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閑話:あの日のバウンティ

 七月七日ですね。

ハッピーバースデー、カナタさん。

ってことで、出会った日のバウンティです。





「くはぁぁ」


 師匠から頼まれた依頼が終わって王都から速攻で戻ったけど、眠い。

 暫く騎士団の訓練とか不毛な仕事はしないでおこう。相手にならない。ウォーレンがちょっと粘ったぐらいじゃないか。


 真っ赤な夕陽が車のフロントガラスに乱反射して余計に眠気を誘う。


 途中でもう一泊すればよかった。何で急いで帰ってるんだっけな。やっと旧市街だ。もう少しだ。帰ったらすぐ寝よう。報告は明日でいいだろ。




 ――――どさっ。


 急な振動にハンドルが取られた。


 ――――きゅるるるる。 


 何だ一体。何か轢いたか?


「かあ……さん……だいじょうぶ?」

「――――?」


 横を見たら妙に煌く黒い瞳をした黒髪のヒョロっとしたガキが頭から血を流してボーっと座っていた。


 ――――誰だよ!


「……ども。こんにちは?」


 ヘラッと笑って気絶してしまった。


「は? ……おい…………おい!」


 全く意味が解らない。慌ててブレーキを踏んだ。 


 ――――キキィ、バキッ!


「だっ……しまっ……た…………」


 ブレーキ踏み抜いた!?


 まずい、もう市関門じゃないか……

 ちょっと、マジで。何だよこのガキ! どうやって乗ったんだよ! 何だよこの荷物!

 

 ――――ギギギギ、ギュィィィィー、キュルルルル


 エンジンブレーキを効かせる為、ギアを無理やり落とす。聞いた事無い音が鳴り響く。徐々に減速するんじゃ間に合わない。

 ゴフンゴフゴフとエンジンが妙な音と振動を起こす。


 ――――クソッ。


 サイドブレーキを引くが間に合いそうにも無い。側面で当てるしかないか。


 ――――ギュルルルルルル。ドガァァン!


「クソが! 何だよ。おい! 起きろ!」


 ベチベチと頬を叩くが起きない。助手席から出そうと抱きかかえたら妙に軽い。胸元を探るがプレートが無い。ポケットにも無い。


 ホロゥか? いや、怪我は多いが身なりが綺麗すぎる。それに今怪我したみたいじゃないか?


「ん…………かぁ……さ……痛ぃ」


 うわごとか……。


 横抱きにしていたら涙を流しながら服を握りしめられた。


「おいおい、バウンティ、轢いちゃったんか?」

「ちげぇよ! くそっ。ケネス、プレートが見つからない。緊急で通せ、後で報告入れる。車はブレーキ壊した! 修理出しといてくれ。荷物はラセット亭!」

「はいよ。その子は?」

「誰かも分からん! とりあえず俺の部屋で治療する」


 タクシーに乗って無理やりラセット亭の前まで乗り付けた。俺の名前出せって言ったから大丈夫だろ。


「何やってんの? 誰その子?」

「ジュド、師匠に精霊飛ばして、金だけで治療する医者呼ぶよう言って!」

「オッケー」

「後で荷物届く!」

「わかった、預かっとく」




 部屋でベッドに寝かせる。

 とりあえず他にケガは? 頭は縛った。体は大丈夫か?


「なんだこのシャツ……」


 高級品か? 脱がせないとだが……仕方ない……破るか。


 ――――ビリビリ。


「何なんだよ。また変なの着てるなお前。何者なんだ?」


 プロテクターか? 外し方が解らん。仕方ないか。


 ――――ビッ。ビリリッ。


 よし。胴体も背中もケガはないな―――ムニュッ。


 「んあ?」


 上半身を持ち上げて背中を見ていたら、妙に柔らかい。


 ――――ムニムニ。


 あれ? これ胸か? 


 いまいち確信が持てない。ズボンのチャックを開けると小さなスベスベのパンツを穿いていた。

 そっと触ってみたが分からない。何となく気になって布の中に手を入れる。


 ――――サワッ。クニッ。


「――――んっ」

「なっ! すまない! …………寝てるのか?」

 

 …………女だったのか。大人? え? 大人だよな?


「と、とりあえず……服だよな?」


 俺の持ってる中で一番タイトなのを着せたがダボダボだった。

 お前は何でこんな怪我してるんだ? どうやって車に乗って来た? 目を開いて? 教えて?


「お前の目は真っ黒で夜空みたいだな、綺麗だった。もう直ぐ医者が来るからな」


 早く医者来い。閉じた瞼から涙が流れ出てるじゃないか。




 テンパるバウンティでした。

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