第十五話 私たちでは嫌なんですか?
神様ゲームのルール、それは神様の命令は絶対に実行しなければならないということである。とは言えさすがに子作り行為はなしということにした。だってそうでもしないとこの子たち、本当に命令しかねない、というかしようとしてたし。で、それに繋がるキスとかお触りもなしにしたのだが、アカネさんの命令は盲点だったよ。
「じゃ、二番と四番の人が立ち上がってパンツを見せて下さい」
「アカネさん……」
姫君は白い襟にライトブラウンのワンピースで、腰には同じ色のベルトと裾に白のフリルがあしらわれた清楚な雰囲気だ。しかし他の四人は示し合わせたかのように色違いのキャミワンピ姿である。しかも普通に座っただけでもパンツが見えそうなくらいに丈が短い。まあ夏なんだし涼しげと言えばそれまでではあるが、皆して太股を出しまくってるから俺は不用意に立ち上がることも出来ないというわけだ。要するに前屈みというやつである。それがよりによって……
「二番は私でした」
最初に立ち上がったのはカシワバラさんだった。彼女はレモンイエローのスカートの裾をためらいがちに捲ったが、返って色っぽさを醸し出している。その上立つ時にわざわざこちらに体を向けたようで、パンツが白だって思わず見えちゃったじゃないか。
「ふふ、コムロさん、顔が赤いですよ」
「な、なな、何を……!」
気恥ずかしさのあまり目を背けた俺だったが、逸らした視線の先には不自然に太股が露わになったユキさんがいた。しかも閉じているはずの太股の付け根からは、わずかではあったが白とピンクの縞模様が顔を覗かせていたのだ。更に彼女が身につけているのは白のキャミなので、見えていない部分までうっすらと透けているといった状況である。たださすがにユキさん自身も恥ずかしいようで、顔を見ると真っ赤になっている。そんな恥じらった様子も含めて、男の俺からするとめちゃくちゃ刺激が強すぎるよ。
「ところで四番は誰なんですか?」
そこでサトさんが五と書かれた棒をひらひらと振りながら周りを見回した。
「私は一番でしたわ」
「私三番です」
「あら、そんなに裾を上げているので、てっきりユキ殿かと思いましたのに」
皆一様に不思議そうな表情で互いの顔を見合わせた後、ハッと息を呑んで俺に視線を向けてきた。だから今は立ち上がれないんだってば。
「四番はヒコザ先輩でしたか」
「そ、そうだけど、俺のパンツなんて見ても面白くないでしょ?」
「先輩ダメですよ。神様の命令は絶対なんですから」
「そうですコムロ様。それに私はコムロ様がどんな下着をお召しになっているのか、とても興味があります」
「ご主人さま、神様の命令です。立ってズボンを下ろして下さい」
「ヒコザ様、冥土の土産にぜひ」
姫君、あなたはもう自分の境遇をネタとして使ってるでしょ。てかユキさんもアカネさんも、どうして両脇から絡めた腕を持ち上げて俺を立たせようとしてるのさ。そしてサトさんとカシワバラさんは何故俺の前に回ってベルトの辺りを凝視してるの。
「ユキさん、アカネさん、お願いだから今立ち上がらせないで!」
「あら、どうしてですか?」
「ご主人さま、観念して下さい」
「いや、だから……!」
まずいよ。甘い香りと両脇の柔らかい感触が意思とは裏腹に更に俺を興奮させて、股間のいきり立ちに拍車をかけてしまっている。だが踏ん張りが効かない今の状況では、女の子二人の力でも簡単に負けてしまいそうだ。
「アカネさん、せいのでいきますよ」
「はい、お嬢様、せいの!」
「ま、待って!」
しかして抵抗虚しく俺は二人に立ち上がらされ、すかさずくノ一として鍛えられたカシワバラさんにズボンを脱がされてしまっていた。
「あら……」
「まあ!」
その刹那、彼女たちの眼前に姿を現したのは、孤高の山のように誇らしげにそびえ立つ俺のワンポールテントだった。それを見たユキさんとアカネさんはようやく絡めた腕を緩めてくれ、俺は慌ててその場にしゃがみ込んだ。何だか男女で立場が逆転してしまったようだよ。恥ずかしいったらありゃしない。
ところがそんな俺の姿に、アカネさんの中で別のスイッチが入ったようだ。
「皆さん、これではご主人さまの立場もないでしょうし、いっそこのまま順番に子作りして頂きませんか?」
「い、いや、だからそれは!」
「先輩、もしかして私たちでは嫌なんですか?」
「そうじゃないけど……」
とんでもないことになってきたぞ。確かにこれでお開きになったら俺の立場はないし、この後も気まずい雰囲気だけが残ってしまうだろう。それに何より俺の理性も収まりがつかない状態になっている。
「では!」
「皆、本当にいいの?」
俺は未来の嫁四人と幽霊一人を見回して、いよいよと覚悟を決めるのだった。




