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奴隷拳闘士の下克上  作者: ためため
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第一章 第十一節 目覚め

【第一章 第十一節 目覚め】

 一人の兵士がソフィアに翌月のコロシアムに出場する選手の一覧をソフィアに提出していた。

 ソフィアは書類を受け取ると城内にある自身の部屋に戻った。


 ソフィア「・・・・・・・こいつは、ふん。ガイードの入れ知恵か。無能者が・・・」


 ぶつぶつとソフィアは独り言をつぶやきながら、思案した。

 そして机の上の水晶に魔力を込め、水晶越しにいる部下に指示をだした。


 ソフィア「ふふ、貴様らの思い通りにはさせない」



 *



 予選が終わって数日が過ぎた。

 ゴブリンに頭を殴られたガイードは頭を負傷し出血をしたが脳震盪で済んで大事には至らなかった。

 ガイードは食堂で受け取った。

 食事をもって宿舎に戻ってきた。


 ガイード「嬢ちゃん、毎日すまないな」

 リアーナ「ううん、大丈夫。ガイードさんも頭、大丈夫?」

 ガイード「ガハハ!俺は頑丈だからなこの程度、屁でもないさ!」


 そう笑うとドシンと胸を拳で叩いた。


 ガイード「しかし、スバルはまだ目覚めないか・・・」

 リアーナ「うん・・・命に別状はないらしいけど・・・」

 ガイード「くそ!俺が油断してあんな攻撃を受けなければ!」

 リアーナ「ううん、ガイードさんは悪くないよ」

 ガイード「本選まで時間もない。早く目覚めてくれよ・・・スバル」



 *



 俺はまた暗闇の中を歩いていた。


 スバル(ここは・・・転生したときに来た・・・でも、なぜ・・・)


 決勝戦はどうなったんだ?

 ゴブリンを倒してからの記憶がない、なぜここに・・・?

 しばらく歩くと見覚えのある場所にたどり着いた。


 スバル(ここから始まったんだ・・・でも何故ここに・・・?)


 俺が壁の前に立ち止まると、あの時と同じように魔法陣が光り、扉が現れた。

 そして、どこからともなく声が聞こえた。



 転生者よ、奪われたものを取り戻せ。



 スバル(奪われたもの・・・魔力のことか)


 しかし、奪われたものをどうやって取り返せば・・・。


 そなたの中に眠りし、力はそなたを焼き尽くすだけではなく、世界を焼き尽くしてしまう力。


 スバル(どういうことだ・・・うぐっ・・・)


 声に反応したように、頭の中に映像が出てきた。


 スバル(こ、これは・・・俺・・・?)


 そこには血だらけになりながら魔導士に迫る自身の姿があった。



 この程度は力のほんの一端に過ぎない。

 このままこの力に身を委ねるとそなたはそなたでなくなるだろう。



 たしかに、このままではガイードやリアーナを傷つけてしまう。


 スバル(で、でもどうすれば・・・!)



 そなたの力を奪った場所に向かえ。

 力を戻す術はそなたが出会った人物が知っている。



 スバル(!あの装置・・・オルド・・・!)



 その力に溺れ、その力に依存してはならない。

 そなたの愛する者を守りたいのであれば・・・。



 声が聞こえなくなると魔法陣が光り、扉がギギギギと開き、転生したときのように扉に吸い込まれた。



 *



 リアーナ「お水を変えてこなくちゃ」


 私は桶をもつと水くみ場に向かった。

 ガイードさんは仕事を終え夕食を取りに行ってくれている。

 予選のあと、奴隷街のみんなはスバルさんに畏敬の念を・・・。

 そして私はそのスバルさんを止めた人物としてちょっとした有名人になった。


 男性「おぉ、嬢ちゃん!決勝戦ではすごかったなぁ!」

 女性「リアーナちゃん、今日も見舞いかい?」


 みんな以前と違い気さくに声をかけてくれるようになった。

 スバルさんが・・・スバルさんが私を助けてくれてから全てが変わった・・・。


 リアーナ「今度は私がスバルさんを・・・」


 私はスバルさんのことばかりを考えてることに気が付き恥ずかしくなった。


 リアーナ「ち、ちがう・・・スバルさんにはいつもお世話になっているから・・・それだけだもん」


 ふるふると首をふると、慌てて水を汲んで宿舎に戻った。


 リアーナ「スバルさんただいま」


 私はそういって医療用の宿舎の扉を開けた。


 リアーナ(返事はないか・・・)


 もう何日も返事はない・・・わかっていることだけど寂しく感じてしまう。


 スバル「リアーナ・・・おかえり」

 リアーナ「え・・・・・・」


 顔を上げるとスバルさんがこちらを見てほほ笑んでいた。


 リアーナ「ス・・・バル・・・さん・・・スバルさんっ!!」


 私は水を汲んだバケツを放り投げてスバルさんに抱きついた。


 リアーナ「よかったよかったよぉ!!」

 スバル「ごめん・・・心配かけた・・・」


 そういってスバルさんは泣きじゃくる私が落ち着くまで頭をなでてくれた。



 *



 私が落ち着いて少しして、ガイードさんに宿舎まで報告しにいくとガイードさんは医務室に飛んできてくれた。


 スバル「ガイード・・・すまない。心配かけた」

 ガイード「何言ってるんだ!気にするな!」


 すると俺の腹が思いっきり鳴った。

 それを聞いたガイードさんは大慌てで食堂にもどってスバルさんの食事をもらってきてくれた。


 リアーナ(私ってばスバルさんに思い切り抱きついて・・・)


 思い出すと顔から火が出そうになった。


 ガイードさんが戻り、スバルさんが食事を済ませると、スバルさんは自分が夢で見ていたことを話してくれた。


 スバルさんには取られた魔力のほかにすごい力が眠っていること。

 その力はとても危険でガイードさんや私を傷つけてしまうかもしれないこと。

 その力を押えるために奪われた魔力が必要なこと。


 スバル「このまま俺と一緒にいると二人を傷つけてしまう・・・だからチームはここで解散しようと思う」


 え・・・解散・・・いやだ・・・いやだよ・・・。


 私は泣きそうになった。

 スバルさんと離れたくない・・・。


 ガイード「お前、それでどうやって魔力を取り戻すんだ?」


 ガイードさんはこちらをチラリと見た後、スバルさんに尋ねた。


 スバル「そ、それは・・・」

 ガイード「はぁ~~~。どうせプランなんてないんだろ?」


 ガイードさんにつっこまれるとスバルさんはギクリとした表情をした。

 プランは何もないみたい・・・。


 スバル「い、いやでも・・・リアーナは見ただろう」

 リアーナ「うん・・・でもスバルさんはそんなことしない人だって私知ってる。だから・・・解散なんてヤダ!」


 私は力強くいった。


 スバル「リ、リアーナ・・・」

 ガイード「嬢ちゃんもここまで言ってるんだ!男のお前が覚悟を決めないでどうするんだ!」

 ガイード「勘違いするなよ。お前っていう相棒がいないと俺もここから出れないんだからな!」


 ガイードさんは少しにぶっきらぼうに行った。

 照れてるのかな・・・?


 スバル「ガイード、リアーナ・・・ありがとう」


 そういうとスバルさんは照れくさそうに下を向いた。



 *



 目覚めた日、俺はすぐにでも訓練をしようとしたが、二人にきつく言われて俺はゆっくり休むことになった。

 そして翌朝、ゆっくり休んだため朝早く目覚めた俺は日課の黙想を始めた。

 体の調子はすこぶるいい、折れていた右腕もなぜか治っていた。


 スバル(あの声の主が直してくれたのかな・・・?)


 ガイードが目覚め、俺の体を心配してくれたが好調であることを伝えた。

 俺は体が好調だったのでガイードと今日から仕事を再開することにした。

 いつまでも休んでいるわけにはいかない予選はあくまでも予選、本選まで時間はないのだから。




 仕事を終え、食堂でリアーナと合流し今後について話し合う事にした。


 ガイード「スバルが魔力を取り返すためにも奴隷街から出る必要がある。上の階層にいくには門を通る必要があるし、警備も厳重だからな」


 俺が奴隷街に落ちたときに見たやつか・・・。

 たしかにあの巨大な門を一人で突破するのは無理だ。


 ガイード「結局のところ、本選に勝ち上がることが一番の近道だと思うんだ」

 ガイード「ただだ。予選と違い本選はそう簡単にはいかないだろうな」


 スバル「当然だろうな。予選を勝ち上がってったヤツらばっかなんだろう?当然強いヤツばかりなんじゃないのか」

 ガイード「それもそうなんだが、本選は予選と違って魔法の使用が認められているんだ」


 魔法・・・何度も聞いたが本当に体験したのは予選の決勝戦くらいだな・・・


 スバル「そういえばガイードやリアーナは魔法は使えるのか?」

 リアーナ「ううん、魔力はあるらしいけど・・・魔法の勉強はしたことないの」


 そういうとリアーナはしょんぼりとしてしまったので俺は頭を撫でた。


 リアーナ「えへへ」


 撫でられて機嫌が良くなった。


 ガイード「俺は少しは扱えるが得意な方じゃない、そしてお前は魔力がない」

 スバル「あぁ、それにあの力は出したというより出た感じだった、制御もできてないしな・・・」

 ガイード「そういうことだ。だからこれから本選までは対魔法使いに対する対処法と俺達の連携強化に努めよう」


 リアーナ「私、また薬草を集めておくね!」

 ガイード「それはありがたい!訓練もよりきつくなるからな」


 方針が決まり俺達は本格的に動き始めた。

 俺はガイードと鉱山仕事を出かけ、休憩の少しの時間にリアーナを手伝った。

 こうしてリアーナと薬草摘みをするのはだいぶ久々な気がする。


 リアーナ「こうして一緒に仕事するの久しぶりだね」


 そういうとリアーナは優しく微笑みかけてくれた


 スバル「あぁ、そうだな」


 リアーナも同じことを考えていたらしい。

 少し嬉しくなった。

 俺はようやく自身の居場所に戻ってきたことを実感した。

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