状態にした。


 リヴィア「うぎっ!ぐ・・・お,おのれ・・・!」

 スバル「降参しろ。魔力を消耗している君がこの状態から抜け出せるほどの力があるとは思えない」

 リヴィア「だ、黙れ!貴様如きに降参など!ぐぅ・・・ぐぁぁ」


 そう言いながらリヴィアは俺の関節技から抜けようともがく。

 しかし、完全に決まっている関節技から抜けれるわけはなく痛みによりうめき声を上げる。


 ニーア「あの野郎!お嬢を離し・・・うっ!」

 ガイード「決闘に手出しは無用なんだろう?」


 リヴィアのピンチに飛び出そうとするニーアをガイードが剣で止めた。


 ガイード「無能者だと侮ったあの嬢ちゃんの負けだ。屈服させずに最初の一撃で首をはねるべきだったな」

 ニーア「くっ・・・!」


 スバル「やめろ!君を傷つけたくはない!」

 リヴィア「貴様・・・!どこまで・・・私を・・・!ぐぎぎぎぎ!」


 無理やり関節技を抜けようとするリヴィアの腕がミシミシと音を立てる。


 スバル(まずい・・・!このままだと腕が折れる)


 俺は思わず力を緩めてしまい、リヴィアはその隙に抜け出した。


 リヴィア「フッーフッー!許さん!無能者め・・・!絶対に許さん!!」


 怒りで呼吸が荒くなっているリヴィアがこちらを睨みつける。


 スバル「折れてないとは言え、その腕ではもう戦えないだろう!諦めろ!」

 リヴィア「黙れ!はぁはぁ・・・!お前をこれ以上勝たせるわけにはいかない!」


 残った片腕で剣を構えるリヴィア。


 スバル「この・・・」


 リヴィア「エアロ・・・」


 スバル「わからず屋め!!」


 リヴィア「ドライアクセル!!!」


 ヒュッ


 魔法発動の瞬間、リヴィアの姿が消えた。

 リヴィアが加速し間合いを詰め斬りかかってくる。


 ガッ!ズブ・・・


 しかし、リヴィアの刃はスバルの首をはねる事はなかった。


 スバル「うぐっ・・・あ・・・」

 リヴィア「な、なぜ・・・きゃっ!?」


 リヴィアの剣は首をガードした俺の腕に阻まれていた。

 俺はそのままリヴィアの剣を奪い彼女に刃を向けた。


 スバル「疲弊している上に狙っているところがわかっていれば止めることくらいはできるさ・・・賭けではあったけどな」

 リヴィア「そ、そんな・・・」


 ショックによりガクッと膝から崩れ落ちる。

 ニーア「スバルさん、あんたの勝ちだよ。降参、アタシたちの負けだ」


 ニーアがリヴィアの側に来て肩から外套をかけて言った。


 デミトロ「け・・・決着うぅぅぅぅぅ!!!!」


 ニーアの降参の声にデミトロが決着をつげる声をあげる。

 それに合わせコロシアムでは割れんばかりの歓声があがる。


 ガイード「ギリギリだったな」

 スバル「あ、あぁ。はぁはぁ・・・うぐっ・・・」


 アドレナリンが抑えられたのか、急激に体中に痛みが走る。

 そして、腕からの出血がひどく俺はその場でガクリと膝をついた。


 スバル「大丈夫・・・だいじょうぶだ・・・次の戦いに・・・」


 そして俺はそのまま気を失ってしまった。


 ガイード「スバル!」

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