第五話 くじ引き?
「皆の者、よくぞはるばる訪ねて参られた」
食堂に俺とユキたん、アカネさん、アヤカ姫が揃って入ると、オオクボ王国からやってきた七人の元クラスメイトや後輩たちが和やかに迎えてくれた。特にユキたんのクラスメイトだった女子三人は、俺を見て瞳をキラキラと輝かせている。
「積もる話もあるがまずは食事としよう」
「皆さん、きっとこのお料理は食べたことがないと思いますよ」
ユキたんがそう言うと、全員が箸を手にする。そして勢いよく食べ始めたのは、やはり剣術部の三人だった。
「う、うめえ!」
「本当、これは美味しいですね」
クラス委員のムラカミさんも一口食べて目を見開いている。普段クールだった彼女がこんな表情を見せてくれるとは意外だ。それから一通りの食事を終えたのだが、案の定剣術部の三人はそれぞれ二回ずつお代わりをもらっていた。まあ二十人分を作らせたのだから、ツッチーとマツダイラ閣下の分は残っていることだろう。
「美味しかった〜」
「それはよかった。ところで皆はどうしてこのタケダに?」
「一つにはこれです」
そう言ってムラカミさんが一通の書簡を差し出した。それを控えていたメイドさんが受け取り、俺に手渡してくれる。
「これは?」
「オオクボ国王陛下からのものです」
「読ませてもらおう」
書簡にはオオクボ王国が東のダテ王国と同盟を結び、その南のアシナ王国を平定したとあった。アシナ王国は長い間ダテ王国と小競り合いを続けていたが、オオクボとの同盟により一気に片が付いたそうだ。
「どのくらいの犠牲を払ったのだ?」
「私がオオクボ陛下から聞いたところでは、同盟を結んだ途端にアシナ王国が降伏したということでした」
「オオクボ王国には、帝国の軍勢七万をわずか三百の軍で全滅に追いやったタケダ王国が付いていると知って怖じ気づいたみたいですよ」
補足してくれたのは剣術部副主将のカタクラ君だった。それにしてもあの戦のことが、そんな遠いところまで聞こえていたとは驚きだ。まあ、そのお陰で一人でも人が死なずに済んだのなら良しというところだろう。もっともちょっと情報の中身はねじ曲がっているけどね。
「ムラカミ殿、先ほど一つにはと申されたようだが、他の理由も聞かせてもらおうか」
「はい。それではカタクラ君から」
「陛下、そしてアカネ妃殿下、お聞き下さい! とうとう我が剣術部は大会にて一勝を挙げることが叶いました!」
おお、それはめでたいことだ。よかったよかった。
「それどころか我々は対戦相手にも恵まれ、何とその後四回戦まで駒を進めることが出来たのです!」
言ったのは別の剣術部員である。
「それは快挙ではないか!」
「はい。あと一勝で準決勝でしたがそこで我々の運も尽きて王城騎士団と当たってしまい……それでも悲願の勝利に加えて三回も勝てたのです」
「素晴らしいことですね」
アカネさんも嬉しそうにしている。
「それでわざわざ報告にきてくれたというわけか」
「いえ、実はそれだけでは……」
「私から陛下に申し上げます」
再びムラカミさんが話を引き取った。
「私たち四人はオオクボ陛下のお許しを得て、このタケダ王国で槍剣術の道場を開くために参ったのです」
「槍剣術?」
「槍術と剣術を合わせたものです。槍術は長い分有利ですが、槍先より近づかれては致命的となります。そこで剣術と合わせて接近戦でも戦えるようにするのです」
なるほどね。それぞれ別々に極めた方が強くなれるんじゃないかと思うけど、オオクボ陛下が許したというなら俺に断る理由はない。
「しかし其方ら、学業はどうするのだ?」
「道場を開くことで免除となりました。ですからどうか陛下にお許しを頂きたいのです」
「よかろう。後ほどツチミカドから手続きについて聞くといい」
新たに道場を建設する土地も、こっちで探しておくことにした。それにしてもムラカミさんは、初めてユキたんやアカネさんと会った時にはかなり敵意を持っていたと思うんだけど、今はその様子がまるでない。もっともすでに彼女は俺の妻であり王妃だからね。立場が全く違うのだし当然と言えば当然である。
「それで、残りの三人は?」
「私たちはコム……陛下のご尊顔を拝させて頂こうと思いまして」
なんだ、要は単に俺に会いに来たというわけか。でもそんな理由でよくオオクボ陛下が許したもんだな。てか今コムロって言いかけたよね。大丈夫なのか、この三人。
「彼女たちはくじ引きで当たったんです」
「くじ引き?」
来たよ、衝撃の新事実。ムラカミさんがクスクスと笑いながら話を続ける。
「今回のタケダ王国訪問で、私たち四人の他にあと数名を向かわせるということになりまして」
その人選がくじ引きで行われたとのことだった。希望者はかなりの数だったらしいのだが、狭き門をくぐり抜けたのが目の前の三人ということだ。
「そうか。まあゆっくりしていくといい」
「あの、陛下!」
「うん?」
三人のうちの一人が勢いよく手を挙げて俺を呼ぶが、何だか嫌な予感しかしない。そしてこの後、俺が感じた通り彼女はとんでもないことを口にするのだった。




