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魔法少女の黒猫がBOSSだったら  作者: 優勝者
Ⅳ 熱帯雨林の国 ソルマール大戦
81/119

080 適応

 黒羽たちは強化してもらう代わりにシュペルファーレン以外と戦闘し、全て終わればララはレビが連れて帰るという条件で固まった。

 そのシュペルファーレン以外というものが気になるところだが、話をしている間に狙われてもまずいのでまずは戦闘力の強化を先にしてもらう。

 黒羽たちはララも加えてレビの前へ横一列に並んだ。ドレイクがいないことを不審に思ったララには黒羽から説明した。

 レビに一つ訊いてもいいかと黒羽が言う。


「何だ」

「実は俺たちの仲間が空を飛ぶ船に待機しているんだが」

「それなら気付いている。そっちは後回しだ。それから俺からも言っておくと、強化の内容はあくまで潜在能力の解放がまず一つだ。知っているかは知らんが、下界の連中が知らされるそれぞれのレベルは戦闘に充てられるエネルギーの量に過ぎない。今のお前たちはミルも少なくないというのに最大限に使いこなせていないようだ」


 ユーベルがレベル700で功績を挙げてきていたり、黒羽がロードに呆れられたりしていたのはそういう原理だったわけだ。

 みんな知らなかったようではっとする中、黒羽はふんっと鼻を鳴らした。

 レビはなにやら正面にいる黒羽の前に両手を広げて見せた。


「本来なら修業によって得られる効果を強制的に引き出すんだ。何人かは血を吐くだろうが、覚悟はいいな」


 フミュルイもゴクリと喉を鳴らす。ルナやシロも冷や汗を流していた。

 黒羽が「いいな」と聞くと皆無言でうなづく。


「よし、頼んだ」


 レビがうなづくと、彼の両手が緑色の光を放ちはじめた。

 黒羽は少し身体が熱を帯びるのを感じ、途端に目眩がしてその場にごろんと横たわってしまった。

 げほげほとむせりながら血を吐く。一体どれだけレベルと実力にギャップがあったというのか。

 誰かが背中をさすってくれている。どうにか横目に見上げるとシロだった。

 そもそものレベルが7しかない彼女は何ともなかったようで、横たわる黒羽に必死で何事かを叫んでいるが、彼にはなにも聞こえない。

 まだ回復魔法が使える彼女が無事で良かった。黒羽はまるで酔い潰れたような気持ち悪さに襲われていたが徐々に良くなってくる。

 緑光を見てから5分ほどだろうか。シロのおかげで回復が早く、とはいえまだ気持ちが悪そうにむくむくと起き上がった。

 まだ耳が遠いが目は見えるので周りを見渡す。するとララも同様だったようで彼女はレビに凭れて介抱され、フミュルイは頭を抱えてしゃがみ込み、しらたまちゃんと黒鬼は平気で変わりなく、ルナは大の字で苦しそうに強く目をつむって深く速い呼吸をしていた。

 更に5分ほどしてようやく全員自力で立ち上がる。皮肉にもララが意外に一番酷かったようで最後まで膝に両手をついていた。だが彼女が一番影響が大きかったおかげで単純に何かしらの攻撃をされたわけではないと信じることができた。


「回復できる奴が三人もいて良かったな」

「まったくだ。しかし、どうやったら強化されたと実感できるんだ?」

「戦えば分かるさ。いつもより素早く、いつもより強く攻撃できるだろう」


 ルナがしらたまちゃんに「意外と単純なのね」と小さく言って苦笑いさせた。


「なるほどな」

「それからもう一つ教えておこう」


 黒鬼以外の視線がレビに集まる。


「ミル以上の能力があれば、相手に心から敬意を払うことであの世の連中に匹敵する能力に目覚めるだろう」

「……それって、まさか」


 しらたまちゃんが心当たりがあるのか思わず呟いた。


「知ってるのか?」

「……ベラばあから聞いたこたぁあるよ。"卑怯"な能力やらいうの。ベラばあは出来るらしい」

「え……、ずるくね」


 黒羽は少しでも場を和ませようと軽いノリで言ったのだが、シロさえくすりとも笑ってくれなかった。

 レビが淡々と続ける。


「そういう訳だ。下界でも既に使える者が数人いるとは聞いている。あまりにも強力で、その内容も十人十色かつ、中にはデメリットが大きいものもあれば無いものもある。そのうえ発動の条件が、これから殺そうという明確な殺意をもった上でそんな相手に心からの敬意を払わなければ悟ることができないという性質上、そう簡単に使えるものではない。死ぬのが嫌ならせいぜい足掻くんだな」


 ルナが舌を打つ。ベラポネに先を越されていたことが癪に触ったのだろう。

 まったくもってベラポネがそんなものを隠し持っていたとは驚いたものだ。極めた魔法使いの能力は伊達じゃないというところか。

 黒羽はレビを睨み上げる。


「なるほど、それは良いこと教えてもらったもんだ。必ずすぐに使いこなしてやる」

「まあその意気でやってもらったほうが俺もシュペルファーレンをじっくり嬲り殺しにできるというものだ。そこでその取り巻きのことなんだがな、ついさっきララを狙っていた奴を消したんでシュペルファーレンを入れて残り十体だ」

「んなっ」


 ベラポネとモナ、レビと黒鬼を入れてもドレイクを除けばこちらは十人だが、しかしシロとフミュルイはヒーラーなので実質戦えるのは八人。そのうちミル以上なのは黒羽、レビ、ララ、そしてしらたまちゃんと黒鬼と、"卑怯"が使えると分かったベラポネで六人。ルナとモナを庇いながらの戦闘と考えれば戦力差は頭数で考えても倍はある。

 そして既に善戦してきたドレイクがゼゼルらしき人物の犠牲になっていることも考えればかなりの劣勢と言える。

 ルナが不安そうに訊く。


「その十人って、一体何者なのよ? 私たちでどうにかできなきゃ、そんなの、困るんだから」

「今分かっているのは、シュペルファーレンとその右腕でもあるシャーデンフロイデという化け物の二体だが、さっき俺が消したような雑魚もまだ紛れている可能性もある——」


 もっとも、ララを殺しかけたレベルだが。


「——連中はアハダ・アシャラと呼ばれる、言わば天使族の成れの果てだ」

「なんだと」


 シュペルファーレンはゴア・ロドノフが気を付けろと言い残した言わずもがなの危険人物。そしてシャーデンフロイデは晩極戦争でサスリカ軍の一部を翻弄し、ゼゼルを連れ去ったという巨大な化け物。それに近いものがあと八体もいて、その正体が天使の成れの果てとはもはやこの世の話とは思えないレベルだ。

 みんな顔を見合わせた。

 レビは続ける。


「話は大昔に遡る。天使と悪魔で全面戦争になったことがあったそうなんだが、生き残った天使のうち十一人が戦いの中で強力な悪魔と融合し、神々に反逆した末に抹殺され、その魂が封じられたというのだが、それがどういう訳か解かれ、この下界で顕現したというのだ」

「じゃあ、シュペルファーレンが復活させたってことか」

「おそらくな。偶然か必然か、ララを捜していたらそのうちの一体がいたから消したというのが貴様らに会うまでということだ。もしかしたらこの島に他にもいるのかもしれん」


 フミュルイがおどおどした様子で黒羽に話しかける。


「も、もしかして、ドレイクさんを襲ったゼゼルって人も、そのアハダ・アシャラとかいうものになったんじゃ……」

「……考えたくないが、奴とはシャーデンフロイデに連れ去られて以来なんだ。可能性はあるだろう」


 黒羽はレビに向き直って、


「実は俺たちはついさっき、仲間の一人を見失っている。もしかしたら、最悪の可能性も考えられる状態だ。アハダ・アシャラが関わっているとなれば、一刻も早く待機させているベラポネたちと合流したい。レビも来てもらえるか」

「いいだろう。大勢でいたほうが目立つだろうしな」

「よし、それじゃあ一旦、船に集合だ」


 黒羽は全員をバリアーに包み、ベラポネたちのいる上空の船に瞬間移動した。

 その直前、黒羽はベラポネへ今から合流する旨をテレパシーで伝えようとしたのだが、返事が返ってこなかった。

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