表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/402

第十一話 今日は父も母も留守なので帰っても私一人なんです

「あれ、カシワバラさん?」


 毎度のごとくサシマ豆腐店、つまりキミエさんのお店で豆腐を買った帰り道で、俺はカシワバラさんの姿を見つけた。転校してきてからかれこれ一月近くになるが、思えば彼女と校外で会うのは初めてである。


「あ、コムロさん、こんばんは」

「こんなところでどうしたの?」


 カシワバラさんの私服姿も新鮮だ。ワインレッドのフレアミニにネイビーブルーのシャツ、その上から襟にレース飾りが付いたベージュのピーコートを羽織っている。コートの裾から僅かばかり覗くスカートがめちゃくちゃ可愛い。そしてやっぱりカシワバラさんはエロい。


「お散歩してたら迷っちゃいました。実はちょっとだけ途方(とほう)に暮れていたところです」


 言いながら恥ずかしさを紛らわすためなのか、カシワバラさんはペロッと舌をだす。エロい上にそんな可愛い仕草されたら子作りしたくなっちゃうから許して。おっといかんいかん、俺にはユキさんとアカネさん、未確定だけどサトさんというスリートップが控えているのだ。いくらカシワバラさんが可愛くても、この三人の順番を崩すわけにはいかない。それにしてもカシワバラさんからは相変わらずほんのりといい香りが漂ってくる。


「どこに帰るの? 俺でよければ送るよ」

「えっと……オガワ村です」

「ああ、それなら隣村だよ。ずいぶん近くに越してきたんだね」

「そうなんですか? あの、それではお言葉に甘えてしまってもいいですか?」

「いいよ。じゃこれ置いてくるからここで少し待っててくれるかな」

「はい、お待ちしてますね」


 俺の住むヒガ村とオガワ村は隣接していて、それぞれの村長の家は歩いて小半時(こはんとき)、だいたい三十分くらいの距離にある。さらに村長たちの仲がいいため村人同士の交流も盛んで、税など形式的なものを除いて両村の垣根はないに等しい。俺は買ってきた豆腐を母ちゃんに届けてから、再びカシワバラさんの(もと)に戻った。


「お待たせ。行こうか」

「はい……あの……」

「うん?」

「どうしてコムロさんは私によくしてくれるんですか?」

「え? うーん、特に意識はしてないんだけど」

「コムロさん、すごくカッコいいから絶対女の子にモテるはずなのに、クラスでも私のことを気にかけてくれているみたいですし」


 実は未だにカシワバラさんはクラスに馴染めていなかった。容姿のせいで男子からはあまり相手にされず、俺と仲よくしていることで女子からも敬遠されているのだ。つまり彼女の現在の状況は、言ってみれば半分は俺の責任のようなものなのである。そんな彼女を放っておくことなど出来るわけがない。それにカシワバラさんは顔もスタイルも俺好みだしエロいし、とはさすがに言えないけどね。


「カシワバラさんと話してると楽しいからかな。あんまり深い意味はないよ」

「たの……そんなこと言われたの、初めてです」


 ウソです、ごめんなさい。いや、決して楽しいというのがウソというわけではないけど、実は第四夫人辺りに迎えたいという下心で溢れかえってます。それにしてもカシワバラさんは陽が落ちて暗くなり始めているのに、はっきり分かるほど頬を染めている。可愛い、抱きしめたい。


「そうだ、よかったらうちでご飯食べて行きませんか? 今日は父も母も留守なので帰っても私一人なんです」


 な、なんですと! それはご飯の後に私もどうぞ的な展開を期待してしまうじゃないですか。


 でも待て、それでついこないだも大変な目に遭ったばかりじゃないか。アタマでは分かっていてもそういう状況になった時に、俺は自分にブレーキがかけられないことを身をもって学んだはずだ。しかもまずはユキさん、次にアカネさん、そして未確定のサトさんからのカシワバラさんじゃないと将来設計が狂うどころか、男爵閣下に知れたら俺の命すら危うくなる。ここは欲望を抑えて冷静にならなければいけないと思う。


「それじゃご馳走になろうかな」


 っておい俺、何言っちゃってくれてんのさ。しかしそう応えた時のカシワバラさんの嬉しそうな表情を見て俺は考えを改めた。きっと彼女は本当に好意で食事をご馳走してくれると言っただけだ。(よこしま)なことを妄想するのはやめようと。


 それから俺たちは小ぎれいな一軒家、カシワバラさんの住む家に辿り着いた。

///////

次回はちょっとドキドキシーンあるかも。

///////

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


本作の第二部は以下となります。

暴れん坊国王 〜平凡だった俺が(以下略)〜【第二部】

こちらも引き続きよろしくお願い致します。

ブクマ頂いて応援してと嬉しいです(*^_^*)
ストックはすでに五話ほどあります。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ