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奴隷拳闘士の下克上  作者: ためため
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第一章 第十五節 コロシアム

【第一章 第十五節 コロシアム】

 翌日、俺たちは宿屋を後にして馬車に揺られている。

 しかし、目的地は奴隷街ではない。

 俺は馬車に揺られながら昨日のことを思い返していた。



 *



 俺はリアーナを落ち着かせた後、再びロロミアの待つ自分の部屋に戻った。


 ロロミア「勇者様・・・その・・・」


 ロロミアは申し訳なさそうにこちらを見た。


 スバル「心配しないでくれ、リアーナもオルドも見捨てはしない。俺に考えがある」

 ロロミア「あ、ありがとうございます!」


 パァと表情が明るくなる。

 そして仕切り直すように話し始めた。


 ロロミア「何はともあれ、勇者様にはコロシアムに勝ち上がっていただく必要がございます!」

 スバル「その前にだ」

 ロロミア「はい?」

 スバル「その勇者様っていうのはやめてくれ」


 この世界に召喚された時からその呼び名にむず痒さを感じていた。


 ロロミア「で、ではなんとお呼びすれば・・・」

 スバル「スバルでもタスクでも好きに呼んでくれ」

 ロロミア「で、ではスバル様とお呼びさせていただきます」

 スバル「様付けもやめてもらいたいんだが・・・」

 ロロミア「いえ!それはできません!スバル様と呼ばせていただきます!何と言われようとも!!」


 ロロミアの決意は固いようだ。俺は諦めて受け入れることにした。


 ロロミア「今後ともよろしくお願いしますね!スバル様も私のことをロロとお呼びください」

 スバル「ロロ?」


 ロロミア「えぇ、親しい人しか呼ばない呼び方なので、ゆう・・・スバル様にはぜひそう呼んでいただきたいのです!」

 スバル「わかった。じゃあロロ、改めてよろしく頼む」


 そういって俺は握手しようと手を出すと、ロロは両手でぎゅっと握ってくれた。


 ロロミア「で、ではスバル様、お話を続けさせていただきますね!」


 慌てて手を離すとロロは照れながら話しを続けた。


 ロロミア「まず明日は皆さまを奴隷街ではなく、コロシアム内の宿泊施設に送るよう手配いたします」

 ロロミア「コロシアム内は宿泊施設だけでなく訓練所や実際のコロシアム内も見れるので奴隷街にいるより集中して訓練ができるでしょう!」


 ロロミア「もちろん他の出場者はいません。妨害がないように私たちが支援させていただきます!」

 スバル「それはありがたいな」


 仕事に時間を取られることなく1週間、トレーニングに時間をつかえるアドバンテージは大きい。


 ロロミア「それとスバル様についてなのですが——」



 *



 ガイード「スバル、ついたぜ!」


 ガイードに声を掛けられ俺ははっとなり馬車の窓を見た。

 外を見るとローマのコロッセオを豪華にしたような巨大なコロシアムがそびえたっていた。


 スバル「大きいな・・・」

 ガイード「そりゃあな、コロシアムはこの国、最大の娯楽だ。下流から上流街の国民が数万人規模で会場に来るし、本選は投影魔法によって奴隷街にも送られるからな」

 スバル「だからここで勝ち上がった奴には報酬や恩赦が与えられるのか・・・」


 俺の命運が決まるこの戦い・・・絶対負けるわけにはいかないな。



 *



 コロシアム前に馬車が到着し、兵士に案内され関係者入口のような所から中に入った。

 中まで兵士はついてこず俺達が中に進むとローブを着た人間が立っていた。


 ローブを着た人物「スバル様、皆様、ようこそコロシアムへ!」


 聞いたことのある声だ。


 スバル「ロロか!」

 ロロミア「ふふ、昨日ぶりですねスバル様、コロシアムの案内は私に任せてください」


 昨日とはうってかわって明るくふるまっているロロに少しドキッとした。


 リアーナ「むぅ~」


 リアーナは俺の顔をみて少し不満そうな顔をした。


 スバル「どうしたんだ?リアーナ」

 リアーナ「なんでもない!」

 スバル「??」

 ガイード「やれやれだな」


 俺達はロロにコロシアム内に各施設を案内され、その後俺達は本線までの残り期間をどうするか話し合った。


 ガイード「本選までは残り一週間ほどだ。ここに来れたおかげで仕事に割く時間も訓練に当てれるな。俺とスバルは午前と午後に集中して訓練するぞ」

 スバル「わかった。リアーナはどうする?」


 リアーナ「私は二人のお手伝いができたら・・・」

 ガイード「しかしなぁ・・・ここだと寝床も食事もあるし、嬢ちゃんがやることはあんまりないかもしれねぇ」

 リアーナ「そ、そうだよね・・・」


 リアーナはしゅんとしてしまった。

 昨日の件でなんとか俺達の役にたちたいと思っているのかもしれない。


 スバル「ロロも一週間ここにいるのか?」


 下流街から奴隷街に落ちてきたリアーナは基本的な教育を受ける機会がなかった。

 しかし、王宮魔導士のロロなら一般教養などを教えられると考えたためだ。


 ロロミア「私ですか?ずっとつきっきりここにいるってわけではないですが・・・?」

 スバル「だったらリアーナに勉強を教えてあげてくれないか?基本的なことでいいんだ」

 ロロミア「そ、それは構いませが?リアーナさんはいいんですか?」


 リアーナ「え、で、でも・・・」

 スバル「リアーナ嫌だったか・・・?」

 リアーナ「ううん!そんなことない!で、でもみんな大変な時のに私だけ・・・」


 スバル「いいんだよ。知識はこの先でもきっと役に立つ。せっかくだし教えてもらうといい」

 リアーナ「じゃ、じゃあロロミアさんがいいなら・・・」

 ロロミア「私は全然構いませんよ。では今日からよろしくお願いしますね!」


 ロロミアはニコっとわらってリアーナに返事をした。


 リアーナ「ロロミアさんありがとう!」


 リアーナも満面の笑みで返す。


 ロロミア「か、かわいい・・・!」


 リアーナの笑顔にロロミアははぁぁ~~とため息を漏らしている。


 ロロミア「リアーナさん!私のことはロロと呼んでください!」


 ロロミアは興奮気味にがしっとリアーナの手を掴んだ。


 リアーナ「へぁ!?じゃ、じゃあ私のこともリアーナで・・・ロロさん」

 ロロミア「はぁぁぁ~~~!か、かわいすぎる・・・!リアーナちゃん!」


 興奮が抑えられなかったのかロロミアはリアーナに抱きついた。

 コイツ、あった時とだいぶキャラ変わってないか?

 こうして俺たちは本選まで残りの期間、訓練に専念することとなった。



 *



 そして一週間の時が過ぎた。

 俺たちは出場選手毎に割り当てられた控室にいた。

 外からは大勢の人の歓声が聞こえ地鳴りのように鳴り響いてくる。

 かなりの人数がコロシアムに来ているようだ。


 スバル(予選のときは採石場から戻っていきなり初戦だったが、今回はしっかり準備ができたな・・・)


 俺は手に少し汗をかいていることに気が付き、緊張していることを感じた。


 ガイード「落ち着け、本選は強い奴が出てくるが俺から見てもお前は強くなっているよ。本選に出てくる奴に引けを取らないくらいな」


 さすが実戦経験の豊富なガイードは落ち着いている。


 リアーナ「スバルさん・・・」


 リアーナは心配そうにこちらを見ている。


 スバル「大丈夫だ。きっと勝つから応援しててくれな」


 俺はそういうとリアーナの頭を撫でた。


 リアーナ「うん・・・!」

 ロロミア「スバル様・・・!」


 ロロがこちらを見て頷き、俺もそれに合わせて頷く。

 ひと際大きな歓声が外から聞こえ控室に兵士がやってきた。


 兵士「ガイード、スバル組、そろそろ出番だ」


 俺はすっと立ちガイードを見た。


 ガイード「さぁぶちかましてやろーぜ!」


 俺とガイードは拳を合わせ、控室を出た。

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