第三話 そんなことをして誰が喜ぶ?
本章のフルバージョンは【R18版】として以下で公開してます。
https://ncode.syosetu.com/n0244fd/
※目次ページの下の方にリンクを貼ってありますので、そちらですとクリックまたはタップで飛べます。
。
こちらは18歳未満の方は閲覧出来ません。
「アヤカ様、朝食の準備が出来たそうですよ。そろそろ起きて……くだ……さ……何やってるんですか!」
「ちっ!」
突然扉を開いて満面の笑顔で入ってきたユキたんだったが、ベッドの上で重なっていた俺とアヤカ姫を見て鬼の形相に瞬間変化していた。てかアヤカ姫、今ちって舌打ちしましたよね。
「ヒコたん! これはどういうことですか? アヤカ様も!」
「妾はヒコザに押し倒されて……」
「ちょ、待って! それは……」
「ヒコたん、私もヒコたんがアヤカ様を押し倒していたようにしか見えなかったんですけど!」
さすがに王族のアヤカ姫を床に座らせるわけにはいかず、彼女はベッドの上にいたままだった。しかし俺は案の定また石の床に正座させられている。この光景は懐かしくて涙が出そうだけど、俺は今この国の国王だっていうのにユキたん酷いよ。
「だからあれは、つまり……」
「もうよいわ、興が冷めた。ユキ、ヒコザは悪くない。この男は妾の色仕掛けにまんまと嵌められたのじゃよ」
この後のアヤカ姫の説明で、ユキたんは今の出来事に関しては理解してくれたようだ。ただ理解はしてくれたのだが、納得してはくれなかった。
「ヒコたん、今後一人で私以外の女の子の部屋を訪れるのは禁止します。それからアヤカ様も、ちゃんと約束は守っていただかないと」
「約束?」
「ヒコザと最初に契るのはユキ、次がアカネという具合にそれぞれが序列を守るという約束じゃよ」
「いつの間にそんな約束を……」
俺が苦笑いしながら呟くと、ユキたんがジロッと睨んできた。
「ヒコたんが流されやすくて不甲斐ないからです! 母の時といい、ちょっと女の子に迫られるとすぐふらふらしちゃうんですから」
「あ、あはは」
面目ない。
「じゃがのユキよ」
「何ですか?」
「そちもヒコザのことばかり責められんと思うぞ」
「どうしてですか?」
「そちが早くヒコザを鎮めてやらんもんじゃから此奴、ちょっと突いただけで破裂しそうなほどに膨らませておったぞ」
「アヤカ姫!」
「つ、突いたって……」
ユキたん、どうして俺の股間に目をやるのかな。それに突かれてないからね。膨らませていたのは事実だけど。
「分かりました。ヒコたん、今夜は私の部屋で褥を共に。私も心の準備をしておきますので、くれぐれもお忘れにならないように!」
心の準備って、もうとっくに出来てるものだとばかり思ってたけど。でもそうだよね。俺もいつまでもこのままではいけないと思う。
「わ、分かった」
「ならば妾は後学のためにそれを見学……」
「却下です!」
俺とユキたんの声が見事にハモった瞬間だった。
「では改めて問おう。アヤカ姫、政の秘策というのを申すがよい」
朝食を済ませた俺と五人の妃、マツダイラ閣下とイチノジョウ王子の側近だったオオノ・ショウゴロウさん、家令のツッチーが会議の席に着いていた。
本来ツッチーは家令なのだからこのような席には同席しないのだが、是非ともアヤカ姫の秘策を聞きたいということで許したのである。それに長くオオクボ陛下の家令を勤めていたということで、何か意見があれば聞いてみたいしね。代わりにおナミちゃんが茶などの給仕を受け持ってくれている。この会議の内容はまだ、元からいた城の人たちに聞かせるわけにはいかないから仕方ないだろう。
ちなみにババさんは騎馬隊の隊長ではあるがこの場にはおらず、今はマツダイラ閣下に託されたスケサブロウ君と馬術の猛特訓に励んでいるはずだ。
「うむ。妾がまず考えたのはこの国に人を集めることじゃ」
「それはそうでしょうね。人がいなければ国は栄えませんから」
マツダイラ閣下の言葉にオオノさんも大きく頷いている。
「そうじゃ、だが現実はオダの流した噂のせいで、どんどん人がオダ方に流れ出ておる」
「ではアヤカ妃殿下は国境を封鎖せよとのお考えでございますか?」
「そんなことをして誰が喜ぶ?」
そうだ、かつてタケダは前国王の死をオダに覚らせないために国境を封鎖したことがあった。そのせいでオダに攻め込む理由を与えてしまい、現在に至っているわけである。誰も喜ばないし政策としては意味をなさないだろう。
「では他にどのような方法があるというのです?」
「トモヤス、妾が考えておったのはな、その真逆のことじゃよ」
「真逆? それは一体……」
この後のアヤカ姫の話には、その場にいた誰もが驚いていた。もちろんツッチーも含めてである。彼女が掲げた政策とは、いわゆる自由貿易のことだった。




