ネムリ村
皆様長い間お待たせしました。
待たせ過ぎて読んでいる人が今でもいるのか?と考えてしまうのですが、そんなことを考えている内にすっかり寒くなってしまいました。
今回は新キャラが登場しますので是非ご期待ください。
それでは本編よろしくどうぞ!
~あらすじ~
ひょんな事から物・事・を・変・え・る・力・を手にした主人公カイルは、その力を与えた神、ヘラから生きる意味と能力の簡単な説明をしてもらいその能力が器を持つ特別な能力だと言うことを知る…。
いきなり襲ってきたゴブリンのデルタの奇襲から自分の能力を駆使した攻撃でなんとか勝利を納めたカイルだったが、デルタの冷静差と度胸の強さに逃げるような形で別れを告げたカイルだったが、その逃げ際にデルタから近くの村までその道を真っ直ぐ進めば着けるというアドバイスをもらったカイルだが…。
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デルタとの戦いのあと逃げるようにその場をあとにした僕は、その場を離れる前にデルタからの最後の言葉に少し疑問を抱きながら、その言葉通りに自分の逃げるように飛び出した方向を進み続けていた。
目の前はデルタと戦っていた時のように砂と岩に囲まれた場所ではなく、歩くにつれて草木が多くなり辺りは草原のような風景に変わってきていた。
(なんでデルタは僕にわざわざ村がある方向を教えたんだ…?
デルタにメリットがあるわけじゃないだろうし…)
(そもそも僕になにかを教えること事態が少し怪しい気はするけど、脅してたわけじゃないのに教えるものなのか……。)
そんなことを考えながら村までの道のりを移動していると、遠くの方になにやら村のようなものが見えてきた。
「あれが……村…………?」
デルタとあった場所から10分くらい歩いて見えてきたのは、人気の少なそうな村だった。
村の看板には、消えかけの文字でネムリ村と書かれていた。
「ネムリ村………?………こんな場所見たことないけど……。」
カイルがこう言うのにも訳があった。
カイルがまだ6歳の頃、カクリ村(デルタたちに破壊されたと思われる村)で育てられていて、当時、親に内緒で近くの村まで行った事があったのだが、その時に見た名前と少し変わっていたからだった。
その当時の村の名前はネイル村と書かれていて、今でも鮮明にその光景を覚えていた。
その後呆気なく見つかり1日家に閉じ込められたためより良く覚えているのだった。
「ちっ‥‥‥少し嫌な事思い出しちまった……。
そんなことより、とりあえず中に人がいないか調べて見よう。」
村の中に入ると人がいる気配がなく辺りは静まり返っていた。
そして1つずつ家の扉を開けて確認して回る事にした。
「誰かいませんかー。」
部屋の中を覗いてみても人がいる気配はなく、部屋の中の家具という家具が倒されて、泥棒でも入ったかのようになっており、なにかが起きているということが察知できた。
(誰もいないしこの部屋の荒れよう……なにか良くないことが起きたのだろうか……。)
少し疑問を残したまま1つ目の家を後にし、2つめの家の扉を開けた。
この家は2階まであるようで、2階から階段が降りているのが見えた。
1階の部屋は先ほど見た家ほど荒らされていなかったが、テーブルとイス、そのしたにカーペットがしかれている以外はなんの変わりもない普通の家だった。
2階に上がってみると、そこには一人の女の子がベットの上で寝ているのが見えた。
カイルはすぐに腰からナイフを抜き、ナイフを持った手を後ろに回し恐る恐るその女の子に近づいた。
すると女の子は丁度目が覚めたのか起き上がり、上半身を起こした状態でふと首をカイルの方に向けた。
カイルも急なことだったため隠れることが出来ず、摺り足で近づいていたのを止め動きをピタリと止めた。
女の子はカイルの事を数秒見ると、目を擦り横にあった眼鏡を手に取り、もう一度カイルの事を見た。
カイルは緊張してその場から動くことが出来ず、ほぼ硬直状態に近い形になっていた。
女の子は深呼吸をすると、とたんに大声をあげた。
「キャーーーー!!!!誰か助けてーー!!!」
いきなりの大きな声にカイルは思わず耳を塞ぎ、手にもっていたナイフを女の子にばれないようにしまった。
大声を出した女の子はその後大声で鳴き始め、その行為はまるで誰かを呼んでいるようだった。
「うえーーん!!うえーーん!!!」
「そっそんなに泣かなくても……。」
女の子が大声をあげると同時に、なにかが外からこちらに近づいてくる音が聞こえた。
その音はこの家の前で止まり、家のドアから誰かが進入して来るのが分かった。
カイルは鳴いている女の子を差し置いて、迫ってくるなにかに備えて階段側の方を向き腰のナイフに手を当てて警戒体制に入った。
「次から次へと…先に言っとくが僕はなにもしてな……。」
言葉を遮るように飛び出してきたのは人である事は確かだったが、どんな人かまでは分からなかった。
その瞬間女の子は泣き止み、とても嬉しそうにこう言った。
「お姉ちゃん!!」
その飛び出してきた一瞬で、僕の体の横をすり抜けるかのようにして後ろに回った。
「っ………!!」
通り抜ける間に僕の短剣を取ろうとしたみたいだが、思ったよりも重量があったのか短剣を弾かれる形となり、床に滑り落ちてしまった。
僕はすぐに後ろに振り返り、その人に対して身構えた。
その人は元いた女の子を庇うように手を真横に広げ、ベットと同じ高さくらいまでしゃがみ僕に睨みを効かせていた。
その人は腰を屈めていたので分かりにくかったが、髪は茶色のショートヘアで目の色は赤色の、僕より少し身長の高い同年代か1つ歳上くらいの気の強そうな見た目をしていた。
服は肌色のワンピースを着ており、強い警戒心を剥き出しにしていた。
その時にやっとその人が女だと言うことがわかり、少し動揺してしまった。
「………くっ…………!!!」
その隙をつかれたのか彼女の姿が消えたと思うと、僕の後ろに回り込まれて、気がつくと彼女に後ろから片手を捕らえられ背中を足で踏みつけられるような身動きの取れない状況に追い込まれた。
「ぐわっ……くっ………!!」
そのまま片手を背中の後ろに回され、体が地面に押し付けられるような体制をとらされ、抜け出すのが困難な形となってしまった。
「僕はなにもしてな………イタタタタタ!!」
僕がしゃべろうとすると彼女は僕の腕をキツく締め上げた。
「こちらの質問にだけ答えろ!お前はこの場所に何をしに来た!答えようによっては生かしてはおかないぞ!!」
外見からは想像もつかないような暴言を吐かれたカイルは、現状を打破する手立ては無かったので、言うことを聞くことにした。
「わっ!分かったよ!分かったから少し落ち着いてくれ!!」
すると少し落ち着いたのか、脱出できない程度に締め上げるのを緩くしてくれた。
「では聞く、お前はなんのためにここに来た?」
「この町に人がいるのか気になったのと、一晩止まるための宿を見つける為に来たんだけど…。」
「じゃあなんで私の妹を泣かせた!!」
「なんでって……なにもしてないのに泣き出して………」
彼女はまた強く締め付けた。
「イタタタタタ……!!ほんとの事だってば!!!」
すると横で彼女の勇敢な姿勢を見ていた妹が姉に言った。
「ほんとだよ?…そこにいるお兄ちゃんはなにも悪いことしてないよ?…ただ私が怖くなって泣いちゃっただけ。」
「なっ、なに!………それを早く言え!!」
そう言うと僕に絞め技を決めてきた彼女は僕の体から離れて、妹の近くによりそった。
僕は少し痛みは残ったが体制を立て直し、その場で座り彼女たちの話を聞くことにした。
「ふぅ………やっと解放された……さっきは殺されるかと思ったよ……。」
「先ほどは手荒な真似をしてしまってすまない、自己紹介がまだだったな、私の名前はリラ、妹の方はミラって言うんだ」
「ミラって言います!5歳です!先ほどは大声を出してすみませんでした、ちなみにお姉ちゃんは9歳です!」
「コラ! 名前はともかく年齢を見ず知らずのやつに教えてたりしてはいけないとあれほど言ったのに…」
ミラは少し落ち込んだ表情を浮かべながらリラに謝った。
「お姉ちゃんごめんなさい…」
そんなような口論をしているところに、カイルは様子を見ながら自己紹介をした。
「……もめてる所悪いんだけど……僕の名前はカイル、昔の事はあんまり覚えてないけどそれも含めて旅をしてるんだ、ちなみに年齢はリラと同じだよ」
ふと気づいたかのように二人はカイルの方に視線をやり少し警戒を解いたのか、姉妹の話を聞かれていたことに少し恥ずかしがりながら話始めた。
「コホン…私と同年代で旅をしているのか…もしかしてカイルも誰かから狙われているのか?」
(狙われる?この村に人が少ない事となにか関係があるのか?)
「狙われてはいたけど…今も狙われてるかどうかは分からないかな、もしかして君の村は誰かに狙われてるの?」
「私達の村は夜に眠ると何者かに連れ去られる村で……私達の親も何者かに連れ去られてしまって……」
「そんなことが起こってるのか!」
「連れ去られる時は決まって夜で、一人になった人から連れ去られるみたいなの。」
「一体誰なんだそいつらは……。」
「私達も分からないけど、前までいた人は黒い影に吸い込まれていく友達を見たって言ってたは……その人も今は連れ去られて…………。」
「用件は分かった! 俺でよかったらその案件調べてみようか?」
「私に負けるようなチンチクリンのあんたになにができるってのよ?」
「………っ……少し言葉に棘があるようだが、僕の実力はあんなもんじゃないんだよ?」
リラはカイルの自信満々な表情に少し不信感を抱いていた。
「ふーん、じゃあその言葉信じてみるわ!私はミラを守るので手一杯だから、あんたは一人で戦いなよ。」
「まかせとけ!そうと決まれば、夜まで何処かで寝させて貰えないか?」
その言葉を聞いたときリラは急に態度を変えて、僕に強くあたり始めた。
「はぁ?! まあ良いけど…ここは絶対に駄目よ!男なんて入れたこと無かったんだから、その辺の人のいない空いてる部屋で好きに寝れば良いじゃない!」
(空いてる部屋って…他の人の部屋の事か?)
「分かったじゃあ僕は念のため君たちの横の家で休ませて貰うよ。」
「そこも駄目! そこは私がいつも色んな準備をするのに使う部屋だから、あんたは私達の真向かいの家で寝てもらうわ!」
この村は家が6つあり縦に2件横に3件のまるでRPGのように家が並んでおり、リラ達の寝床の家は縦1の横2の所に存在する家で、その横(縦1横3)がリラの準備室に使われてるようだ。
僕の寝床は縦2横2の家で寝るということになる。
「わっ、分かったよ……でも、なにか起きたらすぐに大声で呼んでくれよ?」
「あんたなんか呼ばなくても私だけで解決できるわよバーカ!!」
そう言うとおもむろに玄関のところまで連れてかれ、扉を閉めて外に放り出されたのである。
リラが思うに、始めて男を家にあがらせたことに、どうしようもない不信感と、少しの緊張があったからである。
「じゃあ夜まで向かいの家で寝てたら!? じゃあまたね!?」
「どわっ!! イテテ……あの女凄い力だけはあるよな……無理矢理出さなくても自分から出ていけるっての。」
「まあとりあえず、向かいの家でゆっくり体を休ませるか~」
向かいの家まで歩いていき扉を開けて中を覗いて見ると、この部屋もリラ達の寝室くらい綺麗なままで、リラたちの部屋とは違う2階のない1ルームの部屋ではあったが十分なスペースがあり、ベットはダブルベットだった。
よく見ると、誇りは被っているがおじいさんとおばあさんの二人が写っている写真が置いてあった。
「この写真は………??」
カイルは吸い込まれるかの様にその写真を手に取り、まじまじと写真に写る老夫妻を眺めてた。
「くっ……こんな年寄り夫妻までも連れていくなんて、人でオモチャのように遊びやがって…………。」
写真を持っていたカイルの腕は小刻み揺れ込み上げる怒りの感情を自分に向けて必死に抑えた
(せめてリラたちだけでも守らないと…。)と心の中で呟いた。
持っていた写真を置き、一人で使うには十分に余裕のできるダブルベットの右側に入り、ゆっくりと目を閉じることにした。
(リラたちは今ごろ安心して眠れているだろうか…。
僕よりも腕っぷしはあるし、胆が据わっているからリラは大丈夫そうだな…。)
(どんな怪物が出てくるか分からないけど、僕の力でどうにかできるものなのかな………?)
夜でもないのに不思議と心地よく眠れるのをダブルベットの温かい布団のお陰だと思い少し考え事をしながら眠りついた。
「起……よ」
どこからともなく女性のような声が聞こえてくる。
「起…な……よ」
その声はどこかで聞き覚えのある声だった。
「起きなさいよ!!」
その声の主は腕輪の映像で見た、ヘラの声だった
僕はすぐさま声のする方へ目を開けて体を向けた。
意識はぼんやりとしていて体は上手く動かせる状態になかったが、不思議と不自由だとは思わなかった。
辺りは深海のように静かでヘラの声だけが響くように聞こえてくる様だった。
「いったい……どうなってるんだ?僕はさっきまで寝てたはず……。」
「やっと起きたわね?といってもほんとはまだ寝てるんだけど……そんなことはどうでもよくて、なんでこの世界に連れてこられたか分かる?」
目の前にいるヘラの分身のような黒いシルエットで、上半身はヘラの体に酷似していたが、下半身は人魚のような尾びれをしていた。
そのヘラのシルエットをした女はゆらゆらと体を揺らしながら僕に語りかけていた。
「いきなりそんなこと言われても………。」
「簡単に言えば、貴方は今私の作り出した精神世界に、魂だけを無理矢理連れてきたのよ。」
ヘラの常人離れした能力に少し驚いたが、これからもこんなことが続くと思うと少しふあん
「こんなとこに連れてくるってことはまたなにか訳があるってことだな…??」
「よくわかってるじゃない。」
そう言うとヘラのシルエットをした女は口角をあげ、不気味に笑みを浮かべた。
「私がここに呼んだのは貴方の運命がここで終わるかも知れないから呼んだのよ?」
その言葉を聞いて僕は固唾を飲んだ。
「運命が…終わる……??」
そんなことを言われてもすぐに理解できるわけがなく、ヘラが迷いのない態度をしていることからもこれが嘘ではなく、本当のことだと信じざるをえなかった。
けれども僕はそんなことを信じれるはずもなく疑い混じりにヘラに問いかけた。
「そんなことがホントに起こるわけ…そんな確証がないこと信じろって言うのか?」
「信じるも信じないも貴方次第だけど、貴方の身に危険が迫ってるのは確かだわ、まあ忠告はしたから気を付けなさいよ。」
「…………わかっ…た………。」
忠告したからどうしろっていうんだ!という行き場のない言葉を飲み込んだ。
ヘラのシルエットをした女は後ろを向き、何処かへ消え去ろうとしていた。
行き場のない気持ちを受け止めて沈黙した僕に対して、思い出したかのように止まったヘラは予想だにしない事を話はじめた。
「あっ、そうそう」
「………?」
「あんたがもし死んじゃったら、あんたの寿命を使ってまたこの聖域に戻ってくることになるから、そんなに心配しなくても大丈夫よ?」
ヘラのシルエットをした女はくすりと笑いながら、まるで毎朝ご飯を食べるかのように説明をした。
人の寿命をなんだと思ってるんだ…第一そんな大事なことならもっと早く教えて欲しいものだ。
今さっき思い出したかのように…しかも大事な事を笑い混じりに話すその態度に、少し怒りの感情を抱いた。
「そういうことは最初にいうもんだと思うけど…。」
するとそのシルエットはニコリと笑い…
「あら?不満かしら??」
と言葉を残した。
その言葉からは今まで感じたこともない圧力を感じ、周りは謎の圧力から沸騰した水のようにうねりをあげていた。
このシルエットが神なのだという事実を思い出させるほどに恐怖を感じた。
「くっ………」
初めてのヘラからの圧力に意識が薄れそうになったが、それをなんとか堪え、ヘラのシルエットをした女に圧力というなの恐怖心を振り払って、なんとか言葉を発言した。
「あり……がとよ………。」
「!?」
この言葉を聞いて笑みを浮かべていたヘラの表情は変わり、驚いた表情をしていた。
この驚いた表情をしたときに締め付けられるような謎の圧力も、気がつけば解除されていた。
「………この力を使ってもまだ喋れるのね……。」
この力?このシルエットは何を言ってるんだ?と思ったが、このシルエットが少し驚いてるのを見て、何か驚くようなことを僕がしたのだと感じた。
驚いた表情をしたヘラは、すぐに表情を変え、また人を見下すような表情に戻った。
「まあいいわ、あんたがこれからどんな風に成長するか見物だわ、少しくらい楽しませなさいよ?器持ちさん(笑)♪」
そう言葉を言い残すとヘラのシルエットをした女は、海の奥の方へと泳いでいった。
もちろん僕はその後ろ姿をただ見ていただけではなく、まだ聞きたいことが山ほどあるということを込めて呼び止めようとしたが、反応することなく早々と消えていくのが分かった
不思議と彼女が遠くなるに連れて、自分の喋っているはずの声が聞こえなくなっていき、僕の意識も段々と薄れていくのが分かった。
結局なんでこんな話をしに僕をヘラの精神世界に連れて来たのかは分からなかったが、またヘラについての疑問が増えてしまった。
一体あの女はなんのために僕に器を与え、なんのために精神世界に連れてきて、なんのために警告をしたのかも分からず仕舞いになって終わったのが悔しくて堪らなかった。
こんなことになるなら、精神世界にこないほうがいっそ楽に死ねたかもしれない。
そう考えてしまったことを後悔するとは、この時はまだ思ってもいなかったんだ……。
この少ない文字数に7ヵ月以上もの時間を割いてしまった事をお詫びします。
読んでくれた皆様方すみません。
次の投稿もいつになるか分かりませんが、よろしければコメントや、評価お願いします。
面白い話が書けてれば良いのですが…。
次はもっと面白くしたい…………。