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奴隷拳闘士の下克上  作者: ためため
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第一章 第十四節 来客

【第一章 第十四節 来客】

 俺とリアーナは一足先にグランヘイム武具店を出て宿に戻っていた。


 スバル「ガイードを置いて先に戻っちゃってよかったのかな?」

 リアーナ「もう!スバルさん空気読まないと!」


 なぜかリアーナに怒られてしまった。

 仕方なくリアーナと宿屋に戻ってくるとネルガンさんが出迎えてくれた。


 ネルガン「おかえりなさいませ。スバル様、あなたにお客様がお見えですよ。あなたの部屋でお待ちいただいています」

 スバル「え?俺に・・・?」


 この世界に知り合いなんてほとんどいない俺に客が・・・?

 俺は少し警戒しながら部屋に向かった。

 俺は恐る恐る部屋の扉を開けてみると窓際に見覚えのあるローブ姿が見えた。


 スバル「お、おまえは!」


 忘れようもない、俺をこの世界に召喚したあげく、魔力を奪った奴らと同じ宮廷魔導士だ。


 スバル「何をしに来た!」


 俺はリアーナをかばうように立ち臨戦態勢に入った。


 ローブを着た人物「お待ちください!私に戦う意思はございません!勇者様!」


 そういうとローブを着た人物はその場に膝をつきこうべを垂れた。


 スバル「な、なんなんだ?勇者・・・?それよりこの声・・・女性?」


 俺は急な展開に頭が付いていかず混乱した。



 *



 ローブを着た女性「警戒されるのもごもっともでございますが、私の話を聞いてください!」


 そういうと女性はスッと立ち上がった。

 知的な感じのする美しい女性だった。


 ローブを着た女性「は!大変失礼しました。私の名前はロロミア、勇者様もご存知の通り、宮廷魔導士を仰せつかっている者です」

 スバル「その宮廷魔導士がなんのようだ。もしかしてコロシアム出場の邪魔に来たのか!?」


 こいつらのせいで俺は・・・


 ロロミア「そ、そんな!邪魔だなんて、むしろその逆、私はあなた達にコロシアムで勝ってほしいのです!」

 スバル「ど、どういうことだ・・・?」


 こいつらは俺から魔力を奪っただけじゃなく、無能者呼ばわりして奴隷街に突き落とした奴ら・・・俺がコロシアムで勝つ方が都合が悪いんじゃないのか?


 ロロミア「私は・・・いえ、私を含む一部の宮廷魔導士は現国王による排他的な政策は望んでおりません。しかし、王や宰相のソフィアに逆らえば皆、勇者様同様に魔力を奪われ奴隷街に落とされてしまう恐怖により何もできずにいました」


 しかし、とロロミアは続けた。


 ロロミア「実は予選の戦いを私は見ていました。魔力をなくしても絶望せず立ち向かう姿。私たちはその姿に感銘し我が身可愛さにあなたや民を差し出していたことを恥じました」


 スバル「だから許してほしいと?ずいぶん虫のいい話だな。お前たち全員、俺がどういう扱いを受けたか知っているのか?」

 ロロミア「そ、それは・・・」


 ロロミアは口ごもってしまった。


 リアーナ「スバルさん・・・話を聞いてあげてもいいと思う・・・」


 俺が怖い顔をしていたのか、リアーナが恐る恐る俺に言った。


 スバル「えっ?」

 リアーナ「ロロミアさんもきっとスバルさんに責められることはわかってたと思う・・・。それでも来てくれたのはきっと何かあると思うの」

 ロロミア「・・・・・・」


 スバル「・・・わかった。話だけは聞こう」

 ロロミア「!あ、ありがとうございます!」

 リアーナ「スバルさんとりあえず、みんな立ちっぱなしでお話するのも何だし座ろうよ」

 スバル「た、たしかに・・・じゃあ二人ともここに・・・どうぞ」


 どう接していいかわからず何だか変な空気が流れたがとりあえず二人を椅子に座らせて俺はベッドに腰かけた。


 ロロミア「あ、ありがとうございます」

 スバル「それで具体的にどうするつもりなんだ?謝りに来ただけじゃないんだろう?」

 ロロミア「そ、そうですね。勇者様は今コロシアム本戦に出て奴隷街から上に上がるおつもりなんですよね?」

 スバル「そうだな」


 俺の目的はそれだけじゃないがまだロロミアのことを信用していない俺は本当の目的は隠すことにした。


 ロロミア「我々の目的は現政権の打倒です。そのためには勇者様にはこの本線を勝ち上がっていただく必要があります」


 こいつらクーデターでも起こす気か?


 スバル「俺一人が奴隷街から出たところで大した戦力にも慣れないと思うが」

 ロロミア「現状の勇者様なら・・・そうですね。しかし勇者様が魔力を取り戻せば強大な力を手にすることができるはずです」


 なに?力を取り戻す・・・?


 スバル「な、なんで俺の目的を知っているんだ!?」


 ど、どこかで漏れたのか?俺は慌てた。


 ロロミア「え!?い、いえ、目的を知っていたわけではなく、我々の作戦の中にそもそも勇者様に魔力を取り戻していただくことがプランに入っていたのです」

 スバル「か、簡単にいうけど方法とかわかっているのか!?」


 俺自身、奴隷街を出た先のことのプランなんてなかったのに・・・。


 ロロミア「え、えぇ・・・理論上は可能です。勇者様の魔力を奪った装置、あの装置の設定を変更し魔力タンクから魔力を逆流させれば戻るはずです」


 俺が悩んでいた問題をロロミアはあっさり解決してくれた。


 ロロミア「ただ、これは言葉でいうほど簡単じゃありません。まず王宮に忍び込み、装置の元に勇者様を含め、魔導士と技師がたどり着く必要があります」


 スバル「たしかにな・・・あいつらは俺を絶対に王宮に入れようとはしないだろう・・・」

 ロロミア「それに装置の設定を変更できる技師が必要になります」


 そこで、とロロミアは続けた。


 ロロミア「勇者様にはオルドという魔道技師を助け出してほしいのです」

 スバル「オルドだって!?」


 聞いたことのある名前に俺は思わず驚いた。


 ロロミア「彼をご存知なのですか!」

 スバル「あの人には採石場でお世話になったんだ」

 ロロミア「そうですか・・・勇者様も採石場に・・・」


 本当に申し訳ございません!とロロミアが床で土下座をしたので俺は慌ててとめ、再び椅子に座らせた。

 そして俺はロロミアでオルドと出会った経緯や彼と過ごした日々を話した。


 ロロミア「そうですか、よかった・・・勇者様ありがとうございます!彼に希望を与えてくれて・・・」


 ロロミアはオルドの様子が知れてホッとしているようだった。


 スバル「ロロミアさん、あんたオルドの知り合いか?」


 ロロミアはそういうとうつむいてしまった。


 ロロミア「オルドは・・・私の祖父です・・・」



 *



 ロロミア「オルド・・・私の祖父は王宮の魔道技師の技師長を務めていました。そこでソフィアの魔道兵器化計画のために魔道兵器の設計しました。しかし、民衆から魔力を奪う計画に反対した結果、採石場送りにされたのです」


 オルドからも同じことを聞かされたな。

 オルドが魔道兵器の設計に携わっていたことは本当のようだ。


 リアーナ「ひ、ひどい・・・」

 ロロミア「祖父がソフィアに反対しに行こうとした時、私も一緒に行こうとしましたが祖父に止められました・・・。祖父はソフィアに逆らえば魔力を奪われることがわかっていたのでしょう・・・」


 スバル「しかし、どうやってオルドを採石場から救出すれば・・・」

 ロロミア「コロシアム優勝者には恩赦として関係者を一人救出することができるはずです!あっ・・・」


 ロロミアは救出方法を言った後、リアーナの存在に気が付いた。


 スバル「それはできない、俺はリアーナを助けると決めているからな」

 ロロミア「そ、そう・・・ですよね」


 ロロミアの顔に落胆の色が広がる。

 その様子をみたリアーナは決意したようにこちらを見た。


 リアーナ「スバルさん、オルドさんを助けてあげて。きっとその方がみんなのためになるよ!」


 リアーナは強い口調で言った。


 スバル「いや、しかし・・・」

 リアーナ「私なら大丈夫・・・!もう十分よくしてもらったもの。だから・・・ね」


 俺の手をそっと握り気丈にふるまっていた。


 リアーナ「私、ちょっと疲れたから部屋にもどるね」

 ロロミア「あ!リアーナさん!」


 リアーナは慌てるように部屋を出ていった。

 出ていくリアーナの横顔には涙が見えた。


 スバル「リアーナ・・・」



 *



 俺はロロミアと別れ、リアーナの部屋の前に立ちドアを軽くノックした。


 リアーナ「・・・・・・」


 返事はなかったが俺は扉に向かって話しかけた。


 スバル「リアーナ、話を聞いてほしい。とても大事な話だ」


 しばらく待つとゆっくりとドアが開き。

 中から目を真っ赤にはらせたリアーナが顔を出した。


 リアーナ「どうぞ・・・」


 リアーナはそういって部屋に俺を招いた。


 スバル「リアーナ、すまなかった。不安にさせてしまって・・・」

 リアーナ「ううん、私がいけなかったの。何もしてないのにスバルさんやガイードさんと一緒にいられるとおもった私が・・・」

 スバル「そんなことない」


 そういって俺はリアーナの頭に手を置いた。


 スバル「ガイードも言っていたが俺たちはパーティだ。誰が欠けてもここまで来れなかった」

 リアーナ「・・・・・・」


 俺はポケットから小さな包みを取り出して、リアーナに渡した。


 リアーナ「これは・・・?」

 スバル「街を歩いていた時、アクセサリー店を見てただろう?まぁ大したものじゃないんだけど」


 あははと俺は頭をかきながら言った。

 リアーナは小さな包みを開けてみると銀でできた小さな髪留めが入っていた。


 リアーナ「わぁ・・・!で、でもいいの?私・・・スバルさんに何もしてあげれてない・・・」

 スバル「何言ってるんだ。リアーナは暴走した俺を止めてくれただろ。その時のお礼だよ」


 俺の言葉にリアーナはきゅっと髪留めを握るった。


 スバル「心配しなくても俺もガイードもリアーナを見捨てたりしない。俺に考えがある。だからもう泣くな」


 俺はリアーナの涙をぬぐいながら言った。


 スバル(リアーナもオルドもガイードも救って見せる・・・)


 俺はこの時すでにあることを決心していた。

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