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Fast story~開演~  作者: 内田美紀
第一章 出会い
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第2話 挨拶

◇ ◇ ◇~奏真視点~


 最初に切り出したのは彼女の方だった。彼女はくるりと体を俺の方に向けた。


「こんにちは」


 彼女は微笑みながら言う。その姿は女神そのものだった。

 口からこぼれた声は見た目通り清んだ綺麗な声だ。ずっと聞いていたい。


「こ・・・こんちには」


 つい、頬に熱がこもる。

 ・・・・・・おい、しっかりしろ。はっきり答えるんだ!こんな美人見たことないからって、ボーッとしてんじゃねぇ!・・・・・いや、まあ、こんな美人見たら誰でもこうなりそうなのだが。って言い分けすんな。男を見せろ!見惚れるなあぁぁぁ!!!!


「山に来た大学生の方ですか?」

「はい、そうです。あの、貴女は?」


俺えぇぇ!!!!!!しっかりしろおおぉぉぉ!!!!おい、お前は馬鹿なのか。普通、自分の自紹介が先だろおおおぉぉぉうううぅぅ!!!!!!


俺の動揺を悟ったのか、彼女は口に手を当ててクスリと笑った。


「鷲谷蛍子と言います。蛍子と呼んで下さい」


 わしたに・・・・・・?どこかで聞いたような・・・・・。

 っていうか、名前で呼んで欲しいと言うことは、仲良くしたい、と受け取っても良いかな?


「松坂奏真です。奏真って呼んで下さい」 


 仲良くして下さい。貴女みたいな人と仲良く出来るなんて、大歓迎です。

 俺がそう言うと、蛍子さんは更に笑みを深めた。


「じゃあ、今日はサークルの企画か何かで来たんですか?」

「そうです。今日は紅葉狩りに来ていて・・・・・」

「い、今ですか?落ち切っちゃってるんですけど」

「そうなんですよねー・・・・」


 やっぱりそう思っちゃいますか。と、そこで俺はあることを思いついた。


「あの、よければ、一緒にどうですか?これから焼き肉するんですけど」

「良いんですか?是非、参加させて下さい!」


 こんなに喜んでくれるなんて、いい人だなあ。


◇ ◇ ◇~蛍子視点~


 確か今日は山に大学生のサークルが来ているって父さんが言ってましたっけ?


「山に来た大学生の方ですか?」

「はい、そうです。あの、貴女は?」


 彼はそう言ったとたん肩を落としました。

 どうしたんでしょうかね?すごく「後悔してます」って感じの顔してるんですけど。私は思わず笑ってしまいました。気分を悪くしましたかね?

 そう思って彼を見たのですが、嫌な顔はしていなかったので良かったです。彼は少し驚いた顔をしていました。


「鷲谷蛍子と言います。蛍子と呼んで下さい」


 親しくなりたいです、と言外に含みました。彼は気付いたのか、気付いていないのか、同じ事を言ってきました。


「松坂奏真です。奏真って呼んで下さい」


 これは、同じ意見と思っても良いんですかね?


 とてもすてきな人だと思いました。

 見た目良くて、中身悪し。なんて人しょっちゅう見るんですけど、この人、奏真さんは嫌な感じもしませんし、物腰柔らかで、丁寧です。

 正直言って、ものすごくタイプです。私は、優しい人が良いです。おもしろいとか、クールとか言うのは次の2です。人が良ければ、外見は無視できるんですよね。ほら、美人は三日で飽きるが、不細工は三日で慣れるって。でも奏真さんは外見も良いので、完璧です。厳しそうな見た目なのに、かなり表情豊っていうギャップも良いです。

是非とも、お近づきになりたいです。


「あの、よければ、一緒にどうですか?これからバーベキューするんですけど」


 奏真さんからお誘いが来て、本当に良かったです。私が誘ってもすることなんてありませんからね。せっかくのお誘い、断るわけないですよ。


「良いんですか?是非、参加させて下さい!」


 彼は、嬉しそうに笑い、キュンと来ました。顔とのギャップが良いです。案外表情豊かですね。


 サークルのバーベキューに参加することになりました。私のサークルには、通常のサークルとは活動内容が大きく違い、こういう、サークルでよくありげなこともやったことないんです。家族とか、友人の中ではやりますがね。

 バーベキューをするという場所まで、二人で喋りながら行きました。奏真さん、話上手ですね。会話がまったく途切れません。女としては嬉しいかぎりです。私たち喋るのが大好きですから。

 彼のサークルも変わったサークルのようですね。彼のサークルは、留学生のお世話をする、学校が作ったサークルらしいです。留学生の勉強の手伝いや、日本観光名所の案内。それから留学生からの質問などを、正確に答えることが役割だそうです。だから英語・ドイツ語はもちろんのこと、ポーランド・スペイン・イギリス・中国・韓国・ブラジル・エジプトなど、エトセトラ。英語・ドイツ語はこのサークルに入る最低条件で、あとの言語は独学やら、逆に留学するやらで身につけるらしく、それぞれ、英語・ドイツ語以外の2,3つの言語が話せるそうです。結構ハイレベルですね。サークル長は一人で喋れる言語が10種を超えているそうです。さすがに頬が引きつりました。小さい頃から両親の仕事柄、様々なところを転々としていったそうです。


 ・・・・・・そんな事で身につくんですね、外国語。両親はどんな仕事をしていたのでしょう。


 それにしても、奏真さんは日本語を合わせると最低でも5種の言語が話せるわけですか。当然のようにさらりと言っていますが、すごいことですよ。しかも、留学生からの質問を答えるとなると、常に社会情勢を知っておかなければならないですし、雑学も必要となります。それも全て記憶しないといけません。もう一つ、最低条件として日本文化の一つを極めてあること。茶道・柔道・日舞・和食・習字。これまたエトセトラ。とんでもないサークルですね。学校側の負担は減りますが、生徒側の負担は大きいはずです。


「失礼ですが、そのサークル入りたがる人いるんですか?」

「いますよ。会社の内申書に外国語が四つ話せますよ~って書いてあったらどうします?よっぽどのことがないかぎり、グローバルな現代ですから、かなりの確率で就職できますよ」


 プラス面大きいです。将来は安定しますね。父さんに話しておきましょうか。このサークルの人たち、欲しい人材です。うまくいけば、幹部ですね。私的には奏真さんが欲しいです。個人感情丸出しですがね。隠す気はありません。


 多分、近づいてきたのでしょう。だんだん騒がしくなってきました。


◇ ◇ ◇~奏真視点~


 おい、どうしたみんな。さっきの騒がしさはどうした。

 シー、いつもの威勢はどこにいった。「もう、始まってるヨ!」と、手を振りながら叫んでそのままで固まるな。腕が怠くなるだろ。さっさと下ろせ。

 その隣の賢治、どうした。バーベキューの串を咥えたまんま固まるな。あ、ほら。ソースが落ちた。あーあ。服が汚れてんじゃねーか。あと、地味にリア充醸し出すな。

 ルー、なにやってんだ。女に食わせているのまでは良いが、固まって肉を焦がすな。ってもう焦げてる。良いにおい通り過ぎてるって。

 先輩方も、固まってんじゃねえよ。サークル長は・・・・・のんびり食べてるし。


「私何かしましたか?」

「いや、蛍子さんは何も「「「ぶふー!」」」てめーら何吹いてやがる!」


 全員が吹き出した。何なんだこいつら。


「え、お前ホントに奏真か?熱あるんじゃねぇか?」

「賢治、お前は失礼だ!」

「ソー君大丈夫?はっ、まさかのドッペルゲンガー!?」

「シー、お前は俺を何だと思っているんだ!」

「しまった。肉が焦げた」

「ルー、お前はいろいろとずれてんだよ!」

「救急車、救急車!」

「サークル長、待ってくれ!」

「精神病院、精神病院」

「誰だ、今の言ったの!」

「警察、警察」

「俺誘拐してねえよ!?」

「「「「「「え、じゃあ軟禁」」」」」」

「じゃあ、のつながりが分らねぇよ!何故軟禁なんだよ!」

「変態、変態」

「喧嘩売ってんのかぁ!何処のどいつだ、ツラ貸せぇ!」

「肉が焦げて取れん」

「ルー!お前、ずれすぎだよ!」


 ぜーはー、ぜーはー。

 全員が疲れた。蛍子さんと、ルーを除いて。俺が一番疲れた。絶対に疲れた。


 取りあえず、全員椅子に座った。予備のイスがあったため、蛍子さんも座れる。いつの間にか円状になっている。こいつら実は打ち合わせしてたりしないだろうな。


「えー。今回司会を務めさせていただきます。羽田賢治です、よろしくお願いします」

「「「「わー。パチパチパチパチ」」」」


 ふざけてんのか。

 こいつ、羽田賢治は、俺の幼馴染み。SN大に入ったし、サークルも同じだから頭はそこそこだ。こいつは、スペイン語とフランス語。書道と剣道を極めた。少しむかつくが、顔も良いし、彼女持ちだ。

 んで、蛍子さんの隣にいるのがこいつの彼女が佐野志慰。通称シー。凄い美人で、モデルの仕事も持っていた。中国語と、モンゴル、ロシア語。日舞と茶道、生け花を極めた。何故、賢治なんかと付き合っているのか不思議だ。

 そして、円から外れ向こう側で、焦げ付いた肉を取ろうと孤軍奮闘してるのが峰琉得(名前の突っ込みは一切受け付けていない)。細いフレームがよく似合うシャープな顔立ちで、いかにも几帳面そうな顔をしてるが、中身はサークル長とかぶっていて、天然ボケ。更にかぶっているのは、頭が良いこと。第二のサークル長と呼ばれている。何故かアフリカ民族の言葉をいくつか喋ることが出来る。親のどちらかがNGOだとか言ってたな。そろばんを極めていて、極めすぎた達人で、フラッシュ暗算何のその。


「で、だ。奏真」

「なんだ」

「その人、どちら様?」


 その人とは失礼な。


「あ、申し遅れました。私、鷲谷蛍子と申します。よろしくお願いします」


 そして固まるな。


「おい奏真。表に出ろ」

「どうした。ここはもう表だ。十分すぎるほど表だ」

「じゃあ言うぞ。おまえは、この人誰か知ってて連れてきたのか!」

「は、誰かってお前」


 鷲谷けい・・・・・・・・・ん?鷲谷?鷲谷、鷲谷。ああ、鷲谷!あの鷲谷財閥うえええぇぇぇ!!!


「ええぇぇ!!」

「分からんかったんかい!っておい、倒れるなあぁぁ!」


 シャットアウト。お休みなさい。


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