第十四話 立ち上がってパンツを見せて下さい
「姫君、霊力とかで嵐を鎮めることって出来ませんかね?」
昨夜以来、俺の隣にはユキさんがピッタリと寄り添っている。しかも腕を絡めて体を密着させているので、非常に嬉しい状況ではあるが身動きしにくくてどうしようもない。ちょっとでも動くと、いや動かなくても胸は当たってるし、反対側はアカネさんが同様に巻き付いてきているのだ。
サトさんとカシワバラさんはさすがに離れてはいるが、背後の非常に近いところ、それこそ吐息がかかるほどの距離にいる。ほのかに漂ってくる甘い香りに理性が吹っ飛びそうだよ。
「幽霊は神様ではありませんわ。そんな非常識な力があるわけこざいません」
「幽霊も充分非常識だとは思いますけど」
「ユキ殿、呪いますわよ」
「ひっ!」
姫君、今ユキさんを脅かすと俺が気持ちいい、じゃなくてさらに身動き取れなくなるので勘弁して下さいよ。
「ユキさんも姫君もとにかく落ち着いてってば」
「この嵐では海水浴どころではありませんものね」
「スズネちゃんも私も、コムロ様と海で遊ぶのを楽しみにしてましたのにね」
スズネちゃんとはカシワバラさんのことである。サトさんは彼女のことをこう呼ぶことにしたそうだが、未来の嫁同士仲良くしてくれているというのはいい傾向だと思う。
「嵐も今日中には治まって、明日はきれいに晴れるみたいですよ」
「それはよかった」
朝食を運んできた女将は俺たちの話を聞いていたようで、テーブルに食事を並べながらにこやかに教えてくれた。それなら今日一日は外に出ずに温泉に浸かったり、何か皆で出来そうなゲームでもして過ごせばいいだろう。どうせなら王様ゲームとかやってみたいが、女の子たちは誰一人歯止めが効きそうにない。そんなことを考えていたら、まるで俺の心を見透かしたかのようにアカネさんがとんでもないことを言い出した。
「それでは今日は皆で神様ゲームをしませんか?」
「神様ゲーム? 何ですのそれは」
「神様の言うことは絶対、というゲームです」
「アカネさん、神様の言うことは絶対って、それ当たり前じゃない?」
ユキさんが訳が分からないという表情で苦笑いしている。違うよユキさん、それはきっと俺が思っていた王様ゲームと同じでとっても危険なゲームだから。
「お嬢様、神様ゲームというのはですね……」
案の定、アカネさんが説明したゲーム内容は王様ゲームそのものだった。姫君を含めた女の子たち全員が身を乗り出して興味を示したのは言うまでもないだろう。
「それはつまり……この場で先輩との子作りも……」
「きゃあ!」
「コムロ様と……子作り……」
「まあ!」
「待った待った! 子作りとか際どいのはなし!」
正直なことを言うと、出来れば俺だってそういうことはしてみたい。ここにいるのは姫君を除いて未来の嫁なのだし、彼女たちが望むなら俺に断る理由はない。ただ皆して積極的なのはいいと思うけど、一度に全員というわけにはいかないよ。順序だってあるし、何より初めてのことだから一人一人とコトを成就したいんだ。
「まあ、確かに皆様が見ている前でそのようなことをするのは気が引けますわ」
姫君、まさかやる気満々だったんですか。
「そうですね。それにまだ朝ですし、私としては先輩とゆっくり過ごしたいと思いますので」
ユキさん、夜ならいいって言うんですか。でもゆっくり過ごすというのは大賛成です。
「ご主人さま、私は今日も大丈夫な日ですよ」
アカネさんに大丈夫じゃない日って今まであったっけ。てか大丈夫って何が。
「私はコムロ様がお望みならいつでもいいですよ。きゃっ!」
サトさん、きっとその日はやってきますから少し待ってて下さいね。
「コムロさん、いつかの続きを」
ちょ、カシワバラさんは何を言い出すのかな。ユキさんの目つきが怖くなったんだけど。
「皆が寝静まった頃に……」
姫君、そんなことを皆の前で言ったら俺が一人でいる時間がなくなりますから。
そして神様ゲームは俺の言った通り際どい命令なしということで始まったのだが、最初に神様棒を引いたアカネさんがとんでもないことを言い出した。
「じゃ、二番と四番の人が立ち上がってパンツを見せて下さい」




