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放課後シリーズ

3月7日の放課後

作者: いときち

3月7日、仲の良いグループの私たちは、グループの一人、紺野くんの好きな人を突き止めるべく、放課後喫茶店に寄った。

そこで、私たちはいつも通りお喋りして、いつも通りささやかなバカをした。


高校生たちが集まったら、こんな風になるんじゃないかと思って作った話。処女作です。

放課後、学校から徒歩10分のところにある小さな喫茶店には男女二組の生徒の姿があった。趣のある雰囲気の店内は、まるで高校生が帰りに寄るような店ではなかったが、メニューはどれも学生向きの値段であり、知る人ぞ知る立ち寄り場となっていた。



カフェラテの香ばしい香りを楽しみながら、私は正面に座る男子生徒、紺野翔に目をくれた。いつも柔和な笑みを浮かべている彼は、最近好きな人ができたらしいのだ。なんとしてでも誰なのか突き止めるべく、いつも一緒に行動するメンバーでこの店に立ち寄ったのである。




「で、誰なのか教えてくれるよね?」

私の隣に座る小川由梨が紺野くんを嬉々として問い詰める。彼女の飲むアイスチャイも美味しそうだ。あとで一口貰おう。

「そうよ。今井にも教えてないんでしょう?強情すぎよ」

まさか、彼とできている、という噂をもつ今井空まで知らないとは思わなかった。部活のない日、私は講習を受けて帰るが、紺野くんと今井は一緒に帰っているはずだ。

彼らは2人してクリームソーダを飲んでいたが、今井のグラスに入っていたはずのミルクアイスのぶんも、紺野くんのグラスに入っている。ミルクアイスが嫌いなら頼まなきゃいいのに、今井が紺野くんと同じものを頼んだからだ。



「まさか、好きな人が今井って言い出すんじゃないわよね?」

ボソッとつぶやいた言葉に、彼らはテーブルの向こうでお互いの体をのけぞらせた。

「俺はノーマルだ!というか、俺の好きな人知っているだろう、白石!」

今井がそう怒鳴るが、それだけ君たちが仲の良いのか悪い。それに、今井の好きな人は男子嫌いだし、正直成就はしないと思う。



「いやいや、それから変わったかもしれないじゃん?」

彼らに茶々を入れる由梨ちゃんの手からグラスを奪い、一口飲む。生姜よりシナモンが効いていて、なるほど、由梨ちゃんが毎回頼むだけある。

不満げに見つめてくる彼女の頭をヨシヨシと撫で、正面の彼らをみる。

「お幸せにね」

「だから違うって!」

微笑みながらいうと、紺野くんにまで全力で否定された。つまらないの。




それから紺野くんの好きな人を突き止めつつ、他の雑談などをしていて、そろそろお開きの時間になった。まだ突き止められてはないけど。やっぱりこの人、強情だ。

「そういえば、美希ちゃんには好きな人いないの?」

由梨ちゃんが唐突に、首を傾げそんなことをいいだした。

「いないわ」

半年前、3年間の片思いをふられて終わらせた私は、それから誰にも恋してない。なんていうか、気になる人はいるものの、そこまで……というか、気になる人には、こうやって誰なのかは口を割らないものの好きな人がいるんだし、もう諦めている。

「え、白石いないの?」

紺野くんがからかいを含んだ声で言ってきたので、それはテーブルの下で足を蹴って黙らせる。




「じゃあ、この3人のなかだったら、誰と付き合う?」

由梨ちゃんがきいてくるが、ちょっと待った。何故に君が入る。君は女だろう。

「とりあえず由梨ちゃんは却下ね」

「ひどい!私、美希ちゃんのこと愛しているのに!一緒に寝た仲じゃない!」

思わず頭を叩いた。変な誤解を生むような発言をするんじゃない。合宿のとき、お前が勝手にベッドに入ってきただけだろう。

「ふたりとも、そういうかんけ……。嘘嘘、ごめんって」

今井までのるんじゃない。そして由梨ちゃんも笑顔で頷くんじゃない。

「この中なら、紺野くん以外いなくない?」

「まあ」

「消去的にな」

2人は同意するが、紺野くんは困ったような照れ笑いだ。そりゃあそうだろう。こんな状況、笑うしかない。





「ばいばーい」

「また明日ね」

私と由梨ちゃんが手を振ると、彼らも手をひらっとふって、夕暮れのプラットホームへ降りていった。2人で用事があるらしい。

「女子のおおい部活だと、この時期大変なんだよ。金銭的に」

今井が遠い目をしていた。合掌。






その一週間後のホワイトデー、紺野くんからのバレンタインのお返しの時に、先週の彼の笑みの意味と、彼の好きな人を告げられるのはまた別の話。そして、リア充爆ぜろと言っていた私が、リア充爆ぜろと言われる側に回ったのも、また別の話。

私こと白石美希は、言葉よりも手が先に出るタイプなので、半年前ふられました。

紺野くんは、別にそれでも良かったようですが、彼が決してMだったわけではありません。本人の名誉のために。


実は今井と由梨、紺野くんの好きな人が誰だか知っていたりしてました。SMSの個人チャットで名前をどんぴしゃで当ててしまったので。それでもなお紺野くんを問い詰めていたのは、紺野くんへの愛のある嫌がらせです。

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