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奴隷拳闘士の下克上  作者: ためため
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第一章 第十六節 本選一回戦

【第一章 第十六節 本選一回戦】

 西のはずれにある小国ラフィンデル、この国最大の娯楽である剣闘大会の本戦は数万人規模の収容人数があるコロシアムで数日をかけて行われる。

 コロシアムには上流街から下流街数万の国民が観戦に訪れ、奴隷街にも投影魔法で本選を見ることができるため国民全員が待ちに待った一大イベントである。

 さらにラフィンデル国王もコロシアムに訪れるこのイベントは政治的、経済的にも国の重要な興行の一つとなっている。



 *



 剣闘大会開催に伴いラフィンデル中流街は大いに盛り上がっていた。

 コロシアムに続くメインストリートでは多くの出店が並び、多くの人で賑わっていた。

 コロシアム内は当然、満員御礼。

 城内の観客は今か今かと待ちわびていた。


 国王の来賓席の前、コロシアムの観客席の縁のお立ち台に一人の男が立つとひと際大きな歓声が上がる。

 この男はコロシアムでも屈指の人気を誇る実況者である。


 実況者「会場にお越しくださいました皆々様!本日は皆様の待ちに待った闘技大会でーございます!」

 実況者「この度、この素晴らしき闘技大会の実況を務めさせていただきますのはこの私、デミトロが務めさせていただきます!どうか最後までお楽しみいただきますようよろしくお願い申し上げます!」


 デミトロの自己紹介が終わると会場から歓声があがった。


 デミトロ「ありがとうございます!ありがとうございます!」

 デミトロ「今日この日のために、切磋琢磨し、数多の戦士を退けた強者達!血湧き肉躍るその戦いを目に焼き付けよ!!」

 デミトロ「そしてこの素晴らしい舞台を用意してくださったのは我らが王、ラフィンデル現国王、バロン陛下!!」


 デミトロの紹介に合わせて来賓用の席の奥から国王であるバロンが登場すると大きな歓声が上がった。

 バロン国王は少し前に立ち、観衆に対して手を挙げて答えると、さらに大きな歓声が上がった。


 デミトロ「バロン陛下、このような素晴らしい舞台の実況をご拝命いただき、恐悦至極に存じます!」

 バロン「我も心より楽しみにしておる!存分に盛り上げよ。デミトロ」


 ははぁ~!とバロンに深くお辞儀をしたデミトロは顔を上げると競技場内に体を向けた。


 デミトロ「それでは皆様、長らくお待たせいたしました!さっそく第1試合を開催いたします!東―――」



 *



 控え室の外では定期的に大きな歓声が上がっている、選手の入場や決着が付くたびに大きな歓声が上がっているんだろう。


 スバル「ガイード、何人くらいの人数が出場しているんだ?」

 ガイード「今回の大会は16グループだな。4回勝てば優勝だ!楽勝だな!ガハハハ」


 ガイードのこの自信はどこからくるのであろうか・・・?

 明らかに予選より強敵がでてくるというのに・・・。

 しかし、ガイードのこのポジティブな思考は俺に活力を与えてくれる。

 1回戦第2試合が終わり、しばらくした後、俺達の控え室に兵士がやってきた。


 兵士「ガイード・スバル組、そろそろ出番だ」


 兵士の言葉に俺達は席を立った。


 リアーナ「が、頑張って!二人共!」


 リアーナも緊張した様子で声をかけてくれた。


 ロロミア「スバル様・・・!」


 ロロミアは俺にアイコンタクトを送り、こくりと頷いき、俺もそれに合わせて頷き返した。

 俺とガイードは兵士についていき、コロシアムに複数ある入場口の前に来た。


 兵士「ここで待て」


 そう言うと兵士は奥に引っ込んだ。


 ガイード「訓練通りに動けば負けることはない。俺を信じろ」

 スバル「わかってるさ!気合入れていこうぜ」


 おぉよ!とガイードは返事して俺達は拳を合わせた。



 *



 デミトロ「第2試合も大変熱い素晴らしい戦いでした!さぁ皆様!休憩はもうお済みになられましたか!?そろそろ第3試合を開始いたします!」


 デミトロの声に大いに盛り上がる会場、歓声を両手で静止し、デミトロは続けた。


 デミトロ「ありがとうございます!ありがとうございます!さぁそれでは第3試合を始めましょう」


 デミトロは呼吸を整える。


 デミトロ「東!東奴隷街より出場!元百人隊長!百戦錬磨のガイードと自称勇者の無能ながら予選で圧倒的強さを見せつけたゴブリンキラー!拳闘士スバルの異色コンビ!!対するは東奴隷街より出場!二人で犯した罪の数は3桁にのぼる極悪人の二人、氷刀の使い手ヘルシング、疾風のドーズ!!」


 俺達の名前が読み上げられると会場から大ブーインが起こった。


 スバル(自称って自分から言った覚えないんだがな・・・)


 ガイード「ヘルシングとドーズ・・・」

 スバル「知ってる奴なのか?」

 ガイード「いや、詳しくは知らないがそれぞれこの国でもトップクラスの犯罪者だ。しかしあいつらはコンビじゃない。それぞれバラバラに攻撃してくるだろう。そこにチャンスがあるはずだ!」


 そうして俺達の目の前の門が開いた。


「どっちも死ねぇ!」

「無能者!」

「犯罪者が出てくるなぁ!」


 俺達が入場すると大ブーイングと共に罵声を浴びせられた。


 ガイード「スバル気にするな。敵に集中しろ!」

 スバル「あぁ!」

 デミトロ「それでは第3試合開始ぃぃ!!」


 開始の合図と共に、俺とガイードは盾一列に並んだ。

 剣と盾を持つガイードが前衛となり相手の攻撃を捌き、隙を作り俺がアタッカーとして攻める戦法だ。


 そして、すかさずガイードは魔法の詠唱を始めた。

 ガイードは土属性の特性があり少しだが耐久アップの魔法が使える。

 それを自身に付与してタンカーとしての動こうというのだ。


 ガイード「アースベータシールド!」


 ガイードの体に光の膜が貼られた。


 ガイード「前に出るぞ!」


 俺とガイードは相手の体勢が整う前に一気に間合いを詰めて魔法を打たせない戦法に出た。

 相手はまだ何も行動に移せていない。やはり連携が取れてないようだ。


 ガイード「このまま一人ずつ潰すぞ!」


 俺達が距離を詰めようとしたその時だった。


 ヘルシング・ドーズ「「デルタブリザードハリケーン!」」

 ガイード「な!?」


 ガイードと俺は強烈な氷のつぶてと強風に吹き飛ばされてしまった。


 スバル「う、ぐ・・・!」


 ガイードが防ぎきれなかった氷のつぶてで俺はダメージを負った。


 ガイード「スバル大丈夫か!?」

 スバル「あぁ・・・!大丈夫だ!」


 俺は立ち上がりながら答える。


 スバル「し、しかし・・・今の魔法、二人で唱えてたぞ」


 ガイード「あれは合体魔法、練度の高い魔導師二人が連携して行うコンビネーション技だ。即席チームのはずのあいつらが使えるとは思えない」


 スバル「しかし現実にあいつらは合体魔法を使ってるぞ!?」

 ガイード「!スバル俺の後ろに来い!」


 ガイードが何かに気が付きすぐに俺を呼び寄せた。

 俺はガイードの声に反応し、ガイードの後ろに付いた。

 俺がガイードの背後についてすぐに氷のつぶてと強風が俺たちを襲った。


 しかし、ガイードがしっかりと耐えてくれたおかげで俺は吹き飛ばされずに済んだ。

 だが、氷のつぶてにより確実にダメージを負い、冷たい強風により体力が奪われていく。


 ヘルシング「奴からもらった力だが、こいつぁいい!スバルタスクを殺せばいいって話だが、奴を殺すだけじゃねぇこの力ならコロシアムに出てくる奴ら、全員ぶっ殺せるぜ!」

 ドーズ「おい!余計なこと言うな!さっさと次の詠唱を始めやがれ!」

 ヘルシング「うるせぇ!俺に指図するんじゃあねぇ!」


 ダメージと体温が下がり俺たちは体を動かせずにいた。


 スバル(お、俺を殺せばいい・・・?)

 ガイード「だ、大丈夫か・・・!スバル」

 スバル「あ、あぁ・・・!ガイード聞いてくれ・・・!」


 ドーズ「あいつらダメージで動けないようだ!」

 ヘルシング「あぁ、このままあの無能者をぶっ殺すぞ!」


 そういうとヘルシングとドーズは止めを刺すべく魔法の詠唱に入った。

 それに合わせて俺は左に走りだし、ガイードはまっすぐ二人に突進した。


 ヘルシング「!?」


 ヘルシングは声が出そうになるのを必死に抑え詠唱を続けた。詠唱が途中で止まると魔法が発動しなくなるからだ。


 ドーズ(くそ!このまま撃つしかねぇ!先にガイードを殺るしかない!)


 ヘルシング・ドーズ「「ブリザードハリケーン!」」


 二人はガイードをしとめるべく魔法を発動させる。


 ガイード「アースシールド!」


 しかし、ガイードもそれを読み自身に強化魔法を施し、盾を構え防御態勢を取った。

 そして防御態勢を取ったガイードに二人の合体魔法が襲い掛かる。


 ガイード「ぬぅぅぅ!!!」


 ヘルシング達の魔法発動に合わせて俺は左側から奴らに突っ込んだ。


 ヘルシング「スバルタスクが来るぞ!」

 ドーズ「慌てるな!確実にガイードを潰すんだ!」


 しかし、ガイードは防御態勢のままじりじりと前に進んでいる。

 俺とガイードは確実に二人に対して距離を詰めていった。


 ヘルシング「くっ・・・!こいつら!」


 俺の接近に慌てたヘルシングが魔法を時、こちらに向かって走り出そうとしたがガクっと膝から力がぬけたように態勢を崩した。


 ヘルシング「なっ!?」

 ドーズ「バカが!魔力消費が大きい技を使ってるんだ。一人ずつ確実につぶさないと意味がないだろうが!」


 ヘルシングが魔法を説いたことにより、合体魔法そのものが解けてしまったためドーズはヘルシングの前に出てこちらに向かって魔法を唱えようとした。


 ドーズ「エアロハリケ—―ぐぁぁ!!」


 魔法を放とうとしたドーズに勢いよく何かにぶつかり鈍い音と共に腕がぐしゃりと曲がった。

 よく見るとガイードの持っていたラウンドシールドだ。


 ヘルシング「ドーズ邪魔だ!どけっ!」


 腕をへし折られ態勢を崩したドーズが立ちふさがり前に出れないヘルシング、もともと連携が取れるタイプじゃない二人、この時点で勝負は確定していた。


 ドーズ「おごぉ!」


 腕をへし折られたドーズは態勢を立て直すべくこちらを向こうとしたが間に合わず俺にアゴを砕かれてそのまま地面に倒れた。


 ヘルシング「こ、こいつ!殺してや・・・ぐっ!」


 俺に襲い掛かろうとするヘルシングの首元に剣の切っ先が付きつけられる。


 ガイード「合体魔法が破られた時点でお前たちの負けだ。諦めろ。俺はスバルと違って優しくねーぞ」

 ヘルシング「うぐっ・・・!ま、参った・・・!」


 一瞬の出来事でコロシアムはシンっと静まり返っていた。


 観客「す、すげぇ・・・!」


 ぽつりと観客の一人が声をあげると、わっと観客から歓声があがった。


 デミトロ「け、決着ぅぅ!!ヘルシングとドーズコンビの合体魔法という高度な技をものともせず、まさかのガイード、スバル組による逆転勝利!!」


 デミトロの声に歓声が上がる。


 ガイード「スバル大丈夫か?」


 膝をついている俺に手を差し出しながら言う。


 スバル「あぁ、ガイードが引き付けてくれたおかげでな。ガイードこそ大丈夫か?」


 俺はガイードの手を取り立つ。

 あんな攻撃を3回も受けてるのにガイードは俺より大丈夫そうに見えた。


 スバル「とりあえず」

 ガイード「あぁ初戦突破だ」


 俺とガイードは入場口に戻りつつ拳を合わせた。

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