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「ミアちゃん!昨日はごめんね!・・・でもミアちゃんもちょっと意地悪だったかな?だから仲直りしましょ?ねっ?お互いゴメンナサイしてちゃんとお友達になりましょう!・・・そのタイピン素敵ねえ!それ学校指定じゃないわよね?そんな綺麗な石のついたタイピン売ってなかったわ。ミアちゃんだけ人と違うのつけててずるいわ」


怒涛のように話しかけられてミアの頭には?マークが飛び交ったが、例によってそれが顔に出ることはない。ミアは頭の回転は速いほうだと自分で思っていたが、リリアナの言った言葉を理解するのが難しくて返答に困る。ミアが黙っているとリリアナはミアの胸元にあるタイピンに手を伸ばしてきた。

外そうとしていることが分かったので、ミアは彼女の手を振り払った。


「いたいっ!」


パン、と手をはたく音とリリアナの痛がる声が響き、クラスの全員が一斉にこっちを見た。


「大丈夫?!リリアナちゃん叩かれたの?!」


「ミアちゃんヒドイ・・いたいよぉ」


集まってきたリリアナの友人達がミアを敵意のこもった目で見る。なぜだろう?突然許可も無く胸元に手を出されれば振り払うのは当然かと思ったのだがどうやら皆の常識的には違ったらしい。

手を叩いたことだけ謝ろうかと口を開きかけたが、リリアナは友人に連れられていってしまった。クラスに残る人達も遠巻きにミアに非難がましい目線を送っていた。




ため息をひとつついてからリリアナに引っ張られた自分の胸元のタイをみると、そこにあったはずのタイピンが無くなっていた。はじけ飛んだかと床を探したが、結局それが見つかることはなかった。




***



「なぜ彼女は私に話しかけるのかしら?周りのご友人達も止めているのに」


ミアは庭に面したカフェテラスにある個室で、お茶を飲みながら愚痴をこぼす。

愚痴の聞き手はミアの幼馴染でお目付け役のフランだ。


ミアの魔力を制御できる唯一の人間として、彼は幼いころから彼女の制御役としてそばにいた。ひとつ年上のこの幼馴染は本来魔法学校へはミアより一年先に入学する歳なのだが、ミアとともに居るとフランが宣言し、一年遅れてミアとともにこの学校に来ることとなった。


途中から初等部二年生に編入となったが、学力も魔力もトップクラスのフランにとって、入学が一年遅れることなど些末な問題であったようだ。

入学してから、中等部になった今でもずっとフランは学年首席なので、特別な権限が与えられている。このカフェテラスの個室使用も首席の特権だ。ミアも自分の学年で首席なので、ランチは常にこの個室でフランと食事をしている。



「ミアちゃんそれは話しかけられているんじゃなくて絡まれているんだよ。ミアちゃんは口下手だからなあ。いいたい放題言われてそうで心配だよ」


絡まれているとはどういう意味なのだろうか?ミアは少し考えるように首をかしげた。リリアナは悪意をもって話しかけてきているのだろうか。ミアはこのフラン以外の人と深くかかわる事がないから人の気持ちに疎い自覚はある。


そんなミアをみてフランはふふ、と微笑んだ。


「小首をかしげるミアちゃんも可愛いね。まあ、そのリリアナという女子とはなるべく距離を置くように気を付けてね。向こうから絡んでくるのでは難しいかもしれないけれど」


何かあったら俺に言って、とフランは請け負ってくれた。


「フランにお願いしなきゃ解決できない事態に陥ることはさすがにないと思うけれど・・授業に差支えなければ話しかけられるくらい構わないのだけれどね・・」


そういう問題でもないけどねーとフランが苦笑いしていると午後のチャイムがなった。席を立ち部屋を出る。フランの学年とは棟がちがうので廊下で別れミアも自分の教室に向かう。



そこでリリアナとその友達とかちあってしまった。目が合うとすかさずリリアナが駆け寄ってきた。


「ねえ!ミアちゃん今そこの個室から出てこなかった?!ミアちゃんいつも個室使っているの?ええーずるーい!それに今一緒に出てきた人、生徒会のフラン先輩じゃない?あの方とお昼食べたの?やだもうずるい~~!」


相変わらず怒涛の言葉ラッシュで口をはさむ隙もない。だが『ずるい』とリリアナが言うので、きっと無断使用していると思われているのだろうと判断したミアは、できるだけ声を張って反論した。


「個室は首席のご褒美特権で使用が認められているのよ。勝手に使っていたわけじゃないわ。あと、フランは私の幼馴染なの」


良かった、今回はちゃんと言えたので理解してもらえただろうとホッとしたが、ミアの言葉を聞いたリリアナの反応はミアが思っていたものとは違った。


「ええー!!ミアちゃんだけそんな特権もらっているの?!ずっるーい!なんでミアちゃんだけぇ?!私だって個室使いたいよー!ミアちゃんだけが毎日使うなんてズルだよ!」


大声で叫ばれてミアはポカンとしてしまった。ズル?首席特権を行使することがズルに当たるのだろうか?そもそもズルって何だっけ?混乱しそうになる思考を気力でまとめ直してリリアナに言う。


「ええと、首席特権の在り方について疑問を感じるなら、今度の定期総会で意見を提出してみてはどうかしら?まずは賛同する方の署名を集めて議会に提出してみるといいわ」


「そういう事を言ってるんじゃないでしょ!嫌味いうの止めて!ねえフラン様が幼馴染なの?ずっるい!あんなかっこいい完璧人間が幼馴染なんてミアちゃんずるいー!」


そういう事じゃないのか。どうも会話がかみ合っていなかったようだ。幼馴染がずるいの意味がもうどうやっても解読できない。もしかしてリリアナの言う『ずるい』という言葉は口癖のようなもので深い意味はないのではなかろうか?そこを真面目に掘り下げたから会話に齟齬が生じてしまったのだろうか。


ミアが何と言うべきか迷っていると、リリアナは『もう!都合悪いとだんまり?!』と怒って行ってしまった。


取り残されたミアは、リリアナの言った話を何度も思い返してみたが、なせそうなるのか全く理解できないままだった。






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