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第六話 いつかユキさんの手作り料理も食べてみたいな

 困ったことになった。昼休みにいつもの校舎裏、つまりユキさんとの待ち合わせ場所に行こうとした俺はカシワバラさんに呼び止められたのである。


 まだクラスに友達がいない彼女は、昼休みを俺と過ごしたいと言ってきたのだ。もっともそれだけなら先約があるからと断ればいいのだが、俺を誘ったことでクラスの女子から反感を買ってしまったようだ。モテる男は辛いよ、などと言っている場合ではない。このまま俺がカシワバラさんを置いて行ったら、彼女は完全に孤立してしまうことになるだろう。転校初日でさすがにそれは可哀想すぎる。


「えっと……一応先約があるんだけど……」

「あ、そうですよね。コムロさん、モテるでしょうし」

「そんなことはないんだけど」

「大丈夫ですよ。先約の方を優先して下さい」


 カシワバラさんは笑顔だったが、やはり寂しそうな雰囲気を隠し切れていない。俺、そういうのに弱いんだよね。


「カシワバラさんも一緒に行く?」

「でも……」

「大丈夫、向こうには俺が説明するから」


 選択肢としてユキさんをすっぽかすということはまず考えられない。かと言って昼休みの時間は限られているのだから、双方に時間を割くということも現実問題として無理があると思う。それにユキさんに隠れてカシワバラさんと過ごすというのも気が引ける。となれば答えはこれしかないだろう。そこで俺はカシワバラさんを伴って待ち合わせ場所に向かうことにしたというわけだ。


「あ、ヒコザ先輩、遅かったです……ね……そちらの方は?」


 先に着いていたユキさんは俺を見つけて満面の笑みだったが、後ろから付いてきたカシワバラさんに気付いて一瞬で(いぶか)しげな表情に変わってしまった。


 俺は遅くなったことを謝ってから、慌ててユキさんにカシワバラさんを紹介する。


「そうですか、今日転校されて。初めまして、タノクラ・ユキと申します」

「は、初めまして、カシワバラ・スズネです」

「ところでカシワバラさん、転校されてきたばかりでお友達がいないのは分かりますが、どうして()りによってヒコザ先輩に付いて来られたんですか?」

「あ、あのね、ユキさん……」

「ヒコザ先輩、私はいじわるで言っているんじゃないんです。転校初日でヒコザ先輩を誘ったらそれこそ皆、特に女子の反感を買ってしまうんじゃないですか?」


 ユキさんなかなか鋭い。俺はこれでも一応イケメンなので、実は昼休みなどは多くの女子に誘われるのだ。それを全て断っている手前、転校してきたばかりのカシワバラさんが誘い出しに成功したということになるとやっかみがキツくなるというわけである。ちなみにこうして人目を避けてユキさんと二人でいたのは、今のところ運良く誰にも知られずいる。


「そうですね……」


 ありゃりゃ、カシワバラさんがシュンとしちゃったよ。


「まあ、幸いヒコザ先輩がここに来ていることは知られていないようなので、来るなら今後は別々に来るようにした方がいいと思いますよ」

「え? それじゃユキさん……」

「だから私はいじわるで言っているわけではないと言ったじゃないですか。それにお昼に独りは寂しいですから……」


 そうか、ユキさんも俺と知り合う前はいわゆるボッチ飯というやつだったみたいだ。そこへ俺が半ば強引に押しかけてきたわけだが、独りで食べる食事はおそらく味気ないものだったのだろう。そんなユキさんを放っておくことが出来なくて、学年が違う関係で二六時中(にろくじちゅう)というわけにはいかないまでも、学校ではなるべくユキさんと一緒にいるようにしているのだ。


 余談だが四六時中ではなく二六時中といったのは、この世界の一刻(いっこく)は約二時間で昼と夜がそれぞれ六刻、それらを足した一日が十二刻であるためである。


「タノクラさん、お優しいんですね」

「うん、ユキさんは優しいんだよ」

「なっ! せ、先輩まで変なこと言わないで下さい! 何も出ませんよ……」

「そう言わずに、いつかユキさんの手作り料理も食べてみたいな」

「手づく……わ、分かりました。そのうちですよ、そのうち!」

「まあ! では明日は二人でコムロさんのお弁当も作ってくるというのはいかがでしょう?」

「えっ!?」

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本作の第二部は以下となります。

暴れん坊国王 〜平凡だった俺が(以下略)〜【第二部】

こちらも引き続きよろしくお願い致します。

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ストックはすでに五話ほどあります。

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